「AMD Advancing AI 2026」に関する一連のレポートの最後はフィジカルAIに関する話である。といっても実態は要するに「Ryzen AI Embedded」の話である。イベントの中ではロボティクスと絡めて説明が行われた事もあり、フィジカルAIとして扱われていた。

P100とX100の2系列に分かれるRyzen AI Embedded

Ryzen AI Embeddedに関しては今年1月のCESでまずローエンドSKUが発表され、次いで3月に追加SKUが公開された。Ryzen AI EmbeddedにはRyzen AIベースとなるP100シリーズとRyzen AI MaxベースとなるX100シリーズがあり、従来はP100シリーズのみが公開で、X100シリーズは2026年後半に出荷開始予定という話であったが、今回のタイミングでこれが正式発表された形である。Photo02が現時点でのラインナップである。

  • 構造そのものは既存のRyzen AI Maxと同じ

    Photo01:構造そのものは既存のRyzen AI Maxと同じ。CCD×1 or 2+IODという構造である

  • 汎用とIndustry向けの2種類が各製品に用意される

    Photo02:X168にはAutomotive向けは設定されておらず、汎用とIndustry向けの2種類が各製品に用意される

すでにAMDのWebサイト(日本語のWebサイトにはまだX100シリーズが反映されていないので、英語サイトを参照する必要あり)には、もう少し細かなSKU一覧が示されている。表1はここから主要な項目を抜き出したものだ。

  • P100シリーズ/X100シリーズの主要項目

    表1:P100シリーズ/X100シリーズの主要項目

LPDDR5x-8533 8chをサポート、cTDPは最大120Wに対応

これを見ると、X168/X168iのみL3が32MB、X188/X188i/X199/X199iは64MBとなっており、X168iはCCDが1つの構成と判断できる。またP100シリーズと異なり、メモリはLPDDR5x-8533 8chのみのサポートになっている。強烈だなと思うのはTDPで、標準は55WだがcTDPを使う事で45W~120Wまで変更が可能である。120Wというのはこの手のCPUとしては結構厳しいというか、使いどころが限られそうではあるが(それを言えば標準の55Wも結構大きめではあるのだが)。

ここまでで終われば別に単にSKUが発表になったというだけなのだが、今回もう1つ大きな発表がSOMの提供である(Photo03)。

  • ボード左上の大きなものの正体は不明

    Photo03:ボード左上の大きなものが気になるのだが、PMIC用のFPGAか何かかもしれない(ただ下側の両端にもPMICらしいチップが居るので違うかもしれないが)

規格としてはCOM-HPCのClient TypeのSize B(120mm×120mm)が採用されており、この上にRyzen AI Embedded X100とLPDDR5xチップ、PMICなどが搭載されており(Photo03)、これ単体で動作する構造になっている。ちなみにPhoto03にあるDeterministic Controlの125μsは、Bosch Rexroth Controllerを稼働させて、毎秒8000回のループ実行が可能だったことからの数字との事だそうだ。

FPGA向けだったKriaブランドをEmbedded Processorに拡大

こうしたSOMをボードメーカーが出すのは別に珍しい事ではなく、P100シリーズでも複数のSOMが用意されていることが明らかにされていたが、KriaということはAMD自身が製造・販売するブランドになるという訳だ。

あと元々Kriaというブランドは2021年に発表されたが、これはFPGA向けのSOMであった。今回その適用範囲がFPGAのみならずEmbedded Processorまで広がった事は大きな意味を持つ。具体的に言えば、今回AMDは新しいRobotics Development Kitを発表した(Photo04)。

  • オープンソフトウェアベースで開発できる

    Photo04:オープンソフトウェアベースで開発できることで、ベンダーロックインを防げる、というのはNVIDIAを意識したものだろう。量産開始は今年第4四半期、アーリーアクセスはすでに開始とされている

新たなKriaはロボティクスやフィジカルAI向け

「新しい」というのは、2022年にAMDはKria KR260 Robotics Starter Kitを発表しているからだ。この時はZynq UltraScale+ MPSoCベースのキットだった訳だが、今回の発表はいわばこれを置き換えるものとなる。既存のRobotics Development Kitとの互換性があるのか? というのはちょっと怪しいところであるが(Photo05)、AIを利用した新しいロボティクスやフィジカルAI向けという位置づけになっているので、互換性はあまり考えていないのかもしれない。

  • ベースボードにFPGAを搭載してはいるがSpartan Ultrascale+

    Photo05:ベースボードにFPGAを搭載してはいるが、Spartan Ultrascale+なのでZynq UltraScale+ MPSoCからそのまま載せ替えられるわけではない(特にArmコアで動くプログラム)

  • ベンチマークに関して言えばNVIDIAのThor T5000と比較して1.6~3.4倍の性能を出しているとされる

    Photo06:ベンチマークに関して言えばNVIDIAのThor T5000と比較して1.6~3.4倍の性能を出しているとされるが、ソフトウェアに関してはCUDAと真っ向対決するとまだ弱いところが多い。とは言え、ROCmが急速に充実してきている昨今では大分マシになったと評すべきか?

さまざまなSDKの展開を予定

リリースにあわせてRobotics Core SDKおよびPhysical AI SDKがリリースされることはすでに確定しており、今後はさらにSDKを追加して行くとされる。すでに多数の顧客との協業が始まっているという話も出ており(Photo07)、このうちとりあえずCASTEC InternationalのCollaborative Mobile RoboticsとFoundationのPhantom MK-2 Industrial Class Humanoidの2製品に関しては間違いなくRyzen AI Embedded X100シリーズを使っている事が明らかにされている。

  • 全部Kria AI SOMかは怪しい

    Photo07:もっともこれが全部Kria AI SOMか? というとちょっと怪しい

既存のKria SOMは引き続き提供されてゆくものと思われるが、これと並行してKria AIという形でEmbedded x86 SOMも新たに追加された訳だ。AMD Embedded+も現在はSBCでの提供だが、あるいは将来的にはEmbedded+に対応したSOMも出てくるのかもしれない。