この半導体ニュースのまとめ

・EdgeCortixがフィジカルAI向けチップレットプラットフォーム「RAIDEN」を発表
・最上位のRAIDEN X4は最大3.36PFLOPSのFP4演算性能と最大256GBのメモリを実現
・川崎重工業が次世代の航空宇宙・防衛製品向けにRAIDENを採用

日本発のファブレス半導体企業であるEdgeCortixは9月24日、フィジカルAI向けの次世代スケーラブルAIチップレットプラットフォーム「RAIDEN」を発表した。

1ダイ構成の「X1」、2ダイ構成の「X2」、4ダイ構成となる最上位の「X4」を共通アーキテクチャで展開する。最上位のRAIDEN X4は、最大3.36PFLOPSのFP4演算性能、最大256GB(LPDDR5X)のメモリ容量、最大1.54TB/sのダイ間帯域幅を実現する設計となっている。

  • 「X4」のイメージ

    次世代スケーラブルAIチップレットプラットフォーム「RAIDEN」の最上位「X4」のイメージ (提供:EdgeCortix)

同社はRAIDENについて、集中型データセンターの外で機械やセンサ、実際の運用環境に近い場所へ配置される高性能AIシステム「シックエッジ(Thick Edge)」におけるフィジカルAIを対象と説明しており、ロボティクス、自律システム、スマートマニュファクチャリング、通信、航空宇宙・防衛、エッジAIインフラなどへの採用を想定する。

1ダイから4ダイまで共通アーキテクチャで拡張

フィジカルAIは、センサから得た情報を認識するだけでなく、状況を推論し、その結果に基づいて機械やシステムを動作させる必要がある。

このため、ニューラルネットワーク推論の性能だけでなく、メモリ容量、メモリ帯域幅、ダイやチップ間の接続性、制御処理、ソフトウェアを一体的に拡張することが求められる。

RAIDENは、性能クラスごとに異なるアーキテクチャを構築するのではなく、モジュール型のチップレットアーキテクチャを採用した。1ダイのX1、2ダイのX2、4ダイのX4へと、演算性能、メモリ容量、メモリ帯域幅、ダイ間帯域幅を構成に応じて拡張する。

3つの構成はいずれも、EdgeCortixの最新AIアクセラレータアーキテクチャ「DNA-X」と、AIモデルの開発・実装環境を提供する「MERA」ソフトウェアスタックを採用する。

顧客は既存のソフトウェア資産やアプリケーション環境を維持しながら、要求される性能や消費電力、導入条件に応じて異なるRAIDEN構成へ移行できるという。

なお、X1とX2の詳細な仕様や用途別の位置付けについては、RAIDENのローンチプログラムにおける今後の段階で公表する予定としている。

RAIDEN X4は最大3.36PFLOPSのFP4演算性能

最上位のRAIDEN X4は、4つのコンピュートダイを個別のアクセラレータとして動作させるのではなく、緊密に統合された1つのAIシステムとして機能するように設計されている。

  • RAIDENの各ダイ(DNA-Xアーキテクチャ)のイメージブロック図

    RAIDENの各ダイ(DNA-Xアーキテクチャ)のイメージブロック図 (出所:EdgeCortix)

主な仕様は、実行時に再構成可能なデータパス、マイクロコードでプログラム可能な行列ならびにベクトル演算エンジン、ダイ上に搭載された64ビットRISC-Vコアを共有メモリファブリック上で統合し、各ダイをUCIeファブリックで接続するDNA-Xアーキテクチャを活用することで、最大3.36PFLOPSのFP4 AI演算性能、最大256GBのメモリ容量、548GB/sのメモリ帯域幅、最大1.54TB/sのダイ間帯域幅を実現できるとする。

用途やシステム要件に応じて消費電力を設定できるほか、各ダイにマルチコアのホストプロセッサと高速システム接続機能を搭載し、外部ホストへの依存を抑えた自己完結型システムの構築にも対応する。

さらに、単一のマルチダイパッケージを超えて複数のRAIDENを接続するため、最大6.4Tbpsのチップ間スケールアウト接続を備える。単一パッケージで処理しきれない大規模なフィジカルAIシステムについても、複数のRAIDENを接続して拡張できるようにする。

同社は、マルチモーダルAIや生成AI、エージェンティックAIの利用拡大を想定。大規模なモデルや長いコンテキスト、複数ワークロードの並行処理へ対応しながら、フィジカルAIに求められるリアルタイム性能を実用的な消費電力で実現することを目指すとしている。

SAKURA-II向けの開発成果を移行可能

ソフトウェア面では、MERAがRAIDENファミリ全体に共通する開発・導入環境を提供する。

X1、X2、X4の間でAIモデルや開発ツール、ソフトウェア資産を引き継ぐことが可能で、要求性能の増加に応じて別のRAIDEN構成へ移行する場合も、アプリケーションを最初から構築し直す負担を抑えられるという。

また、製品世代をまたいだ利用にも対応するため、現行AIアクセラレータ「SAKURA-II」を対象として開発されたAIモデルやアプリケーションについても、ゼロから再構築することなくRAIDENへ移行できるとしている。

航空宇宙・防衛機器や産業機器は製品ライフサイクルが長く、その間に利用するAIモデルやワークロードが高度化する可能性がある。共通のソフトウェア基盤を維持しながら、演算性能やメモリ容量を拡張できることは、長期運用を前提とするシステムの再開発負担を軽減することにつながる。

川崎重工業が航空宇宙・防衛製品に採用

RAIDENはすでにアーキテクチャの検討段階を超え、複数の顧客プログラムで採用が進められているという。

例えば川崎重工業では、複数の次世代AI対応航空宇宙・防衛製品向けに、RAIDENをベースとするソリューションを採用したという。これらの製品では、厳しいシステム上の制約の下でAI演算基盤を動作させると同時に、長期にわたる製品ライフサイクルの中で高度化するAIワークロードへ対応することが求められる。

このほか、ロボティクスプラットフォームや高性能エッジAIサーバなどのフィジカルAI用途でも、RAIDENのデザイン・ウィンを獲得済みとしている。

なお、EdgeCortixによると、顧客向けサンプルの提供開始は2027年初頭(第1四半期)を予定しており、2027年後半からの量産開始を計画しているという。また、限定アーリーアクセスプログラムへの参加受付も行っており、対象となる顧客ならびにエコシステムパートナーは、RAIDENの開発段階からEdgeCortixと連携できるほか、顧客向けサンプルについても、優先入手機会を得ることができるようになると同社では説明しており、今後、プログラムの進展に合わせて、さらなるRAIDENの採用事例、アプリケーションカテゴリ、エコシステムパートナーなどを発表していく予定だとしている。