大阪大学(阪大)は、大阪市の小学4年生1,225人のデータをもとに研究を行い、学童期の児童では、食べ物を細かく噛み砕く「咀嚼」(そしゃく)能力が高い児童ほど、身体の運動能力も高いことを明らかにしたと、7月27日に発表した。
同成果は、阪大大学院 歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座の平松里彩大学院生、同・池邉一典教授、阪大 歯学部附属病院の髙阪貴之講師、阪大 歯学研究科口腔科学専攻の大継將寿助教、阪大 歯学研究科 口腔科学専攻の仲野和彦教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、歯科修復学および歯科材料を扱う専門論文誌「Journal of Dentistry」に掲載された。
現代日本では食生活の軟食化が進み、日本人の咀嚼負荷の低下が顎骨(がくこつ)の発達に影響している可能性が指摘されている。
頑丈な下顎骨(かがくこつ)を持っていたかつての世代と比べ、近年の世代では日常的な咀嚼負荷の減少によって下顎が十分に発達せず、横から見た場合に下顎角(下顎の角度)がかつては90度近い人が多かったが、現在では「く」の字型など、下顎角が鈍角となる傾向がある。また、顎骨が狭小化したことで歯が生え揃う十分なスペースが失われ、ガタガタとした歯並び(叢生(そうせい)などの歯列不正)に悩む若者や子どもが増加する要因にもなっている。
このような骨格変化や咀嚼機能の衰えは世代を重ねるごとに進行しており、近年は硬い食べ物を十分に噛めない、あるいはうまく飲み込めないなど、口腔機能に問題を抱える子どもが増加傾向にある。中でも咀嚼能力は、適切な栄養摂取を支えて健やかな成長に重要な役割を果たすため、その機能が低下することは望ましくない事態といえる。
また、学童期は身長が伸び、体重も増え、身体機能も大きく発達する子どもたちにとって極めて重要な時期だ。この時期の子どもたちの成長を反映する重要な指標の1つとして「運動能力」がある。この能力には、体格や運動習慣など、さまざまな要因が関わることが知られている。しかし、学童期の子どもにおいて、咀嚼能力と運動能力がどのように関連しているのかについては、これまで十分に解明されていなかった。
そこで研究チームは今回、大阪市教育委員会や大阪市学校歯科医会、ロッテなどと連携協定を締結し、大阪市の小学4年生1,225人を対象とした大規模な研究を実施することにしたという。
今回の研究では、咀嚼能力についてはロッテが開発した咀嚼能力測定用のキシリトール咀嚼チェックガムを用いて客観的な評価が行われた。一方、運動能力については、握力、上体起こし、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、立ち幅跳び、ソフトボール投げの7種類の体力テストが実施された。さらに、それぞれの結果を組み合わせ、子どもの全体的な運動能力の評価が行われた。
解析の結果、咀嚼能力が高い児童ほど、反復横跳び、20mシャトルラン、50m走、ソフトボール投げなど、複数の体力テストで良好な成績を示し、7種類の体力テストを総合した運動能力も高いことが明らかにされた。また、身長や体重などの体格の違いを考慮して解析を行った場合でも、咀嚼能力が高いほど総合的な運動能力が高いという結果が得られたとした。
今回の研究成果は、「しっかり噛める」ことが子どもの運動能力と関連する可能性が示されたものといえる。今回の研究を契機として、今後は学校や家庭での健康づくりにおいて、口腔機能にも着目した取り組みにつながることが期待される。

