この半導体ニュースのまとめ
・NVIDIAの2027年会計年度第1四半期の売上高は過去最高の816億ドル
・データセンタービジネスの売上高は752億ドルで過去最高
・そのうちデータセンターコンピューティングの売上高が604億ドルを占めた
半導体大手のNVIDIAが2027年会計年度第1四半期(2026年2~4月期)の決算を発表した。それによると売上高は前四半期比20%増、前年同期比85%増の816億ドルと過去最高を更新したほか、データセンターの売上高も同92%増の752億ドルと過去最高を記録した。
GAAPベースの四半期営業利益は前年同四半期比2.5倍、純利益は3.1倍とこちらも過去最高を更新し、売上総利益率も74.9%としている。
今回の決算説明会では、Vera CPUを新たな成長の原動力として位置づけること、中国のAIチップ市場におけるHuaweiが担う役割が拡大していることを認識すること(中国向け戦略の再構築の必要性)、そしてデータセンター事業とエッジコンピューティング事業を分離する新たなプラットフォームベースのフレームワークへと収益報告を再構築することなど、広範な戦略的転換が示唆された。
同社の創業者兼CEOのジェンスン フアン氏は、決算発表に際して、「人類史上最大のインフラ拡張であるAIファクトリの構築は、驚異的なスピードで進んでいる。エージェントAIによる生産的な作業が真の価値を生み出し、企業や業界全体で急速に規模を拡大している。NVIDIAは、あらゆるクラウドで動作し、あらゆる最先端およびオープンソースモデルを支え、ハイパースケールデータセンターからエッジまで、AIが生産されるあらゆる場所で拡張可能な唯一のプラットフォームとして、この変革の中心に独自の地位を築いている」と述べている。
新たな収益報告プラットフォームへの移行を推進
NVIDIAは現在、データセンターとエッジコンピューティングという2種類の新たな収益報告プラットフォームへの移行を進めている。
データセンターには、ハイパースケールとACIEの2つのサブマーケットが含まれ、ACIEはAI Cloud、Industrial、Enterpriseを組み合わせたセクターで、さまざまな業界や国にわたる、AI専用に構築された多様なデータセンターとAIファクトリにおけるNVIDIAの成長機会に対応するものとなる。一方のハイパースケールは、パブリッククラウドとIT企業大手(ハイパースケーラー)で構成される。そしてエッジコンピューティングは、PC、ゲーム機、ワークステーション、AI-RAN基地局、ロボット、自動車など、エージェントAIとフィジカルAI向けのデータ処理デバイスに焦点を当てたものとなる。
各事業部門別の業績
データセンタービジネスの売上高は前四半期比21%増、前年同期比92%増の752億ドルで過去最高を記録。同ビジネス分野向けにはNVIDIA Vera Rubinプラットフォームが発表されており、その中には、エージェントAI向けプロセッサであるNVIDIA Vera CPUと、エージェントAIファクトリー向け高速ストレージインフラストラクチャとなるNVIDIA BlueField - 4 STXが含まれている。
また、サブマーケット別にみると、データセンターコンピューティングの売上高は前四半期比18%増、前年同期比77%増の604億ドルで過去最高となったほか、データセンターネットワーキングの売上高も前四半期比35%増、前年同期比199%増の148億ドルと過去最高となったとしている。
一方のエッジコンピューティング事業の売上高は前四半期比10%増、前年同期比29%増の64億ドルとしている。
エッジデバイス向けに、Gemma 4、Qwen、Mistral、NVIDIA Nemotronなどの主要なローカルエージェントモデルを高速化および最適化するとともに、大規模な自動運転システムを実現するオープンモデル「NVIDIA Alpamayo 1.5」と「NVIDIA Omniverse NuRec」技術を発表している。
NVIDIA DRIVE Hyperionプラットフォームを基盤とした次世代自動運転技術に関しては、現代自動車および起亜自動車とのパートナーシップの拡大とともに、NVIDIA DRIVE AVソフトウェアのフルスタックを搭載した自動運転車フリートの導入に向けてUberとのパートナーシップも拡大。また、BYD、吉利汽車、いすゞ自動車、日産自動車がNVIDIA DRIVE Hyperionプラットフォーム上でレベル4対応車両を開発していることも発表し、AI搭載車両向けの統合安全アーキテクチャとしてNVIDIA Halos OSを推進していることも明らかにしている。
大手テック企業の巨額投資が成長をけん引
同社は、同第2四半期(2026年5~7月期)の売上高ガイダンスについて、市場予測を上回る910億ドル±2%としているが、これは中国におけるデータセンター関連の売り上げを除いた額としている。フアンCEOは、米トランプ大統領の訪中に同行する形で中国での半導体ビジネスの拡大を図ることを目指していたが、中国の習近平国家主席は先端AI半導体を自国で開発する意向を持っており、中国のAI半導体ユーザーによるNVIDIAの中国市場向けAI半導体の購入を承認しなかったと伝えられている。
しかし、現在のNVIDIAの好業績を支えているのは、Google、AWS、Meta、Microsoftなどの米国テック大手による巨額投資であり、特にこの4社の2026年の設備投資額は前年比76%増の7250億ドルとされ、NVIDIAのGPUの大量購入が継続しており、AI半導体市場の需給状況はひっ迫が続いている。
こうした大手テック企業のほか、新興企業が独自AI半導体の開発・製造による自社導入ならびに外販に動いているが、NVIDIAの脅威になる規模には成長していない。市場関係者の中には、将来的に、そうした企業がNVIDIAの強力なライバルになり、AIバブルがいずれはじけるのではないかと警戒する向きもあるが、この数四半期のNVIDIAの業績は、そうした心配を払しょくするに足る進展を遂げているといえる。
なお、 NVIDIAのフアンCEOは5月23日、同社が新たな成長の原動力にしようとしているCPUの世界市場規模を2000億ドルとした自身の予測には中国も含まれていると訪問中の台湾で述べたと複数の海外メディアが伝えている。同氏は、中国市場を決してあきらめているわけではなく、長期的には巨大な需要に期待をかけているようである。
ファンCEOがCMU卒業式で「セガの入交社長がNVIDIAの危機を救った」と発言
このほか、フアンCEOは5月10日、コンピュータサイエンスやAI分野で世界トップレベルにランクされているカーネギメロン大学(CMU)の卒業式でキーノート講演を行い、そのビデオが大学から公開された。
2026 CMU Commencement Keynote Speaker: Jensen Huang
その中で、壊滅的な失敗から立ち直ったNVIDIAの歴史に触れて、セガの入交社長(当時)がNVIDIAの危機を救ってくれたエピソードを以下のように紹介した。
「NVIDIAが最初に開発した技術は、機能しませんでした。資金も底をつきかけました。ある時、私は日本へ飛び、セガのCEOに、開発を依頼された技術が機能しないことを説明しなければなりませんでした。そして契約の解約を求めつつも、報酬を支払ってほしいと頼みました。資金がなければ、NVIDIAは消滅してしまうからです。それは恥ずかしく、屈辱的で、私がこれまで経験した中で最も辛いことの1つでした。しかし、セガのCEOである入交さんはその申し出を承諾してくれました。私は早い段階で、CEOとは権力ではなく、会社を存続させる責任を伴うものだと学びました。そして、ビジネスの世界においても、誠実さと謙虚さは寛大さと優しさで応えられるのだということを知りました。私たちはその資金を使って会社を立て直し、絶望的な状況の中で現在でも使われているチップやコンピューターの新しい設計方法を発明しました」
歴史を振り返ると、1994年に発売されたソニーのプレイステーションが人気を集める中、セガはセガサターンに次ぐ次世代ゲーム機として「ドリームキャスト」の開発を進めており、創業間もないNVIDIAに画像処理プロセッサ(GPU)の開発を委託した。NVIDIAは、独自の手法で開発を試みたが、技術的に行き詰まり開発は失敗。そうした中でフアンCEOはセガに資金援助の申し出を行ったという。これに対してホンダ出身の入交昭一郎社長(当時)は、自分の過去のエンジニアとしての経験から技術開発における失敗のリスクに理解を示し、500万ドルの資金提供を行ってくれたことを契機に、その後のPC向けGPUでのヒットが生まれ、NVIDIAは倒産を免れ、現在の成長につながったという。
フアン氏は卒業式のスピーチの最後に、「AIが人間の仕事を奪うのではなく、新たな産業や職業を生み出し、人間の能力を拡張するツールになる」として、AIという新しいテクノロジーの波にのって、自らの手で未来を切り開くように卒業生たちを激励した。
