技術研究組合 最先端半導体技術センター(LSTC)は4月17日、4月13日付で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(委託)」に採択された「光電融合を加速する半導体パッケージング技術開発と先端後工程拠点形成」に関する説明会を開催し、プロジェクトの体制やプロジェクトのロードマップについての説明を行った。
LSTCは、もともと先端半導体の開発を目指す研究開発組織として設立された経緯があるが、理事長の東哲郎氏は、現在の役割は大きく3つあるとする。「研究開発」「人財育成」「国際連携・産学官連携」の3つを持続的に取り組むことで、日本の先端半導体の復興を目指していることを強調する。
半導体プロセスの微細化が進み、オングストローム時代に突入しようという現在、先端半導体の実現に向けた研究開発はもはや民間企業1社だけでは実現できる領域ではなく、さまざまな企業や研究機関が連携して開発を進めていく必要がある。LSTCでも、そうした大学、企業、国内研究機関、海外の研究機関や企業をつないで先進的な技術開発につなげていくことを目指しているとする。 また、東氏は「日本は製造技術において優れていると言われてきたが、もはや必ずしもそうではない。確かに製造技術において、素晴らしいところもあるが、産業を推進していくだけの技術になっているかを考えると、抜けている部分がかなりある。とりわけ先端アプリケーションを新しく生み出していく、それに即した半導体の設計に落としていく部分は、かなり空白になっているというのが今の実情であり、そうした部分の強化が必要となる。人財育成においても、基盤的な部分、製造プロセスを担う部分と2nm以降の設計、そしてアプリを理解して必要な性能、機能を半導体に落としていく設計力を持つ人材を育成していかないといけない」と、全般的に日本の半導体人材が不足していると指摘。「我々の試算では、日本だけの半導体関連産業で10万人ほど不足すると見られており、早急な育成が必要」であり、LSTCでもそうした人材を人財にするべく教育の推進を大学と連携する形で取り組んでいくとする。
そして東氏がもっとも強く語ったのが国際連携である。「日本が先端産業で衰退していった背景には、国際的なレベルが、中でも先端のレベルがどうなっているのかを国内だけで実感できることが少なくなってきたことが挙げられる。国際連携や産学官の連携を通じて、世界を知り、空白の30年を取り戻したいという思いがあり、そうした世界を知るための役割がLSTCの国際連携だと思っている」とする。
将来の半導体の高性能化の鍵を握る光電融合
そうしたLSTCが今回、NEDOプロジェクトとして採択されたのが光電融合を活用した先端パッケージ技術の開発となる。
光電融合は、電気信号を扱う回路と光信号を扱う回路を1つの基板やパッケージ上で処理することで、通信の大容量化を図りつつ、消費電力量や配線から発する熱を抑制することを可能とする技術。金属配線の量を減らし、替わりに光配線の量を高めようというもので、今回の取り組みではチップレット間の信号伝送を光で行うことを目指した研究開発が進められることとなる。
研究開発統括副責任者でLSTCの3Dパッケージ技術開発部門長を務める東北大学の福島誉史 教授(研究開発統括責任者はLSTC理事長の東氏)は、「xPUとHBMがつながるチップレットサブシステムが、性能向上のために複数つながるようになると、電気配線でつないだ場合、大量に接続された際には遅延や高速化、消費電力などで問題が生じることになる。そこでチップレットサブシステム同士の接続を光配線に置き換えようというのがプロジェクトの内容」とし、そのために世界初の300mm角ウェハを活用する形での「光電融合オープンイノベーションR&D拠点」の整備を進めるとする。
300mm角ウェハはいわゆるパネル・レベル・パッケージ(PLP)に該当するが、このサイズとしたことについて福島氏は、「既存のインターポーザは300mmウェハを活用しており、300mm角ウェハのサイズはそれに近いが取れ数は増える一方、使用する装置は300mmウェハで用いていたものの資産を使いやすいという判断から採用した」としており、PLPとしてパネル特有の課題も顕在化できるメリットのほか、コストや安全性、パネルの運用方法の確立など研究開発として現実的である点も採用を後押しした理由だとする。
3つの取り組みで要素技術を開発
プロジェクトの目標は「光RDL(Redistribution Layer)インターポーザ」上に搭載されたチップレット群同士の、超低消費電力かつ超高密度での光データ伝送を実現するための要素技術開発であり、そのために「ハイブリッド接合技術開発」ならびに「光RDLインターポーザ技術開発」の2つの技術開発と、その技術開発を推進するための「先端後工程拠点形成」の3つに取り組むとする。
1つ目のハイブリッド接合技術の開発は、電子回路(EIC)と光集積回路(PIC)を組み合わせた「光エンジン」と、光RDLインターポーザ上に6μm以下の狭ピッチでハイブリッド接合する技術を開発するというもの。2つ目は、光RDLインターポーザそのものの開発で、次世代UCIe規格に対応した10Tbps/mm級の高密度光配線技術を開発することで、現行技術比で伝送量あたり40%以上の低消費電力化の実現を目指すとする。
そして3つ目がこれらの技術開発を推進する拠点の整備で、千歳科学技術大学のキャンパス内に整備を進める。「国内の優れた材料や装置をスクリーニングし、オープンイノベーションとして利用できることを目指す」(同)とする。プロジェクトの期間は2026年度から2030年度までの5年間で、この拠点は2028年度に完成予定。900m2規模のクリーンルームを完備するとしているが、完成までは、プロジェクト参加各大学・研究機関、企業がそれぞれの拠点を活用する形で、割り当てられた研究開発を推進していくことが予定されている。
参加大学・研究機関・企業それぞれの役割
主な役割としては、東北大学がインターポーザやハイブリッド接合技術、産業技術総合研究所(産総研)が光導波路関連および光RDLインターポーザ技術、北海道大学が拠点立ち上げ地である北海道の中核大学としての拠点構築や分析、ならびにimecとの連携協定をもとにしたimecとの連携役、千歳科学技術大学が拠点整備のほか、インターポーザの設計、横浜国立大学がプロセス開発、Rapidus(ラピダス)が技術ならびに実用化に関するアドバイス、imecが光エンジン開発としており、このほかNTTが光デバイスを手掛ける立場からパッケージング開発に対する助言を行うアドバイザーの立場で参画するという。
この中でラピダスは、自社の先端後工程研究開発拠点「RCS(Rapidus Chiplet Solutions)」を立ち上げたばかりだが、このRCSと千歳科学技術大学の拠点(どちらも同じ千歳市に設置)の間ではインターポーザなどをFOUPを活用して持ち込んで、RCSにしかない設備などを活用した研究を行うなど、密接な関係を構築するとしている。この関係性について東氏は「ラピダス側としても、近くにあることが重要で、IIM(ラピダスの半導体工場の名称)を中心に研究機関や装置・材料メーカーが集まり、半導体技術や応用技術まで研究できるようにしようというラピダスパーク構想があるところの近くにあることで、緊密な関係性が構築できるなど重要な意味を持っているほか、ラピダスを通じて研究成果が実用化に結び付くことも考えると、非常に重要なものになる」と説明する。
なお、研究プロジェクトの期間は5年で終了する予定だが、その後も数年ほどで商用化が可能になることを目指した取り組みを続けていくとしている。









