炭素原子が蜂の巣状に並んだ「グラフェン」について、六角形の孔を周期的に開けて網目状に加工することで、熱伝導率を大きくすることに、計測機器を手がけるアンリツが成功した。今回の発見は、地球温暖化を防ぐ熱制御技術の開発や、集積回路への応用につながる可能性があるという。
グラフェンは2010年にノーベル物理学賞を受賞した素材で、炭素原子が蜂の巣状に規則正しく並んだシート状の物質だ。炭素原子1個分の厚さで、世界一薄い材料ともいわれる。これらの性質を生かした電子機器や、放熱材料への応用が期待されている。しかし、現在の技術では、熱を逃がす経路を制御しにくいという欠点があった。
アンリツは2020年に先端技術研究所を設立し、グラフェンのナノスケール(ナノは10億分の1)での加工に取り組んできた。同研究所の松井朋裕室長(物理学)は、大学からこの研究所に移った。松井室長らは、グラフェンに加工を施し、その特性を計測。さらに、製品に応用するためにはどのような形にすれば使えるか実験した。
最初に帯状に加工したところ、架橋部分でたるみやすくなることが分かった。熱伝導率を調べても、帯の幅を狭くするほど熱が伝わりにくくなった。これは従来の物理法則に従っていた。
続いて、グラフェンに六角形の孔を周期的に開け、網目状に加工することにした。網目状にしてグラフェン結晶構造の端っこをジグザグ型にした。この形態で熱伝導率を計測すると、非常に高い値が得られた。
これまでマイナス273度付近という極低温の中で、シリコン薄膜に周期的に穴を開けた構造の場合は、熱伝導率が良くなることは知られていた。今回の加工により、グラフェンで、常温・大気圧の下でも高い熱伝導率を得ることに成功した。網目状にすれば、帯状に比べ、比較的強い作りになることも分かった。
松井室長は「例えば、地球温暖化へのアプローチには、温室効果ガスへの対応など温暖化の元を絶つこととは別に、熱からエネルギーを取り出したり、熱の流れを制御したりといったことも必要である。今回の成果は、後者に役に立つのではないか」とした。
成果は英国の科学誌「2D マテリアルズ」電子版に3月24日に掲載され、アンリツが同30日に発表した。
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