この半導体ニュースのまとめ
・ASMLのHigh NA EUVがIntel 18Aプロセスの量産ロジック製品に初採用
・Intel FoundryはPanther Lakeの一部レイヤを高NA EUVで製造認定、NXEプラットフォームと同等歩留まりで出荷
・IntelとASMLは高NA EUVの量産適用に向け、今後のプロセス世代でも協業を継続
高NA EUVが量産ロジック製品に初適用
ASMLは7月15日、同社の高NA EUV露光技術がIntel FoundryのIntel 18Aプロセスにおいて、量産ロジック製品に適用されたことを発表した。
対象となっているのは、「Intel Core Ultra Series 3プロセッサ」(開発コード名:Panther Lake)の一部製品。一部のレイヤにASMLの高NA EUV露光装置「EXEプラットフォーム」を適用して、従来のEUV露光装置「NXEプラットフォーム」と同等の歩留まりを実現し、顧客に向けて出荷を行っているという。
Intel 18Aの一部のレイヤに適用した背景
今回、高NA EUV露光装置がどのレイヤに適用されたのかは明らかにされていないが、一般的にEUV露光装置は微細加工が難しいトランジスタ素子に近い下層(M0層)や第1層(M1層)などで活用されてきたことを考えると、そうしたクリティカルレイヤとも呼ばれる微細加工の難易度の高い配線層に適用されたものと思われる。
半導体の配線層は、先端ロジックプロセスにおいては10層以上で形成されるが、各層が同じ線幅ではなく、上層に行くほど太さが増していくため、製品のコスト低減のために、その線幅に見合った露光装置(液浸含むArFやKrF)が用いられることとなる。TSMCは少なくともA14プロセス世代では高NA EUVをコスト効率を優先するためにスキップすることを明らかにしているほか、Micron Technologyも技術方針として、Samsung ElectronicsやSK hynixがEUVを推進する中、コストや生産性のついて検討を重ね、EUVの導入をギリギリまで見極めるなど、先端プロセスでの製造を行う半導体メーカー各社にとって、そのコストの高さとの折り合いをどこでつけるのかという問題が常に付きまとうようになっている。
Intel FoundryのNaga Chandrasekaran氏は、今回の成果について、IntelとASMLの緊密な技術協業を反映したものであり、高NA EUVが先端プロセス製造にスケールして統合可能であることを示すものだと説明している。また、Intel 18Aのプロセスオプションとして高NA EUVを認定することで、既存の装置群による顧客への生産能力を高めつつ、次世代プロセスに向けた性能、密度、製造柔軟性の選択肢を開発していくことができるようになるとしている。
Panther Lakeで量産適用データを蓄積
ASMLによると、Panther Lakeの量産に高NA EUVを適用できたことで、ASMLとIntel Foundryは、システム設定、稼働率、製造実装に関する有用なデータを得られるようになり、これらの量産を元にしたデータを活用することで、高NA EUVのより広範な採用に向けた装置・プロセス・運用条件の改善につなげていくことができるようになるという。
高NA EUVの活用により、マルチパターニングの低減やプロセス制御性の向上が期待されるようになるが、その一方で、装置の立ち上げ、レジスト、フォトマスク、計測、欠陥管理、スループット、歩留まりなど、量産適用して、その性能をフルに発揮させるためにはまだまだ解決すべき課題も多い。量産ラインでの稼働に伴って生の生産データを得ることは、研究開発の段階から製造技術としての成熟度を高めるうえで重要な意味を持つこととなる。
TWINSCAN EXE:5200Bで出力と重ね合わせ精度を向上
IntelとASMLは2024年、米オレゴン州ヒルズボロのIntel研究開発施設に、ASMLの商用高NA EUV露光装置「TWINSCAN EXE:5000」を導入。2025年には量産モデルとなる「TWINSCAN EXE:5200B」を他社に先駆けて導入するなど、高NA EUV露光装置の活用に向けて邁進してきた。
EXE:5200Bは、EXE:5000をベースに、出力と重ね合わせ精度を高めるとともに、改良された光源を備えることで、高度な加工を実現しつつ、スループットの向上が図られている。実際、ASMLのChristophe Fouquet社長兼CEOは、高NA EUVの導入について、解像度とプロセス制御の向上により、半導体リソグラフィにおける重要な進展になると説明しているほか、より小さく高密度なパターン形成を可能にすることで、AIをはじめとする新興技術の進展を加速させるとしている。
次世代プロセスの商用展開に向けて協業を継続
今回、Intel Foundryが高NA EUVを用いた量産ロジック製品の出荷を従来プラットフォームと同等の歩留まりで達成したことで、高NA EUVの量産適用に向けた競争は新たな段階に入ったといえる。
IntelとASMLでは、高NA EUVの量産活用に向けた協業を今後も継続していくとしており、今後、提供が予定されている次世代プロセスにおいても、顧客ニーズに応じて高NA EUVを取り込む柔軟性を確保していくとしている。
Intel Foundryにとって、高NA EUVの量産適用実績は、Intel 18A以降の先端プロセス競争における重要なアピール材料となる。ファウンドリ事業では、プロセス性能だけでなく、顧客が安心して設計・量産へ移行できる製造実績、歩留まり、設計エコシステム、供給能力が問われるためであり、高NA EUVの技術がすでに量産に使われていることは他社にないアピールポイントになる可能性がある。
一方、ASMLにとっても、高NA EUVが実際のロジック製品の量産ラインで使われ始めたことは、次世代の露光装置市場の拡大に向けた重要な節目となるといえる。半導体プロセスの微細化が続く中、高NA EUVはEUV露光技術の次の柱として、2030年前後の半導体製造ロードマップを左右する技術になっていくことが期待され、それが、その先に見据えられているNA=0.75のHyper-NA EUVの実用化にもつながることにもなるといえる。
そうした意味で、今回の高NA EUVが量産ラインに適用されたという発表は、今後のAI時代の先端ロジック製造競争における重要なマイルストーンとなる可能性がある。