Lam Researchは2月9日、元Samsung ElectronicsのExecutive VPでSemiconductor R&D Center長を務めたHo Kyu Kang氏を取締役に指名したと発表した。

Kang氏は、現在、韓国ソウルにある延世大学のシステム半導体工学科の主任教授であるが、それ以前は、Samsungに35年間勤務し、2017年から2020年まではSamsung Semiconductor R&D Centerの研究統括責任者を務めていた。Samsungでは、複数世代のロジック、2Dおよび3D NANDの開発を推進したほか、LSIのプロセスアーキテクチャやCMOSイメージセンサプロセスの開発も担当していたという。さらに、次世代材料やプロセス微細化の探索など、Samsungの将来の半導体技術に関する研究も監督していたとのことで、Lam Researchは、Kang氏のそうしたSamsungでの35年に及ぶ研究経験を今後、活用していくことになる模様である。

Lam Researchの取締役会会長であるAbhijit Talwalkar 氏は、「高度な半導体チップ技術とプロセスの開発における世界有数の専門家の1人であるKang氏は、ロジック、NAND、DRAMエンジニアリングにおける豊富な経験と専門知識をもたらし、我々の顧客が3D時代の次世代製品ロードマップを描くのを助けてくれるだろう」とこの件について説明している。

  • Lam researchの取締役に就任したHo Kyu Kang氏

    Lam researchの取締役に就任したHo Kyu Kang氏(出所:Lam Research)

韓国で研究開発から装置製造まで一貫して行う体制を強化

Lam Researchは2022年4月、従来からある装置製造施設に加え、韓国内に、敷地面積3万平方メートル規模のR&Dセンター「Korea Technology Center(KTC)」を設置している。KTCは同社のグローバル研究開発ネットワークの重要拠点として、顧客とより緊密な技術パートナーシップを可能にすることで、次世代半導体のソリューションをより迅速に開発するための施設という位置づけだとされており、今回のKang氏の取締役登用も、今後の韓国でのビジネスの発展に向けた新技術開発に注力するための布石と見られる。

Lam Researchの韓国とのかかわりは1989年の現地法人立ち上げまで遡るが、2003年からは製造装置に使われる主要部材の韓国内での調達を開始し、2011年には製造装置製造施設「Lam Research Manufacturing Korea」を設立している。また、2018年にはLam Research Training Centerを設立したほか、2022年に研究開発施設としてKTCを開所している。これで、Lam Researchは、韓国内に、研究開発センターから技術研修センターや半導体製造装置の製造工場までそろったことになり、主要顧客のそばで研究から製造まで一貫して行える体制が整ったといえる。

Lam Researchは、米国政府の対中半導体規制の影響から、中国市場での売り上げを落とし始めており、今回の動きは、そうした中国以外の国でのビジネス拡大の1つの方向性としてみることができるだろう。

世界の装置大手4社がそろって韓国に研究所を設立

なお、Lam以外にもApplied Materials(AMAT)が韓国・京畿道に次世代半導体メモリ研究開発センターの建設を目指し、地元政府と覚書を締結済みである。京畿道には半導体製造装置の大手4社(AMAT、ASML、Lam、東京エレクトロン)のR&Dセンターを誘致しており、大手4社すべてが韓国内にR&D拠点を有することとなり韓国顧客のそばで新技術や新装置の開発で競うこととなる。