この半導体ニュースのまとめ

・ロームが上面放熱型のSiC MOSFET向け新パッケージ「TSC3PAK」を開発
・面実装品ながらTO-247-4Lと同等レベルの放熱性能を実現し、沿面距離6.66mmを確保
・xEVのOBCや電動コンプレッサー、PVインバータ、サーバー電源向けに展開

上面放熱型のSiC MOSFETパッケージを開発

ロームは7月9日、SiC MOSFET向けの新パッケージ「TSC3PAK」を開発したことを発表した。

TSC3PAKは、14.00mm×18.58mm×3.50mmの面実装パッケージで、放熱面をパッケージ上面に配置した構造を採用する。これにより、自動実装に対応しながら、従来の挿入型パッケージであるTO-247-4Lと同等レベルの放熱性能を実現したという。

適用先としては、xEVのオンボードチャージャー(OBC)や電動コンプレッサーのほか、産業機器向けのPVインバータ、サーバー電源など、高効率な電力変換が求められる用途を想定しているとする。

  • 「TSC3PAK」

    新パッケージ「TSC3PAK」の外観 (出所:ローム)

面実装と高放熱を両立

xEVでは、充電速度の向上や航続距離の延伸を目的に、主機インバータだけでなく、OBCや電動コンプレッサーなどの電力変換回路でもパワー半導体であるSiCデバイスの採用が拡大している。また、産業機器分野でも、高性能サーバー電源やPVインバータなど、高効率動作を必要とする機器でSiCデバイスの搭載が進んでいる。

従来のSiCデバイスでは、大電力動作時の発熱を効率よく放散するため、放熱性に優れる挿入型パッケージが主流だった。一方、挿入型パッケージは手作業による実装工程を伴うほか、パッケージ形状の制約により低背化が難しいという課題があった。

これに対し、TSC3PAKは面実装タイプとすることで自動実装に対応しつつ、上面放熱構造により高い放熱性能を確保する。基板実装工程の効率化や製品の薄型化を図りながら、SiC MOSFETに求められる放熱性を確保できる点が特徴となる。

沿面距離6.66mmを確保し1200V対応を実現

新パッケージでは、パッケージに独自の溝を設けることで、沿面距離6.66mmを確保した。ロームによると、これは業界最高クラスの水準だという。

沿面距離とは、2つの導電体間において、絶縁物の表面に沿った最短距離を指す。半導体製品では、電撃や漏電、短絡を防ぐため、用途や環境に応じて沿面距離や空間距離を確保する必要がある。

TSC3PAKは、市場で広く普及しているパッケージとの互換性を持ちつつ、家庭やオフィスなど一般的な環境である汚染度2の環境下で1200VのACピーク電圧に対応する。これにより、高耐圧アプリケーションにおける安全な絶縁設計を可能にし、実装コストの削減と信頼性向上にも寄与するとしている。

第4世代SiC MOSFETで低損失化

TSC3PAK搭載品には、同社の第4世代SiC MOSFETが採用される。第4世代SiC MOSFETは、低オン抵抗と高速スイッチング特性を特徴としており、電力変換時のスイッチング損失低減により、アプリケーションの高効率化と省電力化に貢献する。

ラインアップは、750V品と1200V品を用意。750V品ではオン抵抗13mΩから65mΩの製品、1200V品では18mΩから90mΩの製品をそろえ、民生・産業向け品に加え、AEC-Q101に対応した車載半導体としても展開する。

新製品は2026年6月より量産を開始しており、サンプル価格は税抜5500円/個。ROHM Online Storeのほか、Arrow.comやコアスタッフオンラインなどのインターネット販売にも対応する。また、ローム公式Webサイトではシミュレーションモデルも提供しており、回路検討を支援する。

EcoSiCでSiCの一貫開発を推進

ロームは、SiCデバイスを「EcoSiC」ブランドで展開している。同社は、ウェハ製造から製造プロセス、パッケージング、品質管理方法に至るまで、SiCの進化に必要な技術を独自に開発しており、製造工程でも一貫生産体制を採用している。

SiCは、シリコンと比べて高耐圧・低損失・高温動作に適した材料として、xEV、再生可能エネルギー、産業機器、データセンター向け電源などで採用が広がっている。一方で、SiCデバイスを高出力用途で使うためには、チップ性能だけでなく、熱をいかに効率的に逃がすか、実装時の信頼性をどう確保するかが重要になる。

今回のTSC3PAKは、SiC MOSFETの性能を引き出すためのパッケージ技術として、面実装化、上面放熱、高耐圧対応を組み合わせたものとなる。ロームとしては、今後もSiC MOSFETのラインアップ拡充を通じ、電子機器の高性能化、小型化、高信頼化に貢献していきたいとしている。