米AMD(旧Xilinx)は5月17日、 Zynq UltraScale+ MPSoCを活用した適応型SOM(システム・オン・モジュール)と開発者用キットから成るKriaポートフォリオに、新たに「Kria KR260 Robotics Starter Kit(KRS)」を追加したことを発表した。これに関して同社のKV Thanjavur Bhaaskar氏(Photo01)よるオンライン説明会が開催されたので、その内容をご紹介したい。

  • KV Thanjavur Bhaaskar氏

    Photo01:KV Thanjavur Bhaaskar氏(Manager, Strategy and Marketing, Adaptive and Embedded Computing Group)。ちなみに氏はAMDの買収までは、XilinxでManager, Industrial, Vision, Healthcare Strategy and Marketingというポジションに居られた人で、買収後はAECGの中で引き続き同じポジションにおられる形だ

さて、今回の発表を1枚でまとめるとこちら(Photo02)。

  • Vision AIキットとはSOM(KR26)そのものは一緒

    Photo02:Vision AIキットとはSOM(KR26)そのものは一緒だが、キャリアボードは異なっている

Kria SOMそのものは2021年4月に発表されたものであり、2022年2月にはそのKria SOMを利用した「Vision AI Starter Kit」が発表されているが、今回の発表はこれに続くものとなる。というか、KRS自体は実は2月の発表の時にすでにプレビューの形で紹介されており、これが正式に発表されたという形になる。

まずバックボーンから説明すれば、Factory 4.0やIIoT/AIoTがより普及してゆく中で、ロボットはさらに広範に使われる様になってきており(Photo03)、実際に設置台数なども確実に増えつつある(Photo04)。

  • 最近は倉庫内の搬送サービスといったピックアップなどにも使われ始めている

    Photo03:産業向けの、日本で言うならファナックとか安川電機、川崎重工などが提供するものは当然の事、最近は倉庫内の搬送サービスといったピックアップなどにも使われ始めている

  • サービス用途向けが次第に増えているのも特徴

    Photo04:従来とは異なる、サービス用途向けが次第に増えているのも特徴。これはまだ2020年の話だから、現在はもう少し増えていると思われる

ただこうしたロボットの開発はまだまだ色々と難しいものがあるし(Photo05)、利用される用途が増えるという事は、それぞれのユースケースに向けての作り分けが必要になる(Photo06)。

  • ロボット開発の課題

    Photo05:レイテンシとか電力効率などは以前からも指摘されているが、最近は安全規格への対応とか、新しいアルゴリズムへの対応なども課題に挙がっている

  • さまざまなロボットすべてを手掛けるベンダーはまだ少ない

    Photo06:現状、こうしたさまざまなロボットを「すべて」手掛けるベンダーは非常に少なく、ドローン専業とかAMR専業とか、そうした形であるが、いずれはさまざまなユースケースを手掛けるベンダーも出てくるだろう

こうした現状で、ロボット制御のアプリケーションと言えば、一昔前はCPUやGPUを使うケースがほとんどだったが、最近はFPGAに移行しつつあるのはご存じの通り。ということで今回の発表であるKria KR260をベースとしたKRS(Kria Robotics Starter Kit)の話となる。

  • ただしFPGAはプログラミングが面倒というのは依然として事実である

    Photo07:ただしFPGAはプログラミングが面倒というのは依然として事実である。もちろんVitisなどを使ってこれを多少緩和する事は可能ではある

Kria KR260 Robotics Starter Kit(Photo08)はロボット制御に向けたキャリアボードと、ROS 2に対応したSoftware Stackをセットにした開発キットである。

  • NVIDIAのAGX Xavier Developer KitおよびJetson Nano Developer Kitと比較すると5倍の生産性

    Photo08:5倍の生産性は、NVIDIAのAGX Xavier Developer KitおよびJetson Nano Developer Kitと比較した場合との事