このサイエンスニュースのまとめ
- 三菱電機、東京科学大学との共同研究成果として、ケミカルルーピング方式におけるCO2還元反応モデルを構築。反応の高速化に成功
- 従来の同方式では、還元反応の反応速度の低下を補うためにレアアースを使っていたが、レアアースを使わずに高速化できるモデルを新たに構築した
- 環境負荷が低く高効率なCCUシステムの社会実装に向けて前進
二酸化炭素(CO2)を循環利用できる資源へ転換する、高効率なカーボンリサイクルの実現に向け、三菱電機が東京科学大学との共同研究成果を6月10日に発表。“ケミカルルーピング方式”におけるCO2還元反応モデルを構築し、反応の高速化に成功したことを明らかにした。
三菱電機と、東京科学大 環境・社会理工学院 融合理工学系 エネルギー・情報コースの大友順一郎教授らによる研究成果で、詳細は論文誌「Chemical Engineering Journal」にオンラインで先行公開され、6月15日付のVolume 538に掲載予定だ。
研究背景と今回の成果
政府の「2050年カーボンニュートラル」宣言の実現に向け、CO2を排出削減の対象とするだけでなく、回収して資源として再利用する「CCU技術」への期待が高まっている。CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)とは、工場などから排出されたCO2を回収し、燃料や化学品、建材などの製造に利用する技術のこと。両者は2025年2月から、CCUシステムの構築をめざして、ケミカルルーピング方式によるCO2還元技術の実証試験を進めてきた。
ケミカルルーピング方式とは、酸素キャリア(酸素を運ぶための媒体となる物質)を介して、二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素(CO)に変換する還元反応(物質から酸素が奪われる化学反応)と、酸化反応を別々に繰り返し行う方式のこと。この方式では、酸素キャリア粒子に含まれる鉄などの金属がCO2と接触した際、酸素(O)を粒子中に取り込むことで、CO2をCOに還元する。
従来の同方式では、鉄などの金属表面が酸化して活性が低下することで、CO2還元反応速度が遅くなるため、レアアースなどの高価な重要鉱物を担体(反応を助ける金属などの活性物質を均一に広げ、他の物質を固定する土台となる物質)に添加し、反応速度の低下を補っていた。これがコスト増加や資源調達における地政学リスクにつながり、CCUシステムの社会実装を妨げる要因になっていたという。
両者はこうした課題に対し、反応金属そのものではなく、担体が反応にどう関与するかに着目。東京科学大がもつ材料科学の知見を活用し、鉄置換チタン酸カルシウム(CTFO)を担体として適用した反応モデルを新たに構築した。CTFOはイオンと電子の両方を運べる性質を持っており、レアアースなどの重要鉱物を添加しなくても、反応温度800度においてCO2還元反応速度を従来比1.8倍に向上させることに成功したという。
このような高い反応速度は、単位時間あたりのCO2処理能力の増加につながるため、装置の小型化や設備コストの低減、運転効率の向上が期待できるとのこと。また、レアアースなどの重要鉱物に依存しない材料設計は、コストだけでなく、資源による制約や地政学リスクの低減にもつながるとしている。
両者は今回の成果を活用して、ケミカルルーピング方式によるCO2還元などのCO2資源化技術の実証と改良を進め、エネルギー効率や時間当たりのCO2処理量などを反映した設計により、環境負荷が低く高効率なCCUシステムの社会実装をめざす。
