大阪市立自然史博物館(OMNH)、筑波大学、茗溪学園中学校高等学校の3者は6月24日、マメ科植物を食する甲虫「シロコブゾウムシ」の成虫に寄生する「コマユバチ」の仲間を発見し、その形態的特徴から「ハラボソコマユバチ亜科Perilitus属」の未記載種であることが判明したことから、新種「Perilitus mahout」として記載したことを共同で発表した。

  • 寄生蜂「Perilitus mahout」のメス成虫ホロタイプ

    新種として記載された寄生蜂「Perilitus mahout」のメス成虫ホロタイプ(正模式標本)の左側面全景図。(出所:OMNH Webサイト)

同成果は、OMNH 昆虫研究室の藤江隼平学芸員、筑波大 生命環境系の藏滿司夢助教、茗溪学園高等学校の田村和暉生徒(現・茨城大学 農学部所属)らの共同研究チームによるもの。詳細は、動物の系統分類と新種記載を専門とする論文誌「Zootaxa」に掲載された。

シロコブゾウムシに寄生する蜂の発見は世界初

寄生蜂はさまざまな昆虫に産卵し、寄主となる昆虫の体を食して発育する。中でも、ハラボソコマユバチの仲間は、幅広いグループの昆虫に寄生することや、通常はあまり利用されない成虫を寄主として利用できるものがいる点で特異とされる。その中でも、いくつかの属は甲虫の成虫に寄生し、そのうちのPerilitus属は世界で140種ほどが知られている。

なお、有名な「ジガバチ」も幼虫の餌となるイモムシなどに卵を産み付けるため寄生蜂のイメージがあるが、獲物に毒針を刺して麻酔させ、巣に持ち帰る生態のため「狩り蜂」に分類されている。

日本において、Perilitus属の寄生蜂はこれまで2種しか記録されていなかった。それに対し、近隣のロシア沿海州からは21種も記録されていることや、すでに日本国内で得られた標本からいくつかの未同定種が見出されていたことから、同属の分類学的な研究を進める余地が多く残されていると考えられていた。

研究チームでは2017年、シロコブゾウムシを数日間も水に沈めても死なないことを発見。その後も研究を継続した結果、同甲虫に寄生する蜂の発見に至ったとする。そこで研究チームは今回、シロコブゾウムシの成虫を野外で大量に採集して飼育し、脱出してきた寄生蜂を詳しく調べたという。

今回の研究では、茨城県つくば市、奈良県橿原市、大阪府高槻市でシロコブゾウムシの成虫を野外採集し、クズの葉で飼育が行われた。同甲虫の成虫から寄生蜂が脱出し、マユを作った後は、適度に湿った室温条件を保持し、マユから羽化した寄生蜂の成虫が採取された。寄生蜂は乾燥標本とし、顕微鏡を用いた形態観察や、デジタルマイクロスコープを用いた各部位の画像撮影が行われた。

茨城県で実施された調査では、採集された70匹のシロコブゾウムシの成虫のうち、2引きがPerilitus属の寄生蜂に寄生されていた。シロコブゾウムシの成虫の肛門から、おおよそ20~50匹の寄生蜂幼虫が脱出し、それぞれの幼虫が独立してマユを作るのが確認された。なお、寄生蜂の幼虫が脱出した後のシロコブゾウムシの成虫は、1日以内に死亡したという。

そして、羽化した寄生蜂のメス成虫をシロコブゾウムシの成虫と一緒に入れたところ、寄生蜂のメス成虫が同甲虫を後ろから追いかけたり、体の上に乗りかかったりする行動が観察されたとした。

得られた寄生蜂の形態観察の結果、モンゴル原産の「Perilitus eugenii」と形態的に類似しているものの、前方から見た頭部の特徴や後体節第1背板の彫刻などに差異があることが確認された。また、中国で記載されたハムシの成虫に寄生する「Perilitus xynus」にも形態が類似していたが、複眼の形状や後体節第1背板の彫刻に差異があったという。

これらの近縁種と明確に形態的相違があると考えられたため、シロコブゾウムシに寄生するこの寄生蜂は新種と判断され、「Perilitus mahout」と命名された。種小名の「mahout」は英語で「象使い」という意味で、この寄生蜂のメスが寄主であるシロコブゾウムシの背中に乗る様子に由来するとした。

  • シロコブゾウムシ成虫の背中に乗るPerilitus mahoutのメスの成虫

    寄主であるシロコブゾウムシ成虫の背中に乗るPerilitus mahoutのメスの成虫。(出所:OMNH Webサイト)

甲虫であるシロコブゾウムシに寄生する寄生蜂が発見されたのは、今回が世界初の事例となるとのこと。この寄生蜂が、強固な体を持ち一見産卵する隙がないシロコブゾウムシに対し、どのようにして産卵・寄生するのか詳細は不明だ。研究チームは今後、その解明を進めていくとしている。