このサイエンスニュースのまとめ
・東北大学と保土谷化学工業が、機能性有機材料の開発から社会実装までを一体で進める共創研究所を設置
・微量有害物質の検知や高耐久デバイス創出を主なテーマとし、設計から用途開発、人材育成までを含めた体制を構築
・保土谷化学の中期経営計画「コード2030」におけるオープンイノベーション推進の第一弾として位置付け
東北大学と保土谷化学工業は6月11日、機能性有機材料の開発から社会実装までを一体で進める「モノづくりで持続可能な社会に貢献する共創研究所」を設置したことを発表した。機能性有機材料の開発から社会実装までをシームレスに進める常設拠点として運営し、微量有害物質の検知や高耐久デバイスの創出など、持続可能な社会の実現に向けた研究開発と事業推進を加速することを狙いとしている。
同研究所は、機能性材料の設計、製造、用途開発を含む事業推進と、次世代の研究開発を担う人材育成を一体で進める点が特徴だという。対象分野としては、マイクロプラスチックや有機塩素化合物、特定PFASといった微量有害物質の検知に加え、高耐久なデバイスの創出などが想定されている。
背景には、機能性有機材料が光、熱、電気などのエネルギー変換や吸収・発生といった多彩な機能を持ち、エレクトロニクス、ライフサイエンス、環境、インフラなど幅広い分野で重要性を増していることがある。持続可能な社会の実現に向けて社会的要請が高まる一方で、大学の基礎研究と企業の応用・事業化開発を段階的につなぐ従来型の手法では、変化の激しい市場環境に追従しにくいという課題があったという。
そこで両者は、東北大学内に常設の共創研究所を設け、企業人材をクロスアポイントメントなどを通じて特任教員として参画させる体制を構築することで、化合物設計、合成、分析・評価に関する知見や技術を円滑に連携させるとともに、学内の複数部局・複数教員との協働を通じて、横断的かつ迅速な研究推進体制を構築するとしている。
微量有害物質検知や高耐久デバイス創出を視野
同共創研究所は、単なる共同研究の場ではなく、研究成果の社会実装までを見据えた拠点として設計されている。特に、微量有害物質の高感度検知や耐久性の高いデバイス材料の創出は、今後のエレクトロニクスや環境対応技術の基盤となり得るテーマであり、機能性有機材料の用途拡大にもつながる可能性がある。
また、東北大学の高度な学術知見と、保土谷化学が持つ有機合成技術やモノづくり技術を融合することで、研究段階から事業化段階までを一体運用しやすくする。大学の研究シーズと企業の量産・市場展開力を近い距離で結び付けることで、事業化までの時間短縮を狙う構図だ。
東北大学多元研内に3年間設置
共創研究所の設置場所は、東北大学多元物質科学研究所 南総合研究棟2の306号室。設置期間は2026年6月1日から2029年5月31日までの3年間としている。活動内容は、機能性有機材料の共同開発と事業推進、ならびに研究開発を通じた人材育成の2本柱で構成する。
体制面では、保土谷化学工業 筑波研究所長 兼 新規事業探索部の青木良和氏が東北大学特任教授(研究)として運営総括責任者を担う。東北大学側では、多元物質科学研究所の岡弘樹 准教授が運営支援責任者、笠井均 教授が共同運営支援責任者を務める。このほか、保土谷化学から加瀬幸喜氏、武井貴紀氏、金澤輝石氏が特任教員として参画し、東北大学金属材料研究所の芳野遼助教も加わる。
保土谷化学の「コード2030」第1弾に位置付け
今回の取り組みは、保土谷化学が2026年度から開始した中期経営計画「コード2030(CODE/CHORD 2030)」における、オープンイノベーション推進の第1弾と位置付けられている。企業人材を大学側の特任教員として迎え入れるクロスアポイントメントを活用し、「人」と「知」の循環を促進することで、新材料創出と事業創出を同時に進める枠組みを築く。
なお、保土谷化学は1916年設立の素材メーカーで、有機合成技術を核に機能性色素や機能性樹脂、基礎化学品、アグロサイエンス製品などを手掛けてきた。東北大学と保土谷化学は、同研究所をハブとして研究から社会実装までを一体的に運用し、持続可能な社会の実現に貢献する新材料の創出を加速していく方針としている。
