大阪大学(阪大)は4月7日、光エネルギー変換材料などへの応用が期待される「局在表面プラズモン共鳴」を示す新しい半導体材料として、「硫化銅ガリウム」ナノ粒子を見出し、同粒子の結晶構造の違いによって局在表面プラズモン共鳴特性に大きく影響することを明らかにしたと発表した。
同成果は、阪大 産業科学研究所の佐野奎斗助教、同・坂本雅典教授、京都大学 アイセムスのDaniel Packwood准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、欧州15か国の化学会連合が刊行する学術誌「Chemistry-A European Journal」に掲載された。
光エネルギー変換材料への応用にも期待
局在表面プラズモン共鳴とは、ナノ粒子中の自由キャリア(電子や正孔)が外部電場に応答して集団振動する現象を指す。これまで、金や銀などの金属ナノ粒子が主な研究対象だったが、近年は材料探索の範囲が多様な半導体ナノ粒子へと拡大している。特に、赤外光領域でこの現象を示す材料は、熱線遮蔽材料や太陽電池といった光エネルギー変換デバイスへの応用が期待される。
半導体ナノ粒子は、金属に比べて組成や結晶構造の自由度が高く、材料選択の幅が広いという利点を持つ。しかし、目的の組成や結晶構造、粒子径、粒子形状を精密に制御して合成することは容易ではない。そのため、構造の微細な差異が局在表面プラズモン共鳴特性にどのような影響を及ぼすのかについては、これまで十分に理解されていなかったとする。
そうした中で研究チームは、物質の構造と局在表面プラズモン共鳴特性の相関を理解すべく、組成と結晶構造の柔軟性に優れた「I-III-VI族半導体」に着目。これは、主に第11、13、16族の元素で構成される半導体で、代表例に銅(Cu)・インジウム(In)・セレン(Se)からなる「CuInSe2」や、銀(Ag)・アルミニウム(Al)の酸化物「AgAlO2」などがある。今回の研究では、その中でもあえて局在表面プラズモン共鳴の発現自体が未知であった銅(Cu)・ガリウム(Ga)・硫黄(S)からなる「硫化銅ガリウム(CuGaS2)」を対称とした調査を実施したという。
硫化銅ガリウムナノ粒子の合成には、高温の溶媒中に前駆体試薬を添加する「ホットインジェクション法」が採用された。具体的には、190~250℃に加熱した不飽和炭化水素「オクタデセン」、塩化銅、金属錯体「ガリウムアセチルアセトナート」の混合溶液に対し、反応剤「オレイルアミン」に硫黄を溶解させた溶液を添加。これにより、硫化銅ガリウムナノ粒子が合成された。
得られたナノ粒子を電子顕微鏡で観察したところ、反応温度の上昇に伴って粒径が増大しており、粒子径の制御が可能であることが示された。また、吸収スペクトルの測定では、近赤外光領域において局在表面プラズモン共鳴に由来するピークが観測された。これにより、硫化銅ガリウムがこれまで知られていなかった局在表面プラズモン共鳴特性を示すことが実証された。
さらに、硫化銅ガリウムが取り得る「カルコパイライト」と「ウルツ鉱」という2種類の結晶構造に注目し、これらを作り分けるための合成条件が探索された。カルコパイライト構造は、ダイヤモンド構造を基盤として2種類の金属が規則的に配列した四面体ネットワークである。一方のウルツ鉱構造は、六角形のハニカム構造が積層した四面体ネットワークだ。実験の結果、ナノ粒子の配位子かつ硫黄源となる「1-ドデカンチオール」の有無により、これら2つの結晶構造を自在に制御できることが判明した。
それぞれのナノ粒子の吸収スペクトルを比較したところ、カルコパイライトはウルツ鉱よりも約3倍の強さの局在表面プラズモン共鳴ピーク強度を示すことが確認された。この結果は、ナノ粒子の結晶構造の違いが、光学特性である局在表面プラズモン共鳴の強度を大きく左右する決定的な要因であることを示唆するものとした。
今回の成果は、硫化銅ガリウムナノ粒子という新たな局在表面プラズモン共鳴材料の可能性を提示しただけでなく、赤外光に応答する次世代の太陽光エネルギー変換材料の開発や熱線遮蔽材料への応用につながることが期待されるとした。また、今回得られた結晶構造と光学機能の相関に関する知見は、より高性能な局在表面プラズモン共鳴材料を設計するための新しい指針を与えるものとしている。

