この半導体ニュースのまとめ

・TSMCの2026年5月売上高は前年同月比30.1%増、前月比1.5%増の約4169億8000万NTドルとなった
・世界的なAIインフラ需要の拡大を背景に旺盛なAI半導体需要が継続
・PwCの世界時価総額トップ100でTSMCが前年12位から9位へ浮上してトップ10入りした

TSMCは6月10日、2026年5月の連結ベースの月間売上高が、前年同月比30.1%増、前月比1.5%増の約4169億8000万NTドルと発表した。これにより2026年1月から5月までの累積売上高は前年同期比30.0%増の合計1兆9618億NTドルとなった。

  • TSMCの2026年5月の月間売上高概要

    TSMCの2026年5月の月間売上高概要 (出所:TSMC)

世界的なAIインフラニーズが旺盛なAI半導体の需要を後押ししていることが背景にある。同社は第2四半期売上高について前四半期比10%増というガイダンスを出しているほか、市場関係者の間からは前年同期比35%増という予測が出ている。

世界時価総額ランキングでトップ10入り

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が6月8日に発表した2026年版の世界時価総額トップ100社ランキング分析報告(2026年3月31日時点のデータに基づく)によると、TSMCの時価総額は前年比倍増の1兆4270億ドル(約229兆円)で、前年の12位から9位に浮上した。また、伸び率は上位10社トップの101%としている。

このTSMCの躍進により、トップ100社の合計時価総額を国・地域別にみると台湾は前回の7位から4位へと順位を上げたほか、成長率もトップ5か国・地域で最高値を記録した。PwCは「世界のテクノロジーサプライチェーンにおいて台湾が不可欠で重要な地位にあることを反映している」と分析した。ちなみに日本は昨年の9位から12位に後退している。

なお、トップ100社の合計時価総額は前年比22%増の51兆8000億ドルで過去最高を記録。NVIDIAがAppleを初めて上回り首位に立った。米国企業はトップ100社中62社を占め、合計時価総額は上位100社全体の75%を占めている。

先端技術が海外流失する可能性を否定

TSMCは6月4日、株主総会を開催し、株主からのさまざまな疑問に対し、同社の会長 兼 CEOである魏哲家(C.C.Wei)氏が見解を述べたことを複数の台湾メディアが伝えている。

  • TSMCの魏哲家(C.C.Wei) 会長 兼 CEO

    TSMCの魏哲家(C.C.Wei) 会長 兼 CEO (出所:TSMC)

株主からの質問としては、例えば、将来的な2nmプロセスなどの最先端技術が海外への拠点進出に伴い流出するリスクがないのかという問いがあり、それに対し同氏はすでにTSMCが世界の複数地域に生産拠点を展開していることに触れ、「現地に工場を建設するだけで技術が流出するのであれば、そもそも海外投資など行うはずがない。そこに工場を建てれば技術が盗まれるというなら、TSMCは海外に出ていかない」として、技術流出の可能性を否定したという。

また、東京エレクトロン(TEL)の従業員が関与した技術窃盗事件を踏まえ、TELをサプライチェーンから外す可能性について聞かれたことに対しては、「当該事件はTELの企業方針によるものではなく、個別の従業員による違法行為である。両社が協議した結果、TELは事件発覚後の調査に全面的に協力しており、関係者もすでに法的責任を問われていることから、同社との取引を継続する判断を下した」と述べたとする。

サムスンはTSMCに追いつけない

先端プロセス開発で競うSamsung Electronics(サムスン)が、「10年以内にTSMCを追い抜く」との目標を掲げていることについては、「同様の発言をもう20年以上聞き続けている」と指摘。「20年前も10年後に追いつくと言い、10年前も10年後に追いつくと言い、最近もまた10年後に追いつくと言っている」とこれまでを振り返った上で「(追いつくことは)夢物語にすぎない」と大きな差が存在していることを強調したという。

また、韓国は半導体メモリの最大生産国であるものの、ロジック半導体の最大生産国は台湾であることを強調し、TSMCの成長の背景には、ウェハ製造、前工程、そして後工程に至るまで台湾が数十年かけて構築してきた強固な半導体エコシステムがあり、その仕組みは他国が短期間で模倣できるものではないことを強調。それを踏まえ、「数年以内にTSMCに追いつけると考えているのであれば、それは絶対にありえない」と自信を示したとする。 さらに、Intelやサムスンとの微細化競争について「競合に打ち勝つ唯一の方法は、努力を続け、勝ち続けることだ」と強調した。

中国との競争には技術開発・生産効率と顧客の信頼で対抗

Samsung以外にも中国半導体産業の拡大が脅威になるかといった質問も出たが、同氏は「40年間、競争は続いてきた」と、競争そのものは新しい問題ではないとし、どの国・地域の競合相手であっても、技術開発に注力し、生産効率を高め、顧客からの信頼を維持するというTSMCの基本戦略は変わらないと述べたほか、今後も「技術世界一」「生産効率世界一」「顧客からの信頼世界一」を維持し続ける方針であり、競争相手の背景によってその方向性が変わることはないとしたとする。

加えて、AIがさまざまな分野で活用される時代となり、TSMCは先端技術と卓越した製造能力により引き続き成長していると指摘。今後も技術開発と生産能力の拡充に向けた投資を続け、顧客の成長を支えるとした。

TeslaのTerafab構想については成功を祈るだけ

ファウンドリではないため競合にはならないが、イーロン・マスク氏が発表したメガファブ構想「Terafab」プロジェクトについての質問に対して同氏は「自分自身もそのコンセプトを調べたことがある」とした上で、「最終的な感想は『成功を祈る』だけだ」と述べるにとどめたとする。

高NA EUVの量産導入は将来的なコスト最適化がなされたタイミング

TSMCは高NA EUV露光装置の量産ラインへの導入について、少なくともA13/A12世代では見送るとしている。これに対し株主からは競争力が低下するのではないかという懸念が示されたが、同氏は「高NA EUV露光装置に投資していないというのは完全に誤解だ」と否定し、すでに装置調達は完了しており、積極的な研究・開発を進めていること、ならびに将来的にコストが最適化された段階で量産ラインへ導入する計画であることを明らかにした。

CoPoSの試作ラインは構築済みも量産開始は2〜3年後を予定

同社の次世代先端パッケージング技術「CoPoS(Chip-on-Panel-on-Substrate)」ガラス基板の量産化スケジュールについては、すでに試作ラインは構築済みとするものの、本格的な量産に移行するには時間が必要で、2~3年後に大規模な生産段階へ進むとの見通しを示した。一方で、CoWoSやCoPoSは顧客と共同で技術開発と生産効率向上を進めているとし、「これらの技術を持つ限り、TSMCは世界トップであり続ける」と自信を示した。

メモリのような大幅値上げはしない

このほか、高まる需要を背景に「大胆な値上げ」を求める声が株主から上がったが、同氏は「継続的に努力していく」と応じつつも「ファウンドリ事業はメモリ市場のように価格が一時的に4倍に急騰するような構造ではない」と説明。一部のメモリサプライヤが価格高騰で利益率が80%に達したという話に「羨ましさも感じる」と冗談を交えつつ、「TSMCは持続可能な経営を重視しており、極端な価格戦略はとらない」と述べたとする。

持続可能な経営に必要な従業員、株主、社会への責任責任

持続可能な経営という点では先月、同社の従業員の賞与が15%削減されるとの噂が一部で流れた。これに対し同氏は、賞与は2023年から2025年にかけては毎年30%ずつ増えており、2026年も増加率は30%を超える見込みだと語り、噂を否定した。

その一方で、持続可能な発展のためには、従業員や株主だけでなく社会的責任も考慮しなければならないことを強調。TSMCは台湾で多くの土地、水資源を使い、電力に至っては台湾全体の10%近くを使用し、さらに台湾の優秀な人材を雇用するとともに税収の25%を支えている存在であるとし、果たすべき社会的責任はさらに大きくしていく必要があると述べたという。

最大の懸念は台湾の出生率低下による人材供給不足

なお、同氏はTSMCが抱える最大の懸念について、台湾の深刻な出生率低下とそれに伴う人材供給問題を挙げている。ただし「TSMC社員の家庭の出生率は、台湾平均の約5倍に達している」とし、「TSMCが実施してきた子育て支援や社員の福利向上などの施策が、一定の成果を上げている」と実績をアピールした。