京都大学(京大)は6月25日、三重県熊野灘の海底において、カンカイオニナナフシ科Litarcturus属の不明種を発見し、形態形質を詳細に精査した結果、頭部に2本の長い眼上棘があること、体全体の棘は第1触角の第2柄節と第3柄節の長さがほぼ同じであること、尾節の棘が比較的短いことなどの形質から、同種が未記載種(新種)であることが判明し、採集場所にちなんで学名を「Litarcturus kumanoensis」、和名「クマノオニナナフシ」として記載したことを発表した。
同成果は、京大大学院 理学研究科の奥村由純大学院生、京大 フィールド科学教育研究センターの中野智之准教授、同・下村通誉教授らの研究チームによるもの。詳細は、動物の系統分類と新種記載を専門とする論文誌「Zootaxa」に掲載された。
深海に棲むオニナナフシは甲殻類の軟甲綱等脚目に属し、エビやカニなどの仲間だが、より正確には深海のアイドルとして人気のダイオウグソクムシや、陸上のダンゴムシと同じ「等脚類」に分類される。等脚類は、その名の通り脚の形状がほぼ同様であることを特徴とする。オニナナフシの仲間は、海洋に漂う有機物を前脚にある長い刺毛(しもう)で絡め取り、それらを摂取して栄養を得ていると考えられている。こうした独特な採餌様式を持つことから、深海底の中でも、海流のある場所で生活している可能性がある。
オニナナフシ類には、主にオニナナフシ科とカンカイオニナナフシ科が存在する。後者は世界で17属105種が知られており、その大半が両極周辺などの冷水域の深海に生息している。特に南半球において高い多様性を示すため、北半球、とりわけ日本周辺海域からの報告は極めて限られていた。そうした中、2023年、三重大学の教育練習船「勢水丸」による調査で、三重県熊野灘の水深765~768mの深海において、国内2例目となるカンカイオニナナフシ科Litarcturus属の個体が採取された。不明種だったことから研究チームは今回、その詳細を調べることにしたという。
詳細な解剖的な形質の精査の結果、頭部に2本の長い眼上棘があることに加え、体全体の棘は第1触角の第2柄節と第3柄節の長さがほぼ等しいこと、尾節の棘が比較的短いことなどの明確な相違点が確認された。これにより、既存の種とは異なるカンカイオニナナフシ科Litarcturus属の未記載種であることが突き止められた。そこで、採集場所の熊野灘にちなみ、この新種の学名は「Litarcturus kumanoensis」、和名は「クマノオニナナフシ」とされ、新種として記載された。
大半の種が南半球に生息しているLitarcturus属において、今回記載されたクマノオニナナフシは北太平洋の熊野灘で発見されたが、実際にどのような地理的分布を持っているのかは現時点では不明だ。また、カンカイオニナナフシ科の仲間は水深が深いところに生息する種が多く、そのためエビやカニなどの甲殻類より身体が細く、非常に脆い。そのため、これまでの調査で見落とされていたか、あるいは破損して同定できなかった可能性があり、日本周辺における種多様性が過小評価されている可能性も考えられるという。研究チームは今後も、日本沿岸での乗船調査により、これまで未解明だったカンカイオニナナフシ科の種多様性を解き明かしていきたいとしている。
