米バイデン政権は2月28日(米国時間)、「CHIPS and Science ACT of 2022」(CHiPS法)に基づく半導体メーカーの施設新増設に対する総額390億ドル(5年分)の補助金支給の申請手続きを商務省傘下のNIST(国立標準技術研究所)を通じて開始すると発表した。

米国立標準技術研究所(NIST)はこれを皮切りに、春の終わりに半導体材料および製造装置施設への資金提供、秋に研究開発施設への資金提供も行う計画としている。政府補助金は、直接資金提供、連邦ローンまたは第三者ローンの連邦保証の形をとり、民間投資やその他の資金源を置き換えるのではなく、補完するように設計されている。

補助金支給に向けた多数の審査項目

申請書類は、商業的な実行可能性、技術的な実現可能性、財政力、労働力の創出、経済成長を促進する取り組み、地域経済への貢献はじめ女性やマイノリティの雇用や託児所の設置などこまごまとした事項にいたるまで、専任チームが厳しく審査するとしている。

別途、申請者は米財務省および内国歳入庁が管理する高度な製造投資控除(投資税額控除)を請求することも可能で、財務省では3月にこの控除に関するガイダンスを公表する予定であるとしている。

CHIPS法の指針となる主な優先事項は以下の通り。申請はこれらの優先事項に沿ったものでなければならないとしている。

民間投資の促進

CHIPS法の目的は、民間資本による投資を促進することで、米国の経済と国家安全保障を前進させる実行可能で大規模なプロジェクトを作成することを目指している。

納税者の税金の保護

CHIPS法は、税金の管理者となり、投資を奨励するために必要最小限の金額を提供するために、広範なデューデリジェンス(調査)を実施する。さらに、申請者が自社株買いを控えるようにし、1億5000万ドルを超える直接資金の受領者に対して、キャッシュフローまたは収益の一部を米国政府と共有することを要求する。

熟練した多様な労働力の創出

多数の熟練した多様な労働者を採用、トレーニング、維持することは、米国の半導体エコシステムを強化するために不可欠である。CHIPS法の資金を求める企業は、施設で半導体製造にあたる労働者と施設を建設する労働者のための労働力開発計画を提出する必要がある。1億5000万ドル以上の直接資金を要求する申請者は、労働者のために利用しやすく、信頼性が高く、質の高い育児へのアクセスを提供するための託児所計画も提出する必要がある。

米国のパートナーおよび同盟国との連携

米国政府は同盟国/同志国と連携して、イノベーションを推進し、サイバーセキュリティの脅威、自然災害やパンデミックに至るまで、さまざまな混乱に対して回復力のある健全なグローバル半導体エコシステムを支援する。これには、政府のインセンティブプログラムの調整、回復力のある国際半導体サプライチェーンの構築、将来技術に関する知識交換と協力の促進、国家安全保障を保護するためのセーフガードの実装が含まれる。具体的には、補助金受給者は受給日から10年間にわたり、特定国の半導体製造能力の増大のための取引に、一部の例外を除き関与できないものとする。資金受領者はこれらの政策に協力しなければならない。

経済的機会と包括的経済成長の促進

申請者は米国半導体産業への将来の投資を約束し、R&Dを支援し、マイノリティ、退役軍人、女性の雇用機会、中小企業への業務提供機会の創出なども審査されるほか、環境への責任を果たし、地域社会に投資して貢献しているかどうかも審査される。