TSMCが4月16日に2026年第1四半期決算に関する説明会を開催。同社SVP兼CFOのウェンデル・ファン氏が業績の説明を行ったほか、C.C. ウェイ(魏哲家)会長兼CEOが、先端プロセスノードの開発・生産状況や成熟プロセスの生産縮小状況についての説明した。また、機関投資家との質疑応答の中で、HPCやAIの需要急伸で供給が間に合わない状況であり、グローバル規模で生産能力増強に取り組んでいる姿を強調した。
2nmは新竹と高雄で高歩留まりを実現、立ち上げは順調
ウェイ会長は、同社の2nmプロセス(N2)の生産能力拡張状況について、「最初の立ち上げには、台湾本社の研究開発部門との緊密な連携が必要であるため、(本社の研究開発部門に位置的に近い)台湾域内で行うことを優先している。すでに2025年第4四半期より高歩留まりで量産を開始しているが、スマートフォン(スマホ)およびHPC(高性能コンピューティング)、AIアプリケーションからの強い需要に支えられ、新竹と高雄の両サイトそれぞれの複数のフェーズ(製造棟)で順調に立ち上げが進んでいる。N2に続き、N2P(N2の改良版)やA16(いわゆる1.6nm=16オングストローム)のようなN2ファミリの継続的な強化戦略により、N2ファミリはTSMCにとって3nmプロセス(N3)に続く形で長期間にわたって活用される技術ノードになると期待している」と、その需要の高さに対する手ごたえを説明する。
高まり続けるAI需要に対してN3はグローバルで生産能力を増強
また、その長期間の需要が期待されるN3についても、「歴史的にTSMCは、ある技術プロセスノードが目標の生産能力に達した後は増強を行うことを止め、次世代プロセスの生産能力を伸ばす方針を貫いてきた。しかし、ファウンドリとしての第一の責任は、顧客に最先端の技術とイノベーションを提供するために必要な生産能力を確保ことであり、AIアプリケーションにおいてはN3に対する需要の増加が継続的しており、その生産能力を増強するための設備投資を推進している」と説明。しかも、台湾に期待だけの設備投資ではなく、スマホ、HBMベースのAIを含むHPC AI、自動車、IoTの顧客の複数年にわたる堅調な需要をサポートすることを目的としてグローバルでの生産能力増強を計画・実行していることを強調する。
台湾では、台南サイエンスパークのギガファブクラスターに新たに3nm専用工場を建設、2027年前半の量産開始を予定しているほか、建設を終えた米国アリゾナ州の第2工場(Fab 21 Phase 2)も3nmプロセスでの量産を2027年後半から開始する予定。2028年には日本の熊本第2工場(Fab 23 Phase2)での3nmによる量産開始も予定しているほか、さらなる生産能力増強に向けて台湾にて一部の5nm(N5)向け製造装置を3nmへ転用するといった取り組みも進めているとする。このため7nm(N7)、N5、N3間で柔軟な生産能力の調整を行っており、プロセス間の生産能力の最適化に注力しているともしている。
「TSMCはあらゆるプラットフォームですべての顧客のサポートを最大化するため、あらゆる場所で、あらゆる手段を用いて可能な限りの取り組みを行っている。生産能力は逼迫しているが、顧客を選別したり、特定の顧客を優遇したりすることはしていないことを強調したい」と、ウェイ氏はあらゆる顧客ニーズに応える努力をグローバル規模で進めているとする。
N3は、2022年第4四半期より量産を開始したプロセスであり、2027年には初期の設備投資の償却が完了する予定であるそのため、同社ではN3の粗利率は2026年後半にはTSMC内の平均粗利率の水準に到達し、それ以降は上回って推移すると見ており、製造装置の減価償却完了後は従来のプロセスと同様に、粗利率は高くなるとの見通しを示している。
加えて、2026年の設備投資額をガイダンスの520億~560億ドルの上限に修正したが、その件については「HPC、AIからの需要が非常に堅調で、可能な限り設備の導入を加速させるために全力を尽くしているが、供給が非常にひっ迫している中で需要は増加の一途をたどっている。そのため、サプライヤと協力して取り組みの加速を推進しており、そうした動きが投資額が予想の上限に向かわせている」と、需要が堅調であることを強調しつつ、「新しいファブの建設には2~3年かかり、さらに1~2年かけて立ち上げる必要がある」と量産までには複数年かかることを挙げ、建設業者や製造装置サプライヤと協力する形で、予定のスケジュールを少しでも前倒しして進めていきたいとの考えを示す。
6インチと8インチの生産は段階的に縮小
一方で成熟プロセスについては、戦略に変更はないとし、「成熟プロセスでの焦点は、単なる汎用製品ではなく、特殊技術向けの高付加価値製品を提供することである。例えば、ドイツのESMCでは自動車や産業向けアプリケーションのためのセンサ向け成熟プロセス製品の生産能力を増強することにしている。一方、6インチ(150mm)ファブであるFab 2(台湾新竹)と8インチファブであるFab 5(台湾新竹)は段階的な縮小を計画している。いずれもGaN向けの製造ラインであるが、生産の縮小によって生じるスペースを最先端アプリケーション向けに活用する。ただし、Fab 2とFab 5の縮小後も、既存顧客を完全にサポートする十分な生産能力を維持するつもりである」と説明。キャパシティミックスの最適化を継続し、より高い付加価値と戦略的なセグメントに焦点を当てつつ、顧客の成長をサポートするために必要な生産能力を確保するとした。
次世代のA14プロセスはスマホとHPC向けに2028年より量産を開始
次世代プロセスとなる1.4nmプロセス(A14)の開発状況については、「第2世代ナノシート・ゲートオールアラウンド(GAA)トランジスタ構造を特徴とするA14は、N2からさらにフルノード進化し、高性能かつ省電力なコンピューティングに対する飽くなき需要に対応するため、全面的な性能と電力効率の向上をもたらすことになる」とし、その開発は順調に進んでおり、2028年の量産開始に向けてスマホとHPCを中心に顧客からすでに生産枠の確保の要請を受けているとする。
A14は、N2比で同じ電力の場合で10~15%の速度向上、同じ速度の場合で25~30%の電力改善、そして約20%のチップ密度向上をターゲットとしており、「A14とその派生技術は、TSMCの技術リーダーシップをさらに拡大し、将来にわたって成長機会を捉えることを可能にするものとなる」(同)と、次世代のけん引役としての期待を述べる。
先端パッケージの進化も継続
このほか、プロセスの微細化に留まらず、半導体の高性能化をけん引するようになった先端パッケージの状況についても言及。「TSMCは業界最大級のレチクルサイズのパッケージングを提供しているが、協業他社も魅力的な技術を打ち出しており、我々としてもそうした動きを歓迎している。こうした動きが、顧客により多くの選択肢を持たせることになり、TSMCとしても顧客とより多くのビジネスができるようになるためである。そうした中で、どのようなビジネスも取り残さないように、顧客のすべての需要に応えるための努力を継続している。例えば、非常に大きな3Dパッケージング技術を開発中であるが、今のところ、それは順調に進んでいる」とし、パネルレベルパッケージの生産ラインの構築を進めており、数年以内に生産可能な体制が整う予定であるとする一方で、「現在の主要なアプローチ、または主要なサプライヤは依然として大きなサイズのCoWoSであり、システム・オン・ウェハ技術と組み合わせて活用している。TSMCとしては、顧客に対して最適な選択肢を提供していると考えている」と現状の先端パッケージニーズに対応する取り組みも併せて進めているという。