このものづくりニュースのまとめ

  • ヒューマノイドロボットの実機を利用して、社会実装を支援する開発拠点「HACARUS Humanoid Lab」が開設
  • フィジカルAIをフル活用し、顧客ニーズにあわせたメニューを有料で提供
  • 現場を支えるAI開発実績を活用、3つの実機デモも披露

ヒューマノイドロボットの社会実装を見据えた開発競争が世界で進むなか、二足歩行ロボットの開発で先行していたはずの日本は遅れをとっている状況にある。企業が開発に二の足を踏む状況を変えようと、京都のAI開発スタートアップ・ハカルスは、実機を利用してヒューマノイドロボットの社会実装を支援する開発拠点「HACARUS Humanoid Lab」(以下、ラボ)を開設し、メディアに公開した。

  • ラボは本社の一角を利用して開発スペースを用意している

    ラボは本社の一角を利用して開発スペースを用意している

このラボは本社の一角に設けられ、中国製のヒューマノイドロボット「Unitree G1」(以下、G1)を使用した開発・検証環境を提供している。動作などをシミュレーションするNVIDIA Issac Simなどの開発ツールがすぐに使えるよう用意されており、同社のロボットエンジニアが伴走する形でサポートする。

ヒューマノイドの現場実装を支援。想定ターゲットは製造業・インフラ業界

利用方法については、基本操作とシミュレーション環境を習得する基礎とは別に、目的にあわせた4つのコースを想定している。

内容は、公開済みモデルの活用、強化学習による歩行動作の実現、模倣学習による動作の自律化、UnifoLM-VLA-Base などの公開VLAを使用した検証などがある。いわゆるフィジカルAIをフルに活用するかたちだが、決まったメニューをこなすというよりは、必要に応じたメニューを個別に提供する。

開発には基本操作を憶えるだけでも最低1週間かかり、目的や操作の複雑度に応じて、数週間から半年を要する。同社では、実際に企業が導入するには3つのステップが必要と考えている。最初のステップはラボ内で操作や開発を行い、次のステップではデジタルツインの活用や実際の導入に近い環境でのテスト、そして最終ステップとして実際に現場へ実装することを想定している。できるだけスピーディーに開発を進めるためエンジニアが伴走し、実装まで行う場合、案件ごとの開発期間は3年程度を想定している。

  • HACARUS Humanoid Labに用意されたUnitree G1。このロボットは、日本市場向けに開発や検証をするにあたり「現時点でマストな選択」だという

    HACARUS Humanoid Labに用意されたUnitree G1。このロボットは、日本市場向けに開発や検証をするにあたり「現時点でマストな選択」だという

ターゲットは、これまでハカルスが外観検査AIや労災防止AIなどで支援してきた製造業やインフラ業を想定している。独自のデータサイエンスノウハウによるデータ収集やアノテーションにかかる工数を削減し、クラウドを前提としないエッジAIを活用することで、効率良く開発を行ってきた実績をロボット開発でも活かす。これまで国内外で700件を超えるプロジェクトによって、現場のニーズを蓄積してきたことも強みとする。

利用料金はロボットのレンタル料とサポート費用がそれぞれ10万円/日(税別)の計20万円で、最低5日間から利用できる。基本的にはラボで作業を行うが、社外で作業を行う場合の費用やオプションについては別途相談となる。

Unitreeを使用する理由は、コストバランスが良い中国製ヒューマノイドロボットの中で、2次開発がしやすく日本の技適を取っていることなどを挙げる。生産量も今後増加することが見込まれ、いざ実装する場合に購入もしやすいことが考えられる。ただし、ハカルスとしてはUnitreeにこだわりはなく、今後のロボット産業情勢を見ながら、場合によっては他の機種でも対応するとしている。

実際にどんな開発ができる? 3つのデモを見た

ラボを開設した背景としては、ヒューマノイドロボットを開発しようとしても経験がなければ難しく、時間を要するという課題がある。たとえば、レンタルは他でもあるが、マニュアルなどはないため開発環境の構築だけでも手間がかかり、検証に入る前段階でのハードルが高い。その点、このラボでは開発環境がそろっており、ハードウェア資産化のリスクも抑えられる。経験のあるエンジニアがアドバイスすることで、現場が必要とするニーズが見えてくる可能性もある。

ハカルス代表取締役の染田貴志氏は「ヒューマノイドロボットの開発は一気にやろうとすると、やはりすごく大変。やりたいことに応じて必要な要素も変わる。まずは弊社のラボで、必要なものを選んで使いながら検討してほしい」と話す。

公開日にはラボでどのような開発ができるのかという例を、3つのデモで紹介した。

1つ目は、XRヘッドセットを使用してユーザーの手の動きを認識し、そのままロボットに反映させるというもの。模倣学習によるコントロールでは、手作業による工程をG1で再現させるといったことができる。

  • ユーザーの手の動きをリアルタイムでG1に反映できていた

    ユーザーの手の動きをリアルタイムでG1に反映できていた

2つ目は二足歩行を行う状態で、コントローラーを使ってG1の向きや移動方向を指示するというもの。高度な自律歩行ができ、本体を軽く押したり、ぶつかったりしても倒れずバランスが取れる。

  • 自律歩行する様子。見た目にはややたどたどしいが、バランスは取れていた

    自律歩行する様子。見た目にはややたどたどしいが、バランスは取れていた

3つ目はあらかじめプログラミングした動作をするもので、開発としては最も難易度が高い。今回は基本セットではなく、ハカルスのエンジニアが独自開発した、ヒトが出した手を認識して握手をするという一連の動作を行ってみせた。

  • 相手にあわせて用意された動きを行うデモが披露された。写真左はハカルス代表取締役の染田貴志氏

    相手にあわせて用意された動きを行うデモが披露された。写真左はハカルス代表取締役の染田貴志氏

調査によると、今後ヒューマノイドロボットの市場は2030年には約153億ドルに成長し、2035年には約380億ドル規模に到達すると見込まれている。具体的な導入も始まっており、たとえば韓国のヒュンダイは2026年には米Boston Dynamicsが開発するヒューマノイドロボット「Atlas」(アトラス)を、自社運営の自動車工場に導入すると発表。2028年に本格実装することをめざしている。

国内でもヒューマノイドロボットへの関心は高まっている。このラボは4月に開設されたばかりだが、すでにいくつも問い合わせが入っており、施設や人材に関しては今後の状況に応じて調整、拡大していくとしている。

なお、ヒューマノイドロボット以外にもFANUC(ファナック)の「CRX5iA」を使ったロボットアームの開発・検証もできる体制になっており、日本のロボティクス市場をどれだけ後押しできるかが期待される。

  • 染田貴志氏(左)と並ぶUnitree G1(右)

    染田貴志氏(左)と並ぶUnitree G1(右)