米国商務省は3月21日(米国時間)、「CHIPS and Science Act of 2022(CHIPS法)」の補助金支給プログラムに含まれるガードレールに関する規則の詳細を発表した。

それによると「国家安全保障ガードレール」の目的は、「CHIPS法」によって資金提供された技術が、米国またはその同盟国に敵対する国々によって悪意のある目的で使用されないようにすることだとしている。

補助金受給のための3種類のガードレール条項

新たに提案された規則は、国家安全保障に関するもので、補助金受領者が米国以外の国々での半導体製造に対する投資を制限しようというもの。この規則は、パブリックコメントの募集を行ったうえで今秋に最終確定する予定としている。

同法では、敵対する国々を中国、ロシア、イラン、北朝鮮の4カ国としている。ガードレール条項は、米国が同盟国やパートナーとの調整と協力を継続し、グローバルサプライチェーンをより回復力のある多様なものにするため、共通の国家安全保障上の利益を促進するものだとしている。

CHIPS法によって提供される資金には、国家安全保障を強化するために以下のような明確なガードレールが設定されている。

  1. CHIPS法の補助金やファンドは、受領者が米国以外の国でそれを使用することを禁止する
  2. CHIPS法は、補助金やファンド受領者が、授与日から10年間、敵対国での半導体製造投資を制限する
  3. CHIPS法は、補助金やファンド受領者が、国家安全保障上の懸念を引き起こす技術または製品に関して、敵対国にある団体と共同研究したり技術ライセンスを供与することを制限する

商務省では、これらを以下のように具体的に数字を用いて定義している。

最先端半導体製造施設の新設や拡張の制限は、裁定日から10年間有効で、現在の提案では10万ドル以上の取引ならびに施設の生産能力を5%以上増加させる場合としている。もし、違反した場合、支給した資金のすべてを受給者から取り戻すことができるという規定となっている。

また、敵対国でのレガシー施設の拡張および新規建設にも制限を課している。この場合、生産能力が10%を超す投資を禁止しているほか、新工場が許可される場合は、その生産物の少なくとも85%が生産国の市場で主に消費される最終製品に組み込まれる場合に限るとしている。レガシー半導体も国家安全保障にとって重要な物資と定義したもので、当該品のリストは、国防総省および米国インテリジェンスコミュニティ(国家安全保障のための情報を収集する組織の集合体)と協議して作成したとしている。

さらに国家安全保障上の懸念を引き起こす技術または製品に関連する外国関係機関との共同研究・技術供与の制限については、「共同研究活動」を2人以上が行う研究開発と定義し、「技術ライセンス」を、特許、企業秘密、またはノウハウを別の当事者が利用できるようにする契約と定義。外国の懸念対象事業体には、商務省が指定した事業体のほか、財務省の中国軍産業複合体企業(NS-CMIC)リスト、および連邦通信委員会の指定した事業体なども含むという。

なお、これら商務省が提案した規則は、同時期に発行された米国財務省の投資税額控除に関する「国家安全保障ガードレール」とも一致している。これらの控除はCHIPS法により提供される一連のインセンティブの重要な要素で、両省はCHIPS法の資金調達と投資税額控除について密接に連携しており、これらのインセンティブが補完的であり、米政権の経済および国家安全保障の目標を前進させることを保証するためのものだとしている。