SiCパワー半導体をめぐる世界的な競争は激化しており、コスト削減にはウェハの大口径化が不可欠と見られている。先行企業たちは、日本勢を含め150~200mmのSiCウェハに注力しているが、SiCに注力する中国企業たちが300mm SiCウェハの開発を急速に進めている模様である。
Semicon Chinaで300mm SiCウェハを展示したSICC
中国最大のSiCウェハサプライヤであるSICC(山東天岳先進材料)は、高純度半絶縁性、P型、N型基板を網羅する300mm SiCウェハを2025年3月に上海で開催されたSEMICON China 2025の自社Webサイトにて展示して話題となった。商業的生産や販売までにはもう少し時間を要するという。
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Semicon China 2025で披露されたSICCの300mm SiCウェハ (出所:出所:SICC)
N型はMOSFETやショットキーダイオードなどのパワーデバイスで活用され、P型はダイオード、IGBT、RFチップで活用されている。これら両方を300mmウェハで提供することで、中国は設計の柔軟性を高め、高電圧およびRFアプリケーションにおける地位を強化しようとしている。
同社は最近、東芝子会社の東芝デバイス&ストレージと技術提携し、東芝への高品質SiCウェハの安定供給を行うことを決めたが、SICCは基板からデバイスまで一貫生産を行っており、東芝のライバルになりかねない。
SICC以外の中国勢も300mm化を推進
浙江晶盛機電(Jingsheng)の子会社である晶瑞電子(Jingrui SuperSiC)は、2024年末に300mm導電性SiC結晶の開発に成功したと発表したほか、2025年9月末には、初の300mm SiCウェハパイロットラインの立ち上げを発表。これにより、結晶成長からウェハ処理、検査まで、自社設備によるエンドツーエンドの生産が可能となった。
同社の300mm導電性SiC基板は、特に自動車グレードのMOSFETやIGBTの代替として、高電圧デバイスや電気自動車に使用されることが期待されるという。
SICCとSuperSiCに加え、新たなプレーヤーが300mm SiC分野に次々と参入していると台湾Digitimesが伝えている。
Jingfei Semiconductor(JFSemi:北京晶飛半导体科技)が、中国科学院からの技術移転を受け、300mmウェハの剥離・切断が可能なレーザーリフトオフ(LLO)装置を開発したほか、Harbin KY Semiconductor(哈尔滨科友半导体)は、自社の結晶成長炉と熱電併給技術を進歩させ、他社と異なる設備とプロセスで300mm SiCインゴットの生産を可能にしたとするなど、多くの中国勢が競って300mm SiCウェハの開発を進めている。しかし、その多くが商用生産までには時間がかかると見られている。
日本では三菱電機が200mm対応のSiCパワー半導体工場を竣工
一方、日本では、パワー半導体大手の三菱電機が、熊本県菊池市のSiCパワー半導体の新製造棟(延べ床面積は約4万2000m2、投資額は約1000億円)が9月に完成し、10月1日に竣工式を行った。計画当初は2026年4月の稼働開始を予定していたが、前倒しして2025年11月より数量を絞った形で生産を始め、市場環境を考慮しながら2027年ごろには本格量産に移行したいという。同社は200mm化でコストメリットを追求するというが、先行する欧米勢や急成長を続ける中国勢との競争は今後、さらに激しくなっていくものと思われる。