AI需要の拡大を受け、半導体製造装置市場も右肩上がりで推移している。なかでも半導体露光機は次世代プロセスの要となるもので、蘭ASMLのEUV(極紫外線)拡大の勢いが止まらない。
一方、ケタ違いの利益を生むEUVはもたない日本勢だが、キヤノンは後工程で地盤を固め、旺盛な重要に応えている。この2社に挟まれた格好のニコンは唯一赤字に陥っており、中期経営計画でいかに巻き返せるか、注目される。
蘭ASML:Q1売上は増収増益、通期売上も過去最高
EUV露光機市場を独占する蘭ASMLの2026年1〜3月期(Q1)売上は前年比13.3%増、純利益が同17.1%増の増収増益になった。通期売上も360〜400億ユーロと過去最高を見込んでいる。AI需要の拡大を背景に2030年には売上440〜600億ユーロをめざす。
Q1の露光機売上は63億ユーロと、前四半期(Q4:2025年10〜12月)比17%減だったが、これは前四半期がハイNA機の売上計上などで記録的な数字になったためだ。Q1とQ4を比べるとEUV機の売上構成比が48%(14台)から66%(16台)に上がる一方で、ArF(フッ化アルゴン)液浸機は40%(37台)から23%(17台)へと大幅減少。またメモリ向けが51%へと21ポイント増加したのと併せて、販売地域もSKハイニックスとサムスン電子のある韓国が45%と、23ポイントの大幅増となっている。なお日本はQ4で10%だったが、Q1では激減してグラフに表れていない。
同社はEUV販売比率が高まるにつれ露光機販売後のビジネスが大きくなっている。Q1では露光機自体の売上は63億ユーロだったのに対して全売上は87億6,700万ユーロ。この差額は保守サービスや部品交換、アップグレードなどである。これからハイNA時代に入っていくが、従来の2倍ともされる高額装置の稼働率を維持するには、販売後の稼げるビジネスがいちだんと重視されることになる。
キヤノン:露光機販売には追風のメモリー高騰、調達コストアップ500億円
キヤノンの半導体露光機販売台数は第1四半期(Q1:1〜3月)、44台と前年同期を12台下回った。KrF(フッ化クリプトン)機は前年並みの10台だったが、i線機は34台にとどまり前年比12台減。これには主にi線を使う中国の電気自動車(EV)向けパワー半導体の需要減が大きく影響している。
一方、KrF機は2025年から続くメモリー需要の高まりに対して早期納入を求めるユーザーが多く、「できるかぎりの増産体制をとっている」という。同社は昨年、宇都宮に新設した半導体露光機新工場の稼働を開始したばかりだが、部品調達難などの解消が課題になっている。
メモリーと後工程需要の拡大から半導体露光機は通期、KrFが69台(前年46台)、i線が169台(同188台)となり、併せて前年比4台増の238台を見込んでいる。また画像処理装置(GPU)と併せて需要が急増しているHBM(High Bandwidth Memory)を生産する成膜装置の売れ行きも伸びている。
他社に先駆けるナノインプリント(NIL)装置は半導体大手が実際の製造ラインを想定した評価段階に入ったとして2027年以降の売上貢献を見込んでいる。NILは2030年に売上5兆6000億円、営業利益率15%をめざす中期経営計画でも牽引役と位置づけている。
同社はプリンターやカメラの製造にDRAMなどのメモリーを大量に使うヘビーユーザーでもあり、高騰を続けるメモリー調達は年間500億円のコストアップを見込む。すでに通期で必要なメモリー量はほぼ確保しているが、中東情勢と併せて通期営業利益予想を230億円引き下げる要因になっている。露光機販売には追風だが調達では逆風になるのがメモリーひっ迫である。
ニコン:半導体に積極投資、大村新社長「強みを最大限生かせるのは精機事業」
かつて世界トップシェアを競っていたニコンの半導体露光機事業だが、2年連続で減損損失を計上するなど足下の情勢は厳しい。だが4月に社長執行役員最高経営責任者(CEO)に就任したばかりの大村泰弘氏は、「ニコンの強みを最大限に生かせるのは精機事業、とりわけ半導体にある」として積極的な投資を決断した。
露光機を扱う精機事業の2026年3月期売上は前年比17.2%減の1672億円、営業利益は45億円の赤字(前年は15億円の黒字)だった。利益率の高いArF(フッ化アルゴン)機の販売台数減と固定資産の減損計上57億円が響いた。
2026年3月期の販売台数は、中古込みで27台(2025年3月期:28台)。これを光源別にみると、ArF液浸はゼロ(前期3台)、ArFが3台(同5台)、KrF(フッ化クリプトン)が4台(同2台)、i線が20台(同18台)。
今期(2027年3月期)予想は29台で、光源別にみるとArF液浸が3台、ArFが7台で、売上は12.4%増の1880億円、営業利益は120億円と黒字化をめざす。デジタル露光機DSP-100は初号機を受注、ArF新製品(NSRーS333F)は初号機を出荷済みと、差別化製品も動き出している。
同社は前中期経営計画(2022〜2025年度)の精機事業について、「米大手顧客への高依存度リスクが顕在化」と総括。これを踏まえて、売上1兆円、営業利益800億円をめざす今中期経営計画(2026〜30年度)では、改めて半導体露光機に成長投資を行い、2030年度に精機事業売上2,900億円をめざす。稼ぎ頭のArF液浸機は、ASML互換タイプの開発を進めていて2030年以降に収益への貢献を見込んでいる。






