この半導体ニュースのまとめ

・STがコンスーマ向け「LSM6DSK320X」と産業グレードの「ISM6HGK256X」を発表
・2つの加速度センサにより±16gと最大±320gの事象を同時に測定可能
・機械学習コアを搭載し、センサ内でのAI処理による低消費電力化にも対応

STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、外部からの振動や衝撃に対する耐性を高め、事象を高精度に再構成できる6軸慣性測定ユニット(IMU)として、コンスーマグレードの「LSM6DSK320X」と産業グレードの「ISM6HGK256X」を発表した。

フィットネストラッカーやスマートタグをはじめ、産業用アセットモニタリング、ロボット、写真撮影や農業調査に用いるドローンなどへの採用を想定する。事故の警報や工具の使用状況の監視、ロボットのティーチング、スポーツパフォーマンスの分析といった、事象の種類を識別するコンテキスト認識用途にも活用できるという。

  • STの6軸IMUを活用したドローンによる配送のイメージ

    STの6軸IMU「LSM6DSK320X」および「ISM6HGK256X」の用途イメージ。ドローンの飛行安定化やコンテキスト認識などへの活用を想定する (出所:STMicroelectronics)

超対称ジャイロセンサで振動や衝撃の影響を低減

両製品は、検出精度を高める超対称ジャイロセンサアーキテクチャと、広いダイナミックレンジに対応する加速度センサを組み合わせた。超対称アーキテクチャは、対称的に配置した2つのMEMS構造を互いに逆位相で動作させることで、外部から加わる振動や衝撃の影響を打ち消す仕組みとなっている。

このMEMS構造と完全差動回路による信号チェーンを組み合わせ、外乱の大きな環境でも検出信号の強度と耐性を確保した。ドローンの飛行安定化や構造物の状態モニタリング、ゲームコントローラなど、振動の影響を受けやすい用途での利用を想定する。

LSM6DSK320Xについては、ドローン向け制御ソフトウェアを手掛けるBetaflightが、開発中のリファレンスプラットフォームへの採用を決定したとしている。

±16gと最大±320gの事象を同時に測定

各IMUは、2.5mm×3mm×0.83mmの単一パッケージに、1つのジャイロセンサと2つの独立した加速度センサを搭載する。

一般的な加速度センサを1つ搭載したIMUでは、低加速度域と高加速度域の測定モードを切り替える間に測定できない時間が生じる場合がある。これに対し、STの新製品は2つの加速度センサを同時に動作させることで、±16gまでの低加速度域における動きや振動と、最大±320gの衝撃事象を並行して測定できる。

例えばドローンのフライトコントローラでは、通常飛行時の細かな姿勢変化を捉えながら、急激な飛行動作や強い振動、衝撃を測定できる。産業用アセットモニタリングでも、機器の通常動作に伴う振動と、落下や衝突などの高加速度事象を連続して記録することが可能となる。

機械学習コアを搭載してセンサ内AI処理に対応

LSM6DSK320XとISM6HGK256Xは、STの機械学習コア(MLC)を搭載する。取得したセンサデータを外部のホストプロセッサへ常時送信するのではなく、センサ内で事象の識別や分類などのAI処理を実行することで、ホスト側の処理負荷やデータ転送量を抑え、アプリケーション全体の消費電力低減につなげる。

開発環境として「ST MEMS Studio」に対応するほか、低加速度と高加速度のデータを扱う「Motion XLF」、センサフュージョン、コンテキスト認識用ソフトウェアなどのライブラリも利用できる。

LSM6DSK320X向けアダプタボード「STEVAL-MKI257A」と、ISM6HGK256X向けアダプタボード「STEVAL-MKI258KA」は、2026年11月までにSTのeSToreおよび販売代理店を通じて提供を開始する予定としている。

産業グレード品は最大105℃と10年間製造保証に対応

コンスーマ向けのLSM6DSK320Xは、-40℃~+85℃の動作温度範囲に対応する。産業グレードのISM6HGK256Xは、動作温度範囲を-40℃~+105℃まで拡大しており、産業機器の高温環境でも使用できる。

ISM6HGK256Xは、長期的な部品供給を保証するSTの10年間製造保証プログラムの対象にもなっている。長期間にわたる運用や保守が求められる産業設備、ロボット、状態モニタリング機器などでの採用を見込む。

1,000個購入時の参考単価は、LSM6DSK320Xが約4.6ドル、ISM6HGK256Xが約5.1ドル。STは、BPAフリーや鉛フリーなど持続可能な材料に関する基準にも対応し、性能向上と環境・規制面の要求への対応を両立したセンサとして展開していくとしている。