アルマ望遠鏡は5月22日、大質量星の星団の種を形作る主な力は、従来の定説だった整列した磁場ではなく、乱雑な乱流運動であることを明らかにしたと発表した。

  • アルマ望遠鏡によるサーベイ観測で撮影された大質量星形成領域の画像の一例

    アルマ望遠鏡によるサーベイ観測で撮影された大質量星形成領域の画像の一例。波長1.3mmで観測されたダストの放射強度がカラーで、流線畳み込み法により可視化された磁場の方向が線でそれぞれ表されている。左下の白い楕円は、アルマ望遠鏡の合成ビームサイズ。右下は0.05パーセク(約0.163光年)のスケールバー。(c)Liu et al. (2026)(出所:アルマ望遠鏡日本語Webサイト)

同成果は、南京大学のJunhao Liu助教(元・国立天文台研究員)、東京大学のPatricio Sanhueza准教授らを中心とした国内外29の研究機関の35名の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。日本からは国立天文台、名古屋大学、京都大学、九州大学の研究者も参加している。詳細は、英科学誌「Nature」系の天文学を扱う学術誌「Nature Astronomy」に掲載された。

太陽の約8倍以上の質量を持つ大質量星は、生涯の最期に超新星爆発を起こす(すべての大質量星が超新星爆発を起こすわけではなく、中心に形成されたブラックホールにそのまま吸い込まれる「不発」のケースもある)。これにより、自身が核融合で合成した炭素から鉄までの元素を宇宙に散布し、同時に超新星爆発そのものでも、コバルト以降の核融合では合成されない重元素を生み出すと考えられている。

宇宙には当初、ビッグバン原子核合成で誕生した水素とヘリウム、そして極めてわずかなリチウムしか存在しなかったが、こうして星の世代交代を経て宇宙には元素が増えていき、現在では約90種類が天然に存在するようになった。その結果、地球のような岩石惑星や、人類などの生命も存在できるようになったのである。

また大質量星は、主系列星時代に強い紫外線を放射することで、銀河の環境に多大な影響を及ぼす。周囲の水素を加熱・再電離することで誕生する「HII(エイチツー)領域」と呼ばれる電離ガス雲は、周囲の星間ガスや星間塵を激しく押し出すため、新たな星形成のトリガーとなる場合もある。そのため、大質量星は銀河の構造と進化を左右する重要な役割を担っているといえる。

大質量星は、「大質量星形成領域」で形成される。星は多くの場合、同じようなタイミングで多数の星と共に生まれるが、大質量星もその例に漏れず、数多くの星と共に誕生して「原始星団」が形成される。これらは、将来的には散開星団や球状星団に進化すると考えられている。

しかし、この原始星団内において、大質量星を生み出しているメカニズムには未解明の部分も多い。従来の理論では、強い磁場に沿ってガスが流れ、星形成領域中に磁場に垂直な方向に連なる密度構造ができると示唆されていた。実際、大きなスケールで重力収縮している分子ガス雲やガス塊(クランプ)に対する初期の観測では、こうした磁場優位の描像が支持されている。

  • 分子ガス塊(クランプ)の全体および内部の磁場分布の想像図

    分子ガス塊(クランプ)の全体および内部の磁場分布の想像図。(左)1パーセク(約3.26光年)スケールでは、整列した磁場がガス塊を長軸に垂直な方向に貫いている。(右)一方、ガス塊に埋もれて高密度ガスが凝集している0.01パーセク(約2060天文単位)スケールで見ると、磁場は極めて乱雑で、個々の凝集の長軸におよそ平行に走っている。(c)NAOJ(出所:アルマ望遠鏡日本語Webサイト)

だが、実際に個々の星や星団が形成されるような小さな空間スケールにまで、この「磁場制御」が及んでいるのかはわかっていなかった。そこで研究チームは今回、アルマ望遠鏡を用いて大質量形成領域の磁場の大規模サーベイ観測を実施したという。

天の川銀河内に存在する30か所の大質量星形成領域を観測した結果、個別の星が生まれようとしている小さなスケールでは、大質量星の“種”となる高密度ガスの凝集が、局所的な磁場に平行に伸びていることが、統計的な証拠として初めて明らかにされた。これは、大局的なスケールとはまったく逆の傾向である。

続いて行われた数値シミュレーションにより、こうした磁力線に沿った配向は、ガスの運動が超音速の乱流によって支配されており、整列した磁場の影響が著しくかき乱されている明確な兆候であることが推測された。さらに、磁場方向とガスの回転の間に乱流が引き起こしたと思われる不整合があり、そのことが大質量の原始星円盤を保持し、中心星に質量を供給して成長させることを可能にしていることも判明した。

今回の研究により、大局的に見れば整列した磁場が巨大分子雲やガス塊の構造を支配していることは明確だが、1つ1つの星やその集団を作る場面では、乱雑な乱流が支配していることが明らかにされた。この発見により、大質量星団の形成に関して、従来の磁場に支配された整然とした過程から、カオスに導かれたものへと考え方の転換が求められることになるとする。

論文筆頭著者である南京大のLiu助教は、「今回の研究は、観測的な謎を解くだけでなく、恒星の種を生み出し育てる物理的過程を詳しく理解するための新たな理論・シミュレーション研究の活性化につながるとよいと思います」とコメントしている。