リンク打ち上げ成功、数カ月かけて軌道引き上げ
リンクを搭載したペガサスXLは、スターゲイザーの胴体下に取り付けられ、太平洋にあるクェゼリン環礁の上空まで運ばれた。そして日本時間2026年7月3日17時36分、スターゲイザーは高度約1万2,000mでペガサスXLを切り離した。
ペガサスXLは空中でロケットモーターに点火し、計画どおり飛行して、リンクを地球低軌道へ投入した。打ち上げ後、地上チームはリンクとの通信確立にも成功した。
今後、カタリストのチームは数週間かけて、リンクの電力、推進系、センサー、航法系などを確認する。その点検を終えたのち、リンクは少しずつ軌道を変え、スウィフトへ接近する。
接近中はスウィフトを撮影し、その画像をもとに、NASAとカタリストのチームが機体を掴む位置を確認する。チームはすでに複数の候補を想定しているが、前述のように、スウィフトは掴まれることを前提に設計されてはいないため、作業は慎重に行う必要がある。
リンクがロボット・アームでスウィフトを確実に保持できれば、両機は一体となった状態で飛行する。そこからリンクがスラスターを噴射し、スウィフトの軌道を少しずつ引き上げていく。NASAによれば、接近と保持までに約1カ月、軌道の引き上げには数カ月かかる見込みだ。
最終的にNASAとカタリストは、スウィフトを打ち上げ時に近い高度約600kmの軌道へ戻すことをめざす。作業が終わればリンクはスウィフトから離れ、大気圏へ再突入する。スウィフトは新しい軌道で、観測再開の準備に入る。すべてが順調に進めば、スウィフトは約10年間、科学観測を継続できる見込みだという。
宇宙機を「使い捨てる」時代から「手入れして使い続ける」時代へ
これまで多くの宇宙機は、壊れたり、燃料が尽きたり、軌道が大きく下がったりすれば、その時点で運用を終えざるを得なかった。
だが、別の宇宙機によって修理したり、軌道を変えたりすることが、技術面でもコスト面でも成立し、一般化すれば、宇宙機の運用思想そのものが変わる。衛星の修理、補給、機能追加、軌道変更といった作業が、将来は宇宙インフラの一部になるかもしれない。実際に、カタリストは、別の衛星にも同様のサービスを提供するための、新しい衛星の開発も進めている。
軌道上にある衛星に別の宇宙機が取りついて延命する試みには、実は前例がある。たとえば2020年は、ノースロップ・グラマン傘下のスペースロジスティクス(SpaceLogistics)が、「MEV」(Mission Extension Vehicle)を開発して打ち上げた。MEVは、燃料が少なくなった静止通信衛星に取り付き、自身の推進系と燃料で衛星の運用を延ばす宇宙機で、2020年と2021年に、インテルサットの静止通信衛星へドッキングし、延命サービスを行っている。
一方、今回のスウィフト・ブースト・ミッションには、MEVによる静止衛星の延命とは異なる新しさと難しさがある。
ひとつは、もともと整備を前提としていない宇宙機を、別の宇宙機が軌道上で捕捉し、軌道を変えるという点だ。MEVは、静止衛星の後部にある液体アポジ・エンジンにプローブを差し込む方式で衛星を捕捉する。こうした構造は多くの静止衛星に備わっているが、スウィフトには同じような構造がないため、どこを掴むか、ということから考えなければならない。
もうひとつは、時間的な制約だ。スウィフトは低軌道を回る衛星であり、上層大気の抵抗によって時々刻々と高度を失っている。そのため、今回のミッションはきわめて短い期間で実現する必要があった。NASAがカタリストと契約したのは2025年9月で、打ち上げは2026年7月だった。つまりカタリストは、1年に満たない期間でリンクを設計・製造・試験し、打ち上げまでこぎ着けたことになる。
落ちてくる宇宙望遠鏡を救うという表現は、少し劇的に聞こえるかもしれない。しかし今回は、まさにその言葉がふさわしい。スウィフトは20年以上にわたり、宇宙の突発現象を追い続けてきた。その望遠鏡を、民間企業の宇宙機が宇宙で捕まえ、もう一度観測の舞台へ押し上げようとしている。
そして、このミッションが成功すれば、それはひとつの宇宙望遠鏡の救出劇であると同時に、宇宙機を「使い捨てる」時代から「手入れして使い続ける」時代へ、さらにその作業を民間企業が担うビジネスとして広げていくための、大きな一歩となるだろう。
参考文献
- Swift Boost Mission - NASA Science
- Neil Gehrels Swift Observatory Archives - NASA Science
- Northrop Grumman’s Pegasus Rocket Powers Mission to Extend NASA’s Swift Observatory | Northrop Grumman
- Katalyst’s LINK Robotic Spacecraft Integrated with Pegasus XL and Ready for Launch
- NASA Explores Industry Possibilities to Raise Swift Mission’s Orbit - NASA

