この半導体ニュースのまとめ

・JDIが茂原工場を新光電気工業へ譲渡し、514億円の譲渡益を計上へ
・新光電気工業は東側エリアを半導体向け先端パッケージングの中核工場として活用
・FICTは西側エリアを取得し、両社とも2028年度の稼働開始を予定

ジャパンディスプレイ(JDI)、新光電気工業、FICTの3社は9月30日、千葉県にあるJDIの茂原工場に関する売買契約を締結したことを発表した。

契約では、新光電気工業がJDIから茂原工場全体を取得した後、西側エリアをFICTへ譲渡する。新光電気工業は東側エリアを半導体向け先端パッケージングの新たな中核工場として活用し、FICTも西側エリアで先進的な生産体制の構築を検討する。

茂原工場の敷地面積は37万3482.91m2。新光電気工業からFICTへ譲渡される西側エリアは23万2744.59m2で、土地、建物および付帯設備などが対象となる。物件の引き渡しは2027年3月末を予定しており、新光電気工業とFICTはともに2028年度の稼働開始を計画している。

  • JDIの茂原工場外観

    JDIの茂原工場外観 (出所:JDI)

FPD工場から先端パッケージングの中核工場に転換

新光電気工業が茂原工場を取得する背景には、生成AIの普及やデータセンター市場の拡大に伴う、先端パッケージ基板の需要増加がある。

同社の主力製品であるフリップチップ(FC)タイプパッケージは、半導体チップとパッケージ基板を微細なバンプで接続する技術で、AIアクセラレータをはじめとする高性能半導体に用いられる。

AI半導体の高性能化に伴ってチップやパッケージの大型化、多層化が進んでおり、フリップチップタイプパッケージの製造工程にかかる負荷も増大している。このため、既存工場の増強だけでなく、新たな生産拠点を早期に確保する必要があると判断したことが背景にある。

新光電気工業は、2023年12月に新設した千曲工場のほか、高丘工場、更北工場、若穂工場でフリップチップタイプパッケージの供給能力を増強してきた。茂原工場についても、工場規模やインフラ、稼働可能時期などを踏まえ、追加の生産能力を確保する拠点として取得を決めたという。

今後は茂原工場を先端パッケージングの新たな中核工場と位置付け、設備投資計画を策定するとしており、長野地区の既存工場における増強と併せ、AI向けを中心に拡大する先端パッケージング需要へ対応を図っていく方針だとする。

FICTは西側エリアで生産体制を拡充

FICTは、新光電気工業が取得する茂原工場のうち、西側エリアを取得する。

FICTはプリント基板の製造・販売を手掛け、新光電気工業とも購買や建物の賃貸借を通じた取引関係を持つ。FICTが製造した製品を新光電気工業が購入するなど、先端半導体向けフリップチップタイプパッケージ事業でも協力してきた。

新光電気工業とFICTが利用を計画するエリアが重ならないことから、JDIを含む3社で協議し、西側エリアをFICTへ譲渡することとした。FICTは将来的な拡張性を考慮し、同エリアの取得を決めたとしている。

FICTによると、生成AIやデータセンター投資の拡大を背景に、半導体パッケージ基板や半導体関連基板の需要は中長期的に増加することが見込まれているという。

同社は市場環境や成長戦略を踏まえながら、取得する土地、建物、付帯設備の具体的な活用方法を検討する。新光電気工業との戦略的アライアンスも強化し、日本の半導体サプライチェーンの発展につなげるとしている。ただし、生産品目や生産能力、設備投資額などの詳細は現時点では明らかにしていない。

JDIは514億円の譲渡益を計上へ

JDIは、経営資源の最適化と資産効率の向上に向け、2025年2月に茂原工場での生産終了を決定。その後、2025年11月に同工場での生産を終了し、複数の候補先と譲渡に向けた協議を進めてきた。

JDIは構造改革や新株予約権の行使による資金調達を通じ、財務基盤の改善に取り組んでいる。譲渡方法や候補先を検討した結果、新光電気工業への譲渡が経済合理性の観点から最適と判断したとする。

譲渡価額は新光電気工業の意向により非公表としているが、市場価格を反映した適正な価額としている。物件引き渡し時点の帳簿価額は概算で266億円となる見通し。

JDIは、この譲渡に伴って2027年3月期第4四半期の連結決算に概算514億円の特別利益を計上する予定で、個別決算では概算549億円の特別利益を見込む。

既設工場を入手する狙いはAI半導体の後工程ニーズへの早期対応

茂原工場はJDIがディスプレイ製品を生産してきた拠点だが、今回の譲渡により、AI半導体の先端パッケージや関連基板を担う生産拠点へ転換されることとなる。

AIアクセラレータでは、GPUや専用ASIC、HBMなど複数の半導体チップを1つのパッケージへ集積する後工程の重要性が高まっている。チップの大型化や多層化が進むほど、パッケージ基板には大型化、微細配線化、低反り、高信頼性への対応が求められる。

新光電気工業は、フリップチップタイプパッケージの生産能力を早期に拡充できる工場として茂原工場を活用することとなる。FICTも西側エリアを将来の事業成長に向けた生産拠点とし、半導体パッケージ基板や半導体関連基板の需要拡大を取り込む方針である。

両社が同じ工場敷地内でそれぞれの生産体制を構築し、従来からの取引関係を強化することで、AI半導体向けパッケージに必要な基板や関連部品を国内で供給できる体制を広げる狙いがある。

新光電気工業とFICTは、2027年3月末の物件引き渡し後に設備導入などを進め、2028年度の稼働開始を目指すとしている。