東京大学(東大) 宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設は1月20日、これまで独立して研究を進めていた「スーパーカミオカンデ(SK)実験」と「T2K(東海to神岡)実験」の両グループが初めてニュートリノ振動の統合解析を実施し、ニュートリノに関する2つの未解決問題である「CP対称性」に関しては破れている可能性があり、また「ニュートリノ質量階層」は「通常の順序」である傾向が示されたことを発表した。
同成果は、SKコラボレーションとT2Kコラボレーションを合わせた、国内外650名以上もの研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。
我々の宇宙は物質が圧倒的に多く、物質と反物質の非対称性を解明する上で重要な鍵を握るとされるのが、CP対称性の破れだ。Cは「電荷共役」、Pは「パリティ」を意味し、C対称性とは粒子を対応する反粒子に置き換える対称性、P対称性とは鏡像に映したような空間反転の対称性を指す。近年、ニュートリノがそのCP対称性を破っている可能性があることが注目されており、もしそれが本当なら、ニュートリノと反ニュートリノの振る舞いが違うことになる。CP対称性の破れは、素粒子標準模型では完全に説明ができないため、新しい物理理論の発見につながる可能性もあるとされている。