宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月21日、リュウグウのような炭素質(C型)小惑星と、一般的には彗星も含まれる「暗いX型」小惑星の中間的なスペクトル特性を持つ小惑星を複数発見し、この事実から両タイプの小惑星の起源が共通である可能性があることが示唆されたと発表した。

同成果は、JAXA 宇宙科学研究所(ISAS)の長谷川直 主幹研究開発員(大学共同利用・超高速衝突実験施設担当)を中心とする国際共同研究チームによるもの。詳細は、英国王立天文学会が刊行する旗艦論文誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載された。

惑星や衛星、小惑星、彗星など、自ら光らない天体は、太陽などの恒星光をどれだけ反射するかで明るさが変化する。この反射のしやすさを表す指標が「アルベド」だ。アルベドは2種類あり、1つは入射した光の総エネルギーに対する反射エネルギーの割合を示す「ボンドアルベド」だ。値はまったく反射しない0.0から、すべてを反射する1.0の間で表され、主に惑星で用いられる。

一方、小惑星や彗星などでは、反射エネルギーの全方向積分を把握することが難しいため、「幾何学的アルベド」が用いられる。こちらも0.0はまったく反射しない状態だが、「光を全方向へ完全拡散反射する真っ白な平面」を1.0とする。そのため、光を観測者方向へ強く反射する性質を持つ天体では、1.0を超える場合があり、例えば土星の衛星エンケラドスは約1.37に達する。

探査機「はやぶさ2」がサンプルリターンを成功させた地球近傍小惑星のリュウグウはC型であり、このタイプの小惑星は炭素を多く含むため表面が黒っぽく、太陽光をあまり反射しない。そのため、その多くの幾何学的アルベドが0.1未満と極めて暗い。

小惑星のタイプ別の特徴として、スペクトル(波長の長さごとに対する規格化された反射率をプロットしたグラフ)の勾配の違いが存在する。具体的には、可視光から近赤外までの波長を調べた際、波長が長くなるにつれて反射率も増加する正の勾配(右肩上がり)、変化のない平坦、波長が長くなるにつれて反射率が減少する負の勾配(右肩下がり)の3種類だ。途中の区間だけ平坦だったり負だったりする場合もある。C型小惑星の場合は、可視光から近赤外にかけて、途中のスペクトルの勾配が平坦、もしくは負となる「吸収帯」があることが特徴となっている。

  • 小惑星フリーダおよびアバストゥマニの反射率スペクトルと測光データ

    小惑星フリーダおよびアバストゥマニの反射率スペクトルと測光データ。赤線および青線は、それぞれ、「バス・デメオ分類法」に基づくX型およびC型小惑星の平均スペクトル。X型のスペクトル勾配が正であるのに対し、C型には前半に平坦および負の勾配となっている吸収帯が存在する。(出所:ISAS Webサイト)

また、C型と同様に暗い小惑星として、一般的な彗星と反射特性が似ている「暗いX型」が存在する(X型は大別して3タイプある)。ただし、C型と暗いX型ではスペクトルが大きく異なり、X型は勾配が平坦だったり負だったりする部分が存在せず、正の勾配を描く。スペクトルさえ取得できれば、両者を区別することは容易だ。

こうした中、研究チームは今回、太陽系初期の「プラネテシマル」(太陽系形成期に作られた微天体)の生き残りと考えられている直径100km以上の小惑星の組成を詳しく調べるため、ハワイ・マウナケアにある口径3.2mのNASA赤外線望遠鏡施設を用いて、波長0.8~2.5μmの近赤外線域での分光観測サーベイを実施したという。

観測の結果、既知の小惑星「フリーダ」および「アバストゥマニ」が、可視光域の特徴はX型でありながら、近赤外域の特徴はC型を示す特性を持つことが発見された。さらに文献調査を行うと、同様の特徴を持つ直径100km以上の「X&C型小惑星」が約10個存在していることが見出された。小惑星のX型とC型のスペクトル間に連続性が見られることは、これらの小惑星が(部分的に)分化しつつ、同じ始原的特性を共有していることを示唆しているとした。

さらに、X&C型小惑星の表面は、「マグヘマイト(磁赤鉄鉱)」や極細粒の「マグネタイト(磁鉄鉱)」よりも、「クロンステダイト(鉄珪酸塩鉱物)」で構成されている可能性が高いことが明らかにされた。クロンステダイトは、水や有機物に富む最も原始的なC型小惑星の母天体である「CIコンドライト親天体」のマントル層で生成される可能性が高いことから、X&C型小惑星は、CIコンドライト隕石の分化母天体のマントル層に相当する可能性があるとする。

  • 研究チームが提案する内部構造モデルの概要図

    X&C小惑星の分化が部分的に進んだ親天体について、研究チームが提案する内部構造モデルの概要図。灰色がコア部分で水質変成が最も進んだ領域、赤色がマントル部分で水質変成があまり進んでいない領域、黄色は水質変成がない領域を示す。(出所:ISAS Webサイト)

また、地球上では未発見の「CI2コンドライト隕石」に相当する可能性もあるとした。CI2コンドライト隕石とは、水と無水岩石との化学反応である水質変成があまり進んでいないCIコンドライト隕石の一種だ。一般に知られるCIコンドライト隕石は、水質変成の進んだCI1コンドライト隕石を指す。

したがって、太陽系の最初のプラネテシマルが分化し始めた際、各層の組成が徐々に異なっていくことで、C型とX型の両方の組成が生まれた可能性があるという。これらの母天体が衝突によって破砕された時、共通の母天体を持ちながらも組成の異なる天体ができたことが考えられるとしている。