蘭ASMLの日本法人であるASMLジャパンは9月3日に都内で設立25周年の記念記者説明会を開催した。今回は、その内容を簡単にご紹介したい(Photo01)。

  • 藤原祥二郎氏

    Photo01:説明を行われた藤原祥二郎氏(ASMLジャパン社長、左)と永原誠司氏(テクニカルマーケティングディレクター、右)

ASMLについては多くの記事がすでにTECH+でも上がっているので今さら説明の必要はないとは思うが、半導体製造装置の中でもステッパ(露光装置)の大手であり、特にEUV露光装置に関して言えば現時点で量産を行える装置を出荷しているのは同社だけである。

DRAM投資の拡大でASMLの売上高は2022年比で約2倍へ

そのEUV露光装置は7nm世代あたり以降のロジックプロセスや1cnm/1γ nm世代のDRAMプロセスでは欠かせないものとなっており、結果こうした最先端プロセスを利用する企業はすべてASMLのEUV露光装置を導入している。

このEUV露光装置は(後でも出てくるが)高価な製品であり、結果同社の売り上げは非常に好調である。Photo02は2022年以降の売り上げとその比率を示したものであるが、2022年は212億ユーロだった売り上げが、今年は430~450億ユーロとほぼ倍増する事が見えている。

  • 多分年末の段階で言えば、DRAM向けの出荷金額がロジックを超えそうである

    Photo02:多分、2026年末の段階で言えば、DRAM向けの出荷金額がロジックを超えそうである。ロジックも、TSMCなどは猛烈な設備増強(なんでも現時点で20工場の建設が同時に行われているらしい)を行っているが、DRAMは複数の企業が一斉に工場建設やら設備増強やらを行っており、トータルの勢いはDRAMの方が強いからだ

もっともこの急激な売り上げの伸びは、今年に入ってからのDRAM需要の爆増に支えられている部分もあるかと思われる。2025年の売り上げ比率を見ると、DRAM向けの装置はロジック向けのほぼ半分程度だったのが、今年はロジックとDRAM向けがほぼ同程度の金額になっている。実際トップ3だけでなく、CXMTやNanya、WinBondなども含めたDRAMベンダがいずれも今年に入って生産能力増強のために猛烈な設備投資計画を発表している。一部はすでに増強に向けた投資が始まっている訳で、当然ASMLにもその為の注文が殺到する訳だ。

出荷台数9%のEUVが売上高の48%を占める

面白いのが出荷量と出荷金額の比率である。出荷量で言えばEUV露光装置は全体の9%でしかなく、DUV露光装置(KrFやArF/ArF液浸)が52%と大半を占めている(残りが計測・検査装置)であるが、金額で言うとEUVが全体の48%を占める格好だ(Photo03)。どれだけEUV露光装置が高価なのかよくわかる。

  • 5%に達したのは割と最近

    Photo03:もっともアニュアルレポートを見ると2023年は2.22%、2024年は4.09%、2025年も4.35%で、5%に達したのは割と最近である

日本市場の売上高比率が5%まで上昇

また地域別で言うと日本がこのところ急激に伸びて、5%に達しているのは注目に値する。これはMicron広島へのEUV露光装置の導入や産業技術総合研究所(産総研)へのHigh NA EUV(高NA EUV)露光装置の導入などが大きいが、それ以外にもパワー半導体向けのDUV露光装置なども数字を押し上げるのに貢献していると考えられる。ただ藤原社長によれば、ASMLにとって日本は、単に露光装置や計測装置を販売するだけの地域ではないとする。

ASMLジャパンでは装置販売だけでなく日本企業との連携も担う

次がその日本の話である。今年で設立25周年、拠点8か所、人員500名とそれなりの規模を持つASMLジャパンであるが(Photo04)、2010年代の日本の半導体メーカーは相次いで自社Fabを閉鎖あるいは縮小し、FablessないしFab liteに転換していた事を考えると、2010年代の「露光装置の納入・設置とアフターサポート」の言葉がなかなか重くのしかかる。

  • 拠点は要するに顧客が居る場所

    Photo04:拠点は要するに顧客が居る場所である

  • 他の露光装置メーカーとの競争に打ち勝って顧客を獲得するという動きも多少はあっただろう

    Photo05:もちろん他の露光装置メーカーとの競争に打ち勝って顧客を獲得するという動きも多少はあっただろうが、2010年代は基本的に縮小傾向にあるマーケットの中でよく粘ったものである

この時期は、ASML的にも厳しい時期ではあったと思う。ただ日本が他の地域と異なるのは、材料・マスクメーカーや部材サプライヤー、装置メーカーなどは元気であり、現在も世界と戦える状況を維持している事だ。

ASMLジャパンのもう1つの役割は、こうしたエコシステムパートナーとの交渉や連携を行う事であるとする(Photo06)。

  • Intel Japanと非常に事情がよく似ている

    Photo06:このあたりはIntel Japanと非常に事情がよく似ている

2030年度に向けて500人から700人体制へ

今後は2030年度に向けて人員を現在の500名体制から700名体制に拡充すると共に、さらにエコシステム連携やサプライチェーン強化を図る、という話であった(Photo07)。

  • この追加の200名のほとんどはカスタマーサポートの人員の予定

    Photo07:この追加の200名のほとんどはカスタマーサポートの人員の予定との事。ちなみに日本に限らずどこの国でもローカルでR&Dを置くことはなく、顧客やパートナーとの共同研究とか共同開発は本国オランダと直接行う形になる、との事だった

高NA EUVの製品ロードマップを更新

続いて永原氏から今後の製品ロードマップについて簡単に紹介があった。まずはNA=0.33のNXE:3000シリーズとNA=0.55(高NA)のEXE:5000シリーズの製品ロードマップが示された(Photo08)。

  • 将来的にはHyper-NAのHXEシリーズも予定されている

    Photo08:Hyper-NAのHXEシリーズの話がどこかに消えてしまった

またNA=0.55向けのレジスト材料に関してもロードマップが示されたが、これは別に確定ではなく、現状一番可能性がありそうなものを並べた、という話であった。

  • 将来のロジック/メモリのテクノロジーノードに対する露光装置に求められる性能

    将来のロジック/メモリのテクノロジーノードに対する露光装置に求められる性能と対応レジストの候補例

ちなみにロジックに比べてDRAMのK1(プロセス係数)だが、例えばロジックだと0.7nm世代では0.33まで縮小されているのに対し、DRAMは0Dnm世代でも0.45~0.49と大きいのは、ロジックだと1次元的な回路で構成されることが多く、フォーカスを絞りやすいのに対し、DRAMではどうしても2次元になるため、そこまでフォーカスを絞り切れないという話だった。

Hyper-NAの投入時期は顧客需要を見ながら判断

またITF(imec Technology Forum) 2024でASMLのMartin van den Brink氏が示したロードマップにはHyper-NA(NA=0.75)に対応したHXEシリーズが2028年から投入される予定だったのが、Photo08からは綺麗に消えている。これに関しては「元々2030年代にHyper-NAを導入するという計画はあり、現在も開発を行っているが、具体的に何時という話はまだ決まっていない。市況を見つつ、顧客と調整しながら、必要なタイミングで必要な技術を提供して行く」(藤原社長)という返答であった。元々2024年のロードマップ発表時にも、Hyper-NAには色々な課題があり、その解決には時間がかかるという話があったので、まだまだ当分先という事なのだろう。