この半導体ニュースのまとめ

・JEITA半導体部会が「国際競争力強化を実現するための半導体戦略 2026年版」を策定し、経産省・文科省へ提出
・先端ロジック偏重を避け、メモリ・センサ・パワー・マイコンなど広範分野の長期支援継続を要請
・チップレット/インターポーザ/3D実装など中工程や先端パッケージングといった後工程への支援強化も盛り込む

電子情報技術産業協会(JEITA)の半導体部会は5月22日、「国際競争力強化を実現するための半導体戦略 2026年版」と題する提言書を取りまとめ、経済産業省(経産省) 商務情報政策局 情報産業課および文部科学省(文科省) 研究開発局 環境エネルギー課に提出したと発表した。半導体をDX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)を支える基盤となるテクノロジー、かつ経済安全保障上の戦略物資と位置付けた上で、官民連携と国際協調の下で取り組むべき政策の方向性を示している。

AIや量子を含む需要の増加と地政学リスクの常態化が前提に

同提言は、生成AIや量子技術の進展、データセンター需要の急拡大を背景に世界半導体市場が1兆ドル規模に迫る一方、米国の対中半導体規制といった米中対立や中東情勢など地政学リスクの常態化、サプライチェーン分断、重要鉱物の供給制約といった不確実性が増大している点を問題意識として掲げる。こうした環境下で日本の半導体産業の国際競争力を高め、持続的発展につなげるための政策提言として整理したものとなる。

  • 「国際競争力強化を実現するための半導体戦略 2026年版」の主な提言内容

    「国際競争力強化を実現するための半導体戦略 2026年版」の主な提言内容 (出所:JEITA)

国内需要喚起と供給網強靭化、OT投資支援も

提言の第1の柱は、新時代のサプライチェーン構築と国内デジタル需要の喚起に向けた支援とする。フィジカルAIやバーティカルAIの進展により、エッジ側で動作するメモリ、センサ、マイコン、アナログ、ロジックなどの設計・開発需要が増大すると指摘し、産業・公共分野のDXやAI・デジタルサービスの創出に向けた「新型半導体」の開発・製品化と国内デジタル基盤での積極採用(地産地消)を促す政策を求めている。

また、重要鉱物の供給源の多角化と安定調達、同盟・同志国との国際供給網強化に加え、サプライチェーンのサイバーセキュリティ強靭化に向けたガイドライン策定と、大規模IT投資および半導体工場のOT(Operational Technology)投資への政府支援も要請した。

先端ロジック偏重から、レガシーや後工程への支援拡充を要請

国際的な半導体支援策の潮流への対応としては、「AI・半導体産業基盤強化フレーム」の推進と、10年以上を見据えた長期・大規模な製造能力増強支援を求めている。加えて、先端ロジックに偏ることなく、メモリ、センサ、パワー半導体、マイコン、アナログなど幅広い半導体分野への継続的支援を求めている。

注目されるのが、先端半導体製造プロセスにおける「中工程」および「後工程」を明確に支援対象として挙げている点だ。基本的には後工程に含まれることになるチップレット、インターポーザ、3D実装といったいわゆる中工程や次世代SiPや先端パッケージングといった次世代の後工程技術の開発支援を掲げ、日本の競争力強化の論点を前工程(微細化)だけに限定しない構成としている。

さらに、レガシー半導体分野における小・中口径ウェハラインの維持や部材・設備確保を含む供給確保策も盛り込み、AI需要が伸びる局面でも産業基盤としての裾野を維持する必要性を強調した。

研究開発・人材・税制・電力コストまで含むイコールフッティングを要求

また同提言は研究開発支援として、日本が競争力を持つ次世代半導体メモリ、センサ、パワー半導体、マイコン、アナログなどの「スペシャリティ技術」の設計・開発支援強化と、「次世代エッジAI半導体研究開発事業」の推進、産学連携による社会実装加速も挙げている。

加えて、国際競争条件(イコールフッティング)の観点から、電力コストの低減と再生可能エネルギーへのアクセス拡大、工業用水道の強靭化と安定供給、税制支援の強化(戦略分野国内生産促進税制の対象拡充や還付可能税額控除の検討)を求めている。

人材面では、地方自治体や教育委員会との連携によるSTEM教育枠組みの構築、日本が強みを持つ製品分野での半導体設計人材育成、半導体人材育成拠点形成事業の継続・増強などを挙げた。

さらに、各省庁をまたぐ政府全体の会議体(諮問委員会)の設置検討や、日本版半導体支援法の着実運用によるパッケージ支援の実現も盛り込み、制度面の整備まで含めた包括提言としている。

2040年の「国内売上40兆円」の実現を目指す

提言書提出の背景として、半導体部会長の小山一弘氏(ヌヴォトン テクノロジージャパン代表取締役会長)は「半導体はAI時代の国家競争力そのもの」との認識を示し、企業の自助努力を前提としつつも、政府による継続的かつ強力な支援が不可欠だと述べている。日本政府も2040年の国内半導体売上高40兆円という目標を掲げており、JEITA半導体部会としても、その実現に向けてAIやデジタル社会の発展と経済安全保障の基盤を支えることを目指した取り組みを進めていくとしている。