半導体露光機市場は、AIの追い風を受けて引き続き活況だ。最大手の蘭ASMLは、独占供給のEUV(極紫外線)露光機を大増産。ASML機と互換性をもつArFi(フッ化アルゴン液浸)露光機の開発を進めているニコンは、営業利益のV字開腹を見込む。後工程に強いキヤノンは、KrF(フッ化クリプトン)露光機の販売台数の倍増をめざす。

ASML:需要高まるEUV大増産、値上げも

蘭ASMLは、半導体露光機の生産能力を大幅に拡充する。ロジックもメモリも半導体大手は先端品の増産を急いでおり、微細プロセス対応のEUV(極紫外線)やArFi(フッ化アルゴン液浸)露光機の需要は高まるばかりとあって、値上げも考えている。

同社の4〜6月期売上は93億ユーロ(1〜3月期は88億ユーロ)、純利益は29億ユーロ(同28億ユーロ)と好調に推移した。サービスなどを除いたシステムの売上高は66億ユーロであり、このうち独占供給するEUV露光機の売上が38億ユーロを占めている。EUV売上には高NA露光機1台も含まれる。

新品半導体露光機販売は86台(同67台)、中古が5台。ロジックとメモリ向けの売上比率はほぼ半々だったが、今年(12月期)はロジックファンウンドリ向け売上が25%以上増える予想だ。メモリーはDDRもHBMも需給が逼迫しているうえ、プロセス微細化が進むことから、深紫外線(DUV)からコスト効率の高い低NA(開口度0.33)EUVへの代替がみられる。このため今年メモリ向けの売上は75%以上の大幅増を見込んでいる。

低NA機の今年の出荷予想は約65台、EUV売上予想は前年比45%超である。おう盛な需要に応えて2027年には低NA機の生産能力を約30%増強する。さらに2028年にも生産能力をさらに30%増やす可能性がある。

  • 出所:ASML 2026 second-quarter results(Presentation Investor Relations PDF)

    出所:ASML 2026 second-quarter results(Presentation Investor Relations PDF)

一方高NA(開口度0.55)機については、米インテルファウンドリーが光源出力と重ね合わせ精度を向上したTWINSCAN EXE:5200Bを導入し、「18Aプロセス」を用いた先端チップの生産をはじめたとASMLが、発表している。

DUV需要も大きく今年、ArFi機を約130台出荷予定。これで非EUV機の純売上高は約25%増えるとみている。ArFi機は2027年に生産能力を30%増強、さらに2028年にも30%の増強を検討している。

4〜6月期の光源別売上構成比(以下、カッコ内は1〜3月期)は、EUVが57%(66%)、ArFi29%(23%)、ArF4%(2%)、KrF6%(6%)、それにメトロロジーインスペクションが3%(2%)。

販売台数はEUV16(16)、ArFi23(17)、ArF8(5)、KrF35(30)、i線9(11)。ロジック向けが51%、メモリー向けは49%とほぼ半々で推移している。

地域別売上は韓国43%(45%)、台湾30%(23%)、中国14%(19%)、米国9%(12%)。日本市場は4%だが、前四半期は円グラフに表れないほどの売上だった。

  • 出所:ASML 2026 second-quarter results(Presentation Investor Relations PDF)

    出所:ASML 2026 second-quarter results(Presentation Investor Relations PDF)

ニコン:営業利益は黒字に転じる。ArFドライ新製品の売上計上

ニコンの4〜6月期全体の売上は、円安効果もあって前年比60億円増となった。しかし営業利益は米国関税還付(40億円)があったにもかかわらず、9億円の赤字。これはカメラなどの販売減と精機事業の棚卸し資産評価損(41億円)が主因である。

半導体露光機を扱う精機事業の4〜6月期売上は前年比44億円増の382億円だが、営業利益は棚卸し資産評価損の計上から前年の18億円の黒字から26億円の赤字になった。

フラットパネルディスプレイ(FPD)露光装置は販売台数が据え付けの7〜9月への期ずれによって前年比2台減の5台となったが、高単価のArF(フッ化アルゴン)ドライの販売台数が増えたことから、精機事業全体では増収になっている。ArFドライ新製品「NSR-S333F」も初号機売上を計上した。

半導体露光機の同期販売台数(以下、カッコ内は前年同期)は5台(2台)。光源別ではArFドライ2台(0台)、KrF(フッ化クリプトン)1台(0台)、波長365nm(ナノメートル)のi線が2台(2台)。

2027年3月期予想(カッコ内は前年度実績)は、中古を含め29台(27台)。光源別ではARF液浸3台(0台)、ArF7台(3台)、KrF2台(4台)、i線17台(20台)。

  • 出所:ニコン 2027年3月期 第1四半期決算報告

    出所:ニコン 2027年3月期 第1四半期決算報告

  • 出所:ニコン 2027年3月期 第1四半期決算報告

    出所:ニコン 2027年3月期 第1四半期決算報告

  • 出所:ニコン 2027年3月期 第1四半期決算報告

    出所:ニコン 2027年3月期 第1四半期決算報告

2027年3月期の通期売上予想は、前年度比12.4%増の1,880億円、営業利益は同45億円の赤字から120億円の黒字に改善する。今年度の全社研究開発予算735億円の28%を精機事業に充て、ARFiとマスクレス露光機の開発を推進する。

なお4〜6月期の地域別売上は、日本が昨年の34億5,800万円から、66億4,600万円へと90%以上も増えた。トップは昨年と同じく中国市場(172億円)がダントツで、欧州は58億円、米国は42億8,000万円だった。

  • 出所:ニコン 2027年3月期 第1四半期決算報告

    出所:ニコン 2027年3月期 第1四半期決算報告

キヤノン:KrFは前年比倍増へ。NILは追加出荷

キヤノンの半導体露光機事業は1〜6月期、メモリーや先端パッケージ向けの旺盛な需要を反映して増収増益。7〜12月期ではKrF(フッ化クリプトン)露光機販売の倍増を見込んでいる。

露光機を扱う光学機器部門の売上は4〜6月期、前年比1.0%増の619億円。通期(12月期)予想は前回予想を21億円上回る2.3%増の2622億円。フラットパネルディスプレイ(FPD)露光機を含むインダストリアル事業全体では前年比減収減益予想だけに半導体露光機の堅調さが際立つ。注力しているナノインプリント(NIL)露光機は評価中のユーザーに対して6月、追加出荷を行うなど量産適用に近づいている。

光源別販売台数は4〜6月期がKrF17台(前年14台)、通期予想は70台(46台)。i線は31台(37台)、通期予想157台(188台)。1〜3月期を終えた時点では通期でkrF69台、i線169台と予想していた。i線を下方修正したのはパワー半導体とアナログ半導体の鈍化を反映したものだ。

旺盛なメモリー需要に対して7〜12月期にはKrF露光機の販売台数を前年比倍増する計画。成膜装置もHBM向けに受注が増えている。FPD露光機は6台(9台)、通期予想は20台(33台)と大幅減としており、半導体露光機との格差が大きい。

  • 出所:キヤノン 2026年第2四半期 決算説明会 説明資料

    出所:キヤノン 2026年第2四半期 決算説明会 説明資料