- 「Rakuten AI for Desktop」は法人向けHP製PCから順次提供し、2026年10月以降はコンシューマー向けにも展開する。
- PC上で動作させるオンデバイスモードと、楽天のAIサービスなどと連携するクラウドモードを切り替えて利用できる。
- オンデバイスAIとクラウドAIを組み合わせたハイブリッドAIによって、高い生産性と安全性を備えたAI環境の実現を目指す。
楽天グループと日本HPは7月29日、日本国内で販売するHP製PC向けに、楽天グループが開発したエージェント型AIツール「Rakuten AI for Desktop」をプリバンドルして提供すると発表した。
法人向けHP製PCから順次展開し、コンシューマー向けには2026年10月以降の提供を予定。利用時にはスタートメニューなどから起動して専用サイト経由でアプリをセットアップすることで利用できる。
Rakuten AI for Desktopは、楽天が開発した約70億パラメータの日本語大規模言語モデル(LLM)「Rakuten AI 7B」をPC上で直接動作させる「オンデバイスモード」に対応した点が特徴。楽天グループでは、特に営業職など移動が多いビジネスパーソンを想定し、インターネット接続がない環境でも、要約や翻訳、文章リライトといった生成AI機能を利用できることがメリットとする。
2026年秋から半年間は無料で提供されるが、その後は有料化される予定。なお両社の協業に関しては2025年11月に予告されていた(該当発表)。
楽天AIをHP製PCへプリバンドル、ハイブリッドAIで仕事効率化
Rakuten AI for Desktopは、楽天が開発したHP製PC向けアプリケーション。今回初めて、楽天独自の日本語特化型LLM「Rakuten AI 7B」の特別版「Rakuten AI 7B ONNX」がPCへ提供され、オンデバイス利用も可能になった。
ユーザーは用途に応じて、ローカルで動作しプライバシー保護を備えた「オンデバイスモード」と、インターネットに接続し楽天グループが提供する専門AIエージェントなどに接続できる「クラウドモード」の2つの動作モードを切り替えられる。
オンデバイスモードでは、PC内蔵のAI演算機能(NPUなど)を活用し、要約、翻訳、文章リライトをローカル処理。オフライン環境で利用できるため、機密性の高い資料などを扱え、低遅延で利用できる。一方クラウドモードでは楽天市場など各サービス向けAIエージェントや楽天エコシステムと連携し、リアルタイムの情報取得や複雑なタスク処理が行えるとする。
なお、オンデバイスモードで処理したデータは、その後クラウドモードへ移行した際も、ローカルから外部へ流れることはないという。
ネットがない環境でも使えるオンデバイスAIを実現
Rakuten AI for Desktopの画面は、楽天のAIエージェント/エコシステムと対話できる「AIチャットウィンドウ」を中心に、画面上の任意の位置やシステムトレイに配置できる「フローティングアイコン」、選択したテキストや画像に対し操作候補を提案する「コンテキストアクションバー」などで構成される。
実装された独自LLM「Rakuten AI 7B ONNX」は、フランスのAI企業Mistral AIが公開するオープンソースLLM「Mistral-7B-v0.1」をベースに、楽天が楽天独自の多段階フィルタリングやアノテーション工程を経て品質を高めた日本語基盤モデル「Rakuten AI 7B」の特別版。HP製PC上で効率的に動作するよう、継続学習やファインチューニング、量子化(Quantization:モデルを軽量化する技術)を実施している。
楽天グループ 専務執行役員 Group CAIDO(チーフAI & Dataオフィサー) AI & Dataディビジョン グループシニアマネージングエグゼクティブオフィサーを務めるティン・ツァイ氏は、ローカル上でのAI利用に際し、機内などオフライン環境でAIエージェントが使える利便性に加え、低遅延な点、クラウドでのAI利用時に発生するトークン課金が不要となる点を挙げ、「ローカルPCに高い計算能力があるならそれを使えば効率的」だとした。
実装にあたってはクラウドで使う大規模モデルと同等の精度を、可能な限り小型化する方向を目指したという。また、コンテキストアクションバーやフローティングアイコンの導入でRakuten AI for Desktopをどの作業中でも呼び出せ、コピー&ペーストの手間をできる限り省き手軽にアクセスできるよう設計された。
今後はユーザー許可のもとで、より多くのローカルコンテキストを活用して自律的に稼働させるAIエージェントへ進化させたい考えだ。
AIを呼び出しやすくするPC向けの操作画面
日本HP 代表取締役 社長執行役員の岡戸伸樹氏は今回の協業について、「クラウドAIの広範な知識と、オンデバイスAIの低遅延・プライバシー保護・コスト効率という強みを適材適所で使い分ける『ハイブリッドAI』を日本の市場で具体的な体験として届ける」取り組みだと紹介した。Rakuten AI for Desktopのプリバンドルにより、日本におけるHP製PCの価値を高めていくとする。
今回の協業で、楽天グループは日本語や日本の文化・生活習慣に最適化したAI体験、70以上のサービスが生む強力なエコシステムを、日本HPはAI PCのハードウェア、オンデバイスAIのノウハウ、セキュリティ技術、広範な法人顧客基盤などを提供。
日本HPではこれまで、ビジネスパーソンに向け「Future of Work」(未来の働き方)と称し、のぞき見防止ツール「HP Sure View」などのセキュリティ、内蔵eSIMサービス「HP eSIM Connect」などのコネクティビティといった課題解決機能を提供してきた。
ローカル環境でAIを使うことはこれらに続く第3ステージとなり、2社の強みを組み合わせて実現したRakuten AI for Desktop搭載PCは、「ゴールではなくFuture of Workのスタート。デバイス、セキュリティ、通信、AIを一体で提供することで、Future of WorkやハイブリッドAIを促進していく」(岡戸氏)と強調された。
法人から順次展開、将来は全HP PCへ拡大
Rakuten AI for DesktopをプリバンドルしたHP製PCは、7月29日から順次、日本の法人向けHP製PCで提供を開始する。
2026年10月以降はコンシューマ向け製品でも順次提供する予定で、今後HP製の全PCへのプリバンドルが予定されている。ただし、ゲーミングPC、シンクライアント、一部のワークステーションは対象外。
初回利用時に専用サイトからアプリを取得して利用する形となり、購入ユーザーはPCのタスクバーやスタートメニューからRakuten AIのアイコンをクリックし、Rakuten AI for DesktopのWebサイトからアプリケーションをダウンロードすると機能を利用できる。
コンシューマ向け製品への提供がはじまる2026年秋から半年間は無料で提供されるが、その後は有料化する予定(価格未定)。楽天グループ担当者は「収益化というより、まずはHPの法人PCを利用するユーザーにRakuten AIを試してもらい、その便利さを体験してほしい」とコメントした。













