水中でのレーザー照射で多元素からなる「ハイエントロピー合金」の微粒子を作り、特定の元素が偏在する原因を突き止め、元素の割合を操作できることも確かめたと、大阪公立大学のグループが明らかにした。ハイエントロピー合金は次世代の材料として幅広い応用が期待されており、その作製方法の研究開発に役立つ可能性があるという。

  • alt

    水に浸した材料にレーザー照射する様子(左)と、照射により材料の一部がプラズマ状態になって飛び散り、微粒子ができることを示した模式図(大阪公立大学提供)

銅に亜鉛を加えた真ちゅう、鉄にクロムを加えたステンレス、アルミニウムに銅やマグネシウムを加えたジュラルミンなど、複数の元素からなる合金は単一の金属では得られない特性を持つ。これら昔からある合金は、主要な金属の特性を向上させるため別の金属を加えたものが多い。

2004年、5種類以上の元素をほぼ等しい割合で混合した「ハイエントロピー合金」の概念が提唱された(元素が3、4種類のものはミディアムエントロピー合金)。こうした合金は強度や耐熱性、耐食性などで優れていることが分かってきており、近年、触媒や電極材料、生体材料、熱電材料として応用しようと研究が進んでいる。

大阪公立大学の八ツ橋知幸教授(光化学)は、海外ではあまり研究されていない紫外レーザーの効果や、水中での合金作製について調べようと考えた。鉄・コバルト・ニッケルからなる3元合金(FeCoNi)、これにクロムを加えた4元合金(CrFeCoNi)、さらにマンガンを加えた5元合金(CrMnFeCoNi)を用意。それぞれを水に浸した状態で、近赤外レーザー、緑色に見える可視レーザー、紫外レーザーのいずれかを1秒間に100回照射すると、1マイクロメートル(1000分の1ミリ)より小さく、概ね0.1マイクロメートルより大きい合金の「サブミクロン粒子」ができた。

これらのサブミクロン粒子を透過型電子顕微鏡で見ると、小さいものだと各元素がほぼ均一に分布していたが、直径0.2マイクロメートルを超えてくるあたりから、鉄(Fe)やクロム(Cr)、マンガン(Mn)が外側、コバルト(Co)とニッケル(Ni)が内側に分布していた。元素の分布については、「コアシェル型」「三日月型偏析」「均一分布」「相分離」という4つのタイプがあった。 八ツ橋教授によると、どのレーザーでも同じような結果だったといい、各元素の酸化されやすさなどが関わっていると考えられるという。

  • alt

    CrFeCoNi粒子内の元素の分布を透過型電子顕微鏡で調べた。CrとCoとNiを重ねた画像(下段中央)から4タイプ(Aコアシェル型、B三日月型偏析、C均一分布、D相分離)があることがわかる(大阪公立大学提供)

また、サブミクロン粒子の元素の組成をエネルギー分散型X線分析で調べると、紫外レーザーで作ったものは粒子の直径が小さくなると元素の割合が大きく変化していた。FeCoNi粒子ではFeの割合が、CrFeCoNi粒子ではCrとFeの割合が、CrMnFeCoNiではCr、Mn、Feの割合が、それぞれ元の原料と比べて顕著に増えた一方で、CoとNiは減少していたという。可視レーザーを用いた場合も同じ傾向が見られたが、紫外レーザーほどではなかった。近赤外レーザーでは、組成変化がほぼ起こらなかった。

  • alt

    CrFeCoNi粒子を直径200nm(ナノメートル。0.2マイクロメートル)より大きい粒子と小さい粒子に分け、レーザー照射前後の元素の増減を調べた。赤は「増」、青は「減」を示す(大阪公立大提供)

ハイエントロピー合金の研究については、できるだけ均一に混ざった合金を作ることに焦点を当てたものが多いが、機能を発揮させるためには元素の偏在も必要だという。今回の研究では、水中で紫外レーザーを照射することが合金の組成を変化させる条件になっているとみられ、八ツ橋教授は「レーザーの波長によって特定の元素を、特定の部位に、特定の割合で偏在させる操作の道筋を示したといえるだろう」と話す。

研究は6月1日、国際学術誌「ジャーナル・オブ・アロイズ・アンド・コンパウンズ」の電子版に掲載された。

関連記事

海水から水素の製造可能に、貴金属を使わない合金電極を開発 筑波大など

元素間融合で発現する機能の謎を解明