Intel(インテル)、AMD、NVIDIAの3社が2026年4月から5月にかけて相次いで発表した最新の第1四半期決算は、AI市場の拡大が依然として続いていることを改めて示した。一方で、各社の成長ドライバや戦略の違いが鮮明になっている。
GPUを中心に市場を席巻するNVIDIA、CPUとGPUの両輪でデータセンター市場に攻勢をかけるAMD、そしてCPUと製造の再構築を進めるインテルと、AIを巡る競争は単なる性能競争から、インフラ全体を巡る競争へと移行しつつある。
前提として押さえるべきは、AIワークロードの変化だ。従来の学習中心から推論へ、さらにエージェントAIへとシフトする中で、GPU単体ではなくCPUやネットワーク、ストレージまで含めたシステム設計が重要になっている。この構造変化が、今回の3社の決算にそのまま反映されている。
インテルは136億ドルに回復も赤字継続 - CPUの再評価が追い風
インテルの2026年第1四半期は、売上高が前年同期比7%増の136億ドルと増収を確保した。Non-GAAPベースのEPS(1株当たりの利益)は0.29ドルまで回復したが、GAAPベースでは37億ドルの純損失を計上しており、抜本的な収益改善には至っていない。
内訳を見ると、クライアントPC向けのCCGは前年同期比1%増の77億ドルにとどまる一方、Data Center and AI(DCAI)は同22%増の51億ドル、Intel Foundryは同16%増の54億ドルと、データセンターと製造が成長をけん引した。
重要なのはCPUの再評価だ。推論やエージェントAIでは、GPUを束ねる制御領域の比重が増し、CPUの需要が再び高まっている。同社はこの潮流を追い風と捉え、Xeonの拡販やクラウド事業者との連携強化を進めている。
実際、AIインフラにおいてCPUは単なる補助ではなく、ワークロード管理やデータ処理の中核を担う存在に戻りつつある。ただし課題は残る。PC市場依存の構造はなお重く、低価格帯の需要減少の影響を受けやすい。
また、成長の柱と位置付けるファウンドリ事業も、外部顧客の本格拡大はこれからだ。今回の決算は「底打ち」を示したものの、企業ITインフラの主導権を握り直せるかは今後の実行力にかかっている。
AMD、売り上げ102億ドルのうちデータセンターが58億ドル - 収益構造が変質
AMDの2026年第1四半期は、売上高が前年同期比38%増の102億5300万ドル、純利益が同95%増の13億8300万ドルと、高成長と増益を同時に達成した。Non-GAAPベースでも営業利益が25億ドル、粗利率55%と収益性が改善している。
成長の中核はデータセンターで、売上高は前年同期比57%増の58億ドルに拡大し、全社の半分以上を占めるまでに至った。EPYCサーバCPUとInstinct GPUの両輪が寄与している。他方、Client and Gamingも同23%増の36億ドル、Embeddedも同6%増の8億7300万ドルと堅調となり、特定市場への依存が低い点も特徴だ。
AMDの強みは選択肢の提供にある。AIインフラがNVIDIA中心で構築されがちな中で、CPUとGPUの両方を提供できるAMDは、ハイパースケーラーにとって代替基盤としての価値を持つ。
Meta向け大規模GPU導入や主要クラウドでの採用拡大は、同社が単なる部品供給からインフラの構成要素に進化したことを示している。
重要なことは、これがそのまま利益率改善につながっている点だ。高付加価値のデータセンター製品の比率上昇により、AMDは売上規模だけでなく収益構造そのものを転換しつつある。AI投資が続く限り、このモデルは持続性を持つと見られる。
NVIDIAは売上816億ドル、データセンターが752億ドル - インフラ支配が進む
NVIDIAはさらに異次元の成長を続ける。2027会計年度第1四半期(2月~4月)の売上高は前年同期比85%増の816億ドル、データセンターは同92%増の752億ドル、ほぼ全体を占める構造となった。GAAPベースの純利益は583億ドルと、規模・収益性ともに他社を圧倒している。
特徴的なのは、同社がGPUから「AIインフラ企業」へ完全にシフトしている点だ。データセンターコンピューティングの売上高は前年同期比77%増の604億ドル、データセンターネットワーキングの売上高も同199%増の148億ドルと、いずれも過去最高となった。GPUに加えて通信・ソフトウェアまで統合したプラットフォームを構築している。
NVIDIAは事実上の「デファクト」を握りつつあり、多くのAIモデルや開発環境が同社基盤に最適化されている。システム全体がエコシステム依存型になっており、これはクラウドやERP(Enterprise Resource Planning)に近い構造で、一度導入すると他社へ切り替えにくいのも事実だ。
さらに、同社は「NVIDIA AI Factory」を掲げ、データセンターそのものをAI生産基盤として再定義。Vera CPUへの展開も含め、インフラ全体を垂直統合する戦略が鮮明だ。地政学リスクはあるものの、現時点では大手クラウドベンダーの投資が需要を支え、成長の勢いは維持されている。
AI競争は「組み合わせと運用」のフェーズへ
3社の決算が示すのは、AI市場の競争軸がすでに変わったという事実だ。GPU単体の性能競争から、CPU・GPU・ネットワークを含めたインフラ全体の最適化へと重心が移っている。 NVIDIAはその中心で支配力を強め、AMDは代替基盤として存在感を拡大し、インテルはCPUと製造で再浮上を狙う。「どのベンダーが速いか」という性能ではなく「どの構成が持続的に運用できるか」に軸足が移りつつある。
コストや可用性、ベンダーロックイン、供給安定性といった要素が今後の意思決定により大きく影響するだろう。
AI導入がPoC(概念実証)から本格運用フェーズに移る中で、今回の決算はその前提となるインフラ競争の現在地を明確に示した。AI半導体競争は、いままさに“構築フェーズ"に入ったといっても過言ではない。


