NHK放送技術研究所(技研)は、“自然で疲れにくい”3次元映像の表示を追求した「ライトフィールド方式」のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を開発発表。東京・世田谷のNHK放送技術研究所で行われる「技研公開2026」(会期:5月28〜31日、入場無料)に、試作機を出展する。
技研では、実世界に近い自然な見え方で、視覚疲労の少ないバーチャルリアリティー(VR)体験の実現をめざし、ライトフィールドHMDの開発を進めてきた。今回の試作機の大きな特徴は、役割が異なる2種類のレンズを接触して配置する独自の光学系と、高精細なマイクロディスプレイを組み合わせることで、従来よりも大幅な薄型化と高精細化を両立したことにあるという。
今回の開発デバイスの注目ポイント
- NHK放送技術研究所が、“自然で疲れにくい”3次元映像の表示を追求した「ライトフィールド方式」のHMDを新開発
- 内部には独自の光学系を採用。役割が異なる2種類のレンズを接触して配置しており、奥行きを従来比79%削減して大幅に薄型化
- 高精細マイクロディスプレイと、レイトレーシング技術によるによる要素画像の高速生成も組み合わせて構成
- 「技研公開2026」に、今回開発発表した試作機を出展
従来のVRはなぜ目が疲れるのか?
一般的なVRゴーグル(HMD)は、左右の2枚のディスプレイの映像をそれぞれレンズ(光学系)でいったん離れた場所に拡大表示し、左右の目に少しずれた映像(視差)を見せることで、立体感を作り出す。
この二眼方式の課題は、“視覚疲労を起こしやすい”ということ。たとえば、映像上の物体が前後に動いても、目のピント(焦点)はレンズで拡大されたディスプレイの位置に固定されたままになる。このため、「視差によって知覚される奥行き位置」と「目のピントを合わせている位置」が一致しなくなり、疲労や不快感の要因になると考えられている。
そこで今回の試作機では、物体から放たれて目に到達する“光線の集まり”を再現する技術であるライトフィールド方式を採用。実世界で物を見るときと同じように、見たい位置に目のピントを合わせられるため、「長時間視聴しても疲れにくい」、「自然な3次元映像を表示できる」といった効果が期待されるという。
ライトフィールドHMDの技術的ポイント
今回のライトフィールドHMDの試作機では、技術的なポイントがふたつある。ひとつは「光学系の大幅な薄型化」で、もうひとつは「高精細映像のリアルタイム表示」だ。
これまでのライトフィールドHMDには、装置が大きくなってしまう課題があった。従来の仕組みでは、ディスプレイとレンズアレイ(微小なレンズを平面状に並べた光学素子)で一度空中に微小な中間像を作り出し、それを接眼レンズで拡大するというプロセスがあるのだが、この方法で目と離れたところに3次元映像を表示するには、レンズアレイと接眼レンズの間に約4cmの間隔が必要だったという。
そこで技研では、レンズアレイと接眼レンズを接触配置する新しい光学系を考案した。ふたつを接触させることで、実質的に1枚の光学素子として機能させ、光線制御と集光を同時に実現。さらに、この光学系に適した要素画群像の生成手法を組み合わせて、中間像を介さず直接3次元映像を目に届けられるようにした。これにより光学系の奥行きは10.5mmですみ、従来比79%削減と大幅な薄型化につなげた。
この光学系に高精細マイクロディスプレイと、「レイトレーシング技術」(膨大な光線の高速計算技術)による要素画像の高速生成を組み合わせることで、高精細な3次元映像をリアルタイム表示できることも確認したという。
技研では今後、3次元映像の高精細化と表示範囲の拡大に向けた改良を進め、教育、医療、エンターテインメントなど、さまざまな分野で活用できる「自然で視覚疲労の少ない快適なHMD」の実現をめざす。




