北斗七星は、星空の入門にふさわしい星座です。北極星を探す目印としても有名ですな。

そして、その見ごろは、春~初夏なのでございます。

と、ここまでは普通の星空案内ですが、北斗七星は、そのうち5つが、3億年前に一緒に生まれた兄弟の恒星でもあります。

北極星を探す、だけじゃない、北斗七星の天文学をご紹介します。

春の代表「北斗七星」

季節には、それぞれ代表的な星座や天体があります。冬はオリオン座とシリウス、夏はさそり座と天の川と織姫に彦星、秋はカシオペヤ座、そして春は? やはり北斗七星でございます。

北斗七星といえば、小学校の宿題で「見つけてきなさい」というので有名です。実際に、2等星6個、3等星1個と明るい星が、スプーンか「ひしゃく」のような形にならんでいて見つけやすいです。

さらに北極星を見つける目印として使える。

下は、東京や大阪のような大都会でも見える2等星より明るい恒星だけの図ですが、北斗七星が、たしかに主張しているのがわかりますな。

そして、他の「星の目立つポイント」は、おおむね天の川に沿っているのですが、北斗七星だけは場所がちょっと違う。明らかに特異なのです。1つならたまたまというのはあります。が、こんなところに1つとかでなく、「七星」を作れるほどいくつも星が群れているのは変なのでございます。

  • 北斗七星

ほぼ等間隔にならんでいる北斗七星

そこで、北斗七星を天体カタログで調べてみると、面白いことがわかります。ここでの整理番号はこの原稿だけの説明用です。

  • 北斗七星

北斗七星は、ほぼ距離が同じで、だいたい100光年±20光年にあるのですが、そのうち2~6までの5つの星は、81光年±3光年にあり、同じ距離にあると言って差支えありません。図に名前の横に()で距離をつけたものです。真ん中の5つが同距離ですね。

  • 北斗七星

北斗七星は、ほぼ等間隔にならんでいる感じなのですが、たとえば、右から2番目のメラクと3番目のフェグダは角度にして8度で、3番目のフェグダと4番目のメグレズの2つは4.5度です。ざっと6度で、これは10分の1ラジアンですから、距離が80光年ですので、相互に8光年平均離れているという感じになります。え? いきなり理系しぐさ? いやまあうん。結果だけ見てもらってもいいですし、そうやって見当つけるんだと思ってもらってもよいですよー。

同じ距離にあるという点では、すばるのような星団のようでもあるのですが、8光年というのはちと離れている感じです。太陽の隣の恒星であるケンタウルス座アルファ星系は4光年。寿命が10億年のシリウス(つまり太陽の年齢46億歳よりずっと若く、一緒に生まれていないのは明白)は9光年くらいですから、まあたまたま隣にならんでいると思っても間違ってはいないですしね。

ただ、これに各星の動きを見てみると、えっと思います。

  • 北斗七星

なんと、真ん中の、同距離の5つの星は同じ方向に運動しているのです。これはもう関係性があるやろということになるわけですな。

北斗七星は最も太陽系に近い運動星団

これに気が付いたのが、イギリスのプロクターという天文学者です。1869年にこれを発見し、星たちが一緒に漂流(ドリフト)している星ということになりました。ドリフトしている星だから<ドリフターズ>と東明は勝手に言って、ふふふと思っています、5つの星でドリフターズとなると、世代の人はほうって感じですな。わからない人はスルーして問題ございません。ええ、ここだけの言い方ですからね。

さらに、1909年にドイツのヘルツスプルグが詳しくしらべ、このドリフターズの他にも、一緒に移動している星がいくつもあることを示しました。現在では、おおぐま座の他のいくつかの星や、かんむり座のα星であるアルフェッカ、へび座のβ星など60個程度の星が同じ集団を作っていることがわかっています。そして北斗七星はその集団の中心にあるのです。

これらは、見かけ上はバラけていますが、一緒に生まれた星団と同等なもので、運動でわかるということで、おおぐま座運動星団と言っています。スウェーデンのコリンダーは、星団のカタログを作って、この、おおぐま座運動星団を、Collinder185としました。Cr185と表記します。Colだと、はと座の番号になるので、あえて “C”ollinde“r”ということで、“Cr”と表記しています。あ、ここは東明の覚書です。

おおぐま座運動星団Cr185は、いまから4億年くらいに誕生したと考えられています。それでいまでは、星団とはとても見えないくらいバラけています。星団の中には10億年とか100億年くらいたってもバラけていないものもありますが、それは非常に密集した大規模な場合だけであって、数億年でバラバラになるのが普通なんだろうなあということがうかがえます。

太陽は誕生して46億年ということがわかっていますので、そりゃ一緒に生まれた仲間がわからんのが普通だよなと検討が付くわけです。

なお、他の運動星団としては平均距離150光年のヒアデス星団(Cr50)を中心にしたグループや、がか座β星運動星団、さそり座~ケンタウルス座アソシエーションなどがいくつかが知られています。あ、そう、さそり座の星もほぼほぼ同じところで生まれた仲間で、みなみじゅうじ座の星もメンバーなのです。

そのなかで、北斗七星は最も太陽系に近い運動星団で、太陽系をほぼ飲み込むような形でドリフトする星の集団です。