NVIDIAは、TSMCが同社のAIおよび高速コンピューティング技術を活用し、半導体の設計および製造工程の高度化を進めていることを発表した。対象はリソグラフィ、トランジスタ設計、プロセス制御、検査といった半導体製造の全領域に及ぶという。
先端プロセスで急増する計算負荷
半導体プロセスの微細化が進むにつれ、設計から量産に至るまでの計算負荷は急速に増大している。
単に製造するのではなく、高い歩留まりを実現する必要があるためで、そのためにはリソグラフィやトランジスタシミュレーション、プロセス制御、ウェハ検査といった工程において大規模な物理シミュレーションとリアルタイム最適化、物理現象、画像処理など複数のアプリケーションを横断的にサポートする必要があり、従来の計算手法では対応が難しくなってきていることから、AIシステムの活用が不可欠となってきているという。
GPU計算とAIで設計・製造を高速化
TSMCの取り組みは、NVIDIAのCUDA-XライブラリやAIモデルを活用する形で、これらの計算負荷をGPUベースで処理することで効率化を図っているとする。
具体的には、リソグラフィ計算ではGPUアクセラレーションによりコスト効率や処理時間を20~50%改善し、材料設計に関わる電子構造計算では従来比で最大50倍の高速化を実現した。また、機械学習を用いたプロセス制御では、多数の工程パラメータを解析してばらつきを低減し、製造精度の向上につなげているとする。
AIの活用で欠陥検査を高度化
さらに検査工程では、NVIDIAのMetropolisおよびTAO Toolkitを活用した画像認識AIが導入されている。
これによりナノメートルレベルの欠陥検出精度が向上し、プロセス条件や装置の変化に応じた再学習の負担も削減されたとする。
先端プロセスでは微小な欠陥であっても歩留まりに直結するため、検査精度の向上は製造コストの低減にも直結する。
Omniverseの活用で仮想工場「FabTwin」を構築
このほか、NVIDIA Omniverseを用いた仮想工場環境「FabTwin」の構築も進めているとする。
これは製造装置や生産ラインの配置、プロセスフローなどをデジタル上で再現し、実装前にシミュレーションを行うものであり、この手法を活用することで、設備投資前の段階でボトルネックの特定や最適化が可能となり、意思決定の迅速化と開発リスクの低減につながるという。
前工程1つとっても1つのデバイスがウェハ上に形成されるまでに数百、数千工程を経る必要があり、スムーズかつ高い歩留まりでの生産を実現するためには、装置、材料、ロボット、人間、設備などの精密な連携が必要となることから、Omniverseの活用により、物理的な実装前に製造シナリオを仮想空間上でテストすることができるようになり、各テストを比較することで、潜在的な制約を早期に特定することができるようになるため、製造計画の効率を向上させることができるようになるほか、実際に投資を実行する前に、そうしたリスクなどを把握することができるようになるため、重要な意思決定を迅速化することができるようになるとする。
AIは半導体の進化を主導する立場になれるのか
今回の取り組みは、デジタルツインの活用という製造業のスタンスから見れば半導体工場にもそうした流れが訪れたと見ることができるが、AIという文脈で見ると、工程数の増加と、それぞれのプロセス条件の複雑化が人手による最適化を困難なものとし、AIの導入を不可欠なものとしつつあるといった形でとらえることができる。
そうした意味で今回のNVIDIAとTSMCの連携は、不具合なく高い歩留まりで先端プロセス採用の半導体を製造するためにはAIを製造インフラに結び付ける必要性から生じたものと言える。AIの中心である先端プロセス採用の半導体を製造するためにAIを活用する、この構図はAIが半導体製造のインフラそのものを変革する基盤へと位置づけを変化させている動きを示すものだと言えるだろう。