パナソニック HVAC&CCと神戸大学の両者は7月27日、弱酸性かつ軟水の水を用いた洗顔が肌状態に及ぼす影響について検証し、肌の保湿・バリア機能への効果を確認したと共同で発表した。

  • 今回の研究により、弱酸性軟水による肌の保湿・バリア機能効果が確認された (出所:パナソニックWebサイト)

    今回の研究により、弱酸性軟水による肌の保湿・バリア機能効果が確認された (出所:パナソニックWebサイト)

同成果は、パナソニック HVAC & CCと、神戸大大学院 海事科学研究科の辻野義雄特命教授の共同研究チームによるもの。詳細は、6月25日に「日本香粧品学会」にて発表された。

一般的に肌のバリア機能を保つには、肌表面を弱酸性に維持することが重要とされている。しかし、水道水は地域差があるものの基本的に中性のため、洗顔や入浴などで肌が水道水の影響を受ける可能性がある。また、水道水にはカルシウムやマグネシウムが微量に含まれており、これらがせっけん成分と反応して生成される「せっけんカス」が肌に付着し、乾燥を招く一因となることも知られている。

パナソニック HVAC&CCは、水の安全性や清浄度を追求する研究を進める中で、単なる安全・清浄にとどまらず、上述したような「水質そのものが生活者の体感や身体へ影響を与えている可能性」に着目。そこで今回の研究では、神戸大の辻野特命教授との共同研究により、水質を弱酸性に調整し、かつカルシウムやマグネシウムを除去した「弱酸性軟水」(pH4.2±0.4・硬度10ppm以下)を開発し、肌状態への効果検証を行うことにしたという。

今回の研究では、2025年2月から4月にかけ、日常の洗顔時に使用する水を水道水から弱酸性軟水に切り替える実験が実施され、肌状態の測定と主観評価(アンケート)が行われた。実験参加者27名(40〜50代の関東在住の健常な男女)を2グループに分け、試験水として弱酸性軟水と「中性軟水」(pH7.8±0.7・硬度10ppm以下)をそれぞれ4週間ずつ使用して朝晩の洗顔を実施。洗顔後、温度20±5℃、湿度50±10%RHの環境で20分間馴化した後に、額・右頬・左頬の3か所の肌状態が測定された。

  • 参加者の性別・年代構成 (出所:パナソニックWebサイト)

    参加者の性別・年代構成 (出所:パナソニックWebサイト)

実験参加者の経表皮水分蒸散量、角層水分量、皮膚粘弾性、皮脂量、肌pH、画像解析、皮膚常在菌叢が測定された。研究成果としては、肌のバリア機能を評価する指標の1つである経表皮水分蒸散量、皮膚のうるおい状態を評価する指標である角層水分量、皮膚のはり・引き締まりを評価する指標の1つである皮膚粘弾性の3項目での改善が確認されたとした。

まず経表皮水分蒸散量だが、この値はバリア機能が向上すると低下する指標である。弱酸性軟水を用いた結果、水道水使用時と比較して左頬で19%低減し、有意な改善効果が確認された。

続く角層水分量は、値が高いほど角層に十分な水分が保持された状態であることを示す指標だ。弱酸性軟水、中性軟水の双方で数値の上昇(良化)が確かめられたことから、カルシウムやマグネシウムを除去した軟水そのものを用いることが、肌の保湿力改善に寄与することが明らかにされた。

最後の皮膚粘弾性は、皮膚のはり・引き締まりを評価する指標の1つであり、はりが向上すると値が低下する。弱酸性軟水使用群では水道水使用時と比較して数値が低下し、この項目でも有意な改善効果が示されたとした。

また、実験後に実施された肌の質感に関する主観評価においても、弱酸性軟水使用群は水道水使用時と比較して、「しっとりする」「すべすべする」といった項目で評価の向上が確認されたという。

  • 経表皮水分蒸散量の結果 (出所:パナソニックWebサイト)

    経表皮水分蒸散量の結果 (出所:パナソニックWebサイト)

  • 角層水分量の結果 (出所:パナソニックWebサイト)

    角層水分量の結果 (出所:パナソニックWebサイト)

  • 皮膚粘弾性の結果 (出所:パナソニックWebサイト)

    皮膚粘弾性の結果 (出所:パナソニックWebサイト)

  • 主観評価の結果 (出所:パナソニックWebサイト)

    主観評価の結果 (出所:パナソニックWebサイト)

今回の弱酸性軟水が肌状態を良化させたプロセスとしては、「軟水効果(せっけんカスの低減)」と、「弱酸性効果(即時的・長期的肌環境改善)」という2つのアプローチからなる作用機序仮説が立てられた。

まず軟水効果(せっけんカスの低減)だが、水道水中の硬度成分を除去した軟水を使用することで、肌表面における皮膚残渣(せっけんカス)の生成・付着が軽減される。これにより、角層水分量の向上がもたらされることが期待されるとした。

弱酸性効果(即時的・長期的肌環境改善)については、弱酸性の水が持つ収斂(しゅうれん)効果により、洗顔直後から肌を引き締めることが考えられた。さらに、長期的に使用することで皮膚表面のpHが安定的に低く保たれ、「コリネバクテリウム」などの悪玉菌が棲みにくい皮膚常在菌環境へと改善。結果として肌のバリア機能が強化され、外部刺激からの防御力が高まることで、肌の赤み、かゆみ、肌荒れといった炎症を抑制する効果が期待されるとした。

  • 弱酸性による皮膚状態良化の作用機序仮説 (出所:パナソニックWebサイト)

    弱酸性による皮膚状態良化の作用機序仮説 (出所:パナソニックWebサイト)

なお、実験参加者の自宅の水道水はpH7.2±0.4・硬度60〜120ppmという水質だったが、洗顔後に水道水で洗い流すことで、肌が水道水と同じ中性付近へと傾くことも今回の研究結果から明らかにされた。

今回の結果は、洗顔に弱酸性軟水を用いることで、肌表面が速やかに肌本来の弱酸性域へと回復しやすくなり、肌環境が整うことでバリア機能の維持に寄与した可能性を示唆している。

神戸大の辻野特命教授は今回の成果に対し、「軟水化することで、刺激の原因となる微量なせっけんカスや金属イオン由来の沈殿物の皮膚への付着を減らせたことと、弱酸性化することで、洗顔に伴うpHの上昇を抑えられたことにより、常在菌叢にストレスを与えなかったこと、これらの組み合わせが良好な皮膚状態につながったと考えられます」とコメント。

パナソニック HVAC & CCは、今回は研究段階の試験結果であり、現時点で今回の技術を搭載した製品の実用化には至っていないとする。ただし、今後も、水や空気といった身近な環境要素に対する技術的検証を通じ、日々の暮らしの質向上につながる研究開発を進めていくとした。また今回の研究を皮切りに、今後も弱酸性軟水に関する研究を継続し、肌の美しさに加え、肌のトラブルや困りごとを解決する水の開発を目指し、人々の健やかな暮らしに貢献していくとしている。