ソニーグループは5月27日、イメージングセンシング・ソリューション分野の事業戦略について説明した。

  • ソニーセミコンダクタソリューションズ 代表取締役社長兼CEOの清水照士氏

    ソニーセミコンダクタソリューションズ 代表取締役社長兼CEOの清水照士氏

2021年度のトピックス

ソニーセミコンダクタソリューションズ 代表取締役社長兼CEOの清水照士氏は、「イメージセンサーの金額シェアは、2021年度の43%から、2025年度には60%にまで拡大する。また、ROICでは20~25%を目標にしている」と、中期的な経営指標を示しながら、高機能スマホ向けモバイルイメージング、車載向けイメージセンサー、インダストリー向けイメージセンサー、ソリューション事業などを重点分野として取り組んでいく姿勢を示した。

イメージング&センシング・ソリューション分野の2021年度の業績は、売上高が前年比6.3%増の1兆764億円、営業利益は97億円増の1556億円。「2019年度の最高益から一転し、厳しい事業環境が続いている。半導体不足や地政学リスクもあるが、一昨年の米中貿易摩擦以降に続けてきたモバイル向けイメージセンサーの顧客基盤の分散、拡大、数量シェアの回復については、一定の成果を出すことができた。センシング領域では、複数のデバイスラインアップを発表し、将来に向けた仕込みが進んだ」と位置づけた。また、ソリューション事業では、エッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS」をローンチ。長崎テクノロジーセンターFab5の稼働開始や、台湾TSMCによるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)への出資などを、2021年度のトピックスにあげた。

  • ソニーグループ イメージング&センシング・ソリューション分野の2021年度のトピックス

    ソニーグループ イメージング&センシング・ソリューション分野の2021年度のトピックス

環境経営を意識

清水社長兼CEOは、「変化への耐性を高めながら、収益性回復に向けた経営を進める」とした。また、「イメージング&センシング・ソリューション分野は、製造過程において多くの資源エネルギーを必要とするため、ソニーグループのなかでは、環境負荷が最も大きい事業である。省エネの推進や、再生可能エネルギーの導入を積極的に行う。環境において、課せられた責任は大きいと考えている」とも述べた。

先ごろ、ソニーグループでは、カーボンニュートラル達成目標を2050年から2040年に、また、再生可能エネルギー100%達成時期を2040年から2030年へと、いずれも10年ずつ前倒しすることを発表している。

イメージセンサー市場は2030年までCAGR9%で成長を予測

2030年に向けたイメージセンサー市場の見通しについては、2022年以降の年平均成長率が約9%を予測。長期に渡る市場成長を見込んでいる。なかでも、モバイルイメージング領域が、依然として過半を占める状況が変わらないと予測した。「これまでは成長が鈍化すると見ていたが、多眼化は飽和する一方で、大判化が中長期的に継続し、引き続き市場成長を牽引するという見通しに変更した」という。

  • イメージセンサー市場全体の将来予測

    イメージセンサー市場全体の将来予測

背景にあるのは、スマホの高級機種向けのイメージセンサーが大きく成長。それをセンサーサイズの大判化が牽引すると見ているからだ。

「スマホメーカー各社は高級機種において、高性能カメラシステムを重要な差異化要素に位置づけ、これを追求する動きがある。独自のアプリケーションプロセッサを持つスマホメーカーに加えて、汎用アプリケーションプロセッサを用いるメーカーも独自のイメージシグナルプロセッサを開発することで、新たな撮影体験を実現しようとしている。ここで求められるのは、大画素や大口径のイメージセンサーであり、ソニーグループでは、この領域に最も注力し、高画質、多機能化に貢献できる高付加価値のイメージセンサーを開発していく」と述べた。

スマホメーカーとはロードマップを共有し、顧客の要求を反映。「これまではバッテリー、ディスプレイ、カメラの3つがスマホの進化ポイントだといわれてきたが、バッテリーとディスプレイはこの数年でかなり進化し、いまはカメラの進化に注目が集まっている。大判化した際の課題解決にも道筋が見えている。コスト削減にも取り組んでいる」などと述べた。

  • スマホで求められるカメラの技術進化の方向性

    スマホで求められるカメラの技術進化の方向性

スマホのカメラは数年以内に一眼レフを超える画質に

イメージセンサーの高付加価値化の取り組みのひとつとしてあげたのが、世界初の「2層トランジスタ画素」である。従来、同一基板上で形成していたフォトダイオードと画素トランジスタの層を、別々の基板に形成し積層することで、従来比約2倍の飽和信号量を確保し、ダイナミックレンジ拡大とノイズ低減を実現して。撮像特性を大幅に向上できるという。

さらに、清水社長兼CEOは、「いま進めている技術開発により、数年以内に、静止画の画質は、一眼レフカメラを超えることができる。さらに、静止画、動画、演出という軸で技術の進化が進み、2030年には静止画で超HDRやズーム機能、動画では高画質化や8Kでの高速読み出し、演出ではライティングや背景ボケが可能になる。この実現に向けては、マルチカメラの進化、高速読み出しの進化、エッジAIの進化、距離情報との連携などの技術進化が鍵になる。モバイルイメージングはテクノロジードライバーと位置づけられ、技術進化の余地も大きい」と述べた。

また、普及価格帯のスマホ向けには、微細多画素イメージセンサーの採用が進んでいることを捉えながら、「画素が小さいため、画質が悪化する傾向がある。今後は、微細多画素イメージセンサーの開発に加えて、得意としている信号処理やアルゴリズム技術で差異化し、カメラ性能の向上に貢献していく考えである」とした。

車載領域は2025年度にはトップ20社の75%と取引へ

一方、センシング領域は、モバイル分野でのアプリ不足により、本格普及は数年先になるとしながらも、車載分野ではカメラ搭載数が多いADAS領域での利用が拡大すること、自動運転領域でも活用が期待されているとした。

「車載領域は2022年度に大幅な売上成長を見込んでいる。2025年度には取引があるOEMは、グローバルトップ20社の75%になり、世界の車両の8割を占める見込みである」と自信をみせた。

ADAS領域では要求が高いフロントカメラで開発したテクノロジーをサラウンドやリアにも展開。1台あたりのカメラ搭載数は6~8個を想定しているという。ここでは、OEMやプラットフォーマーとの直接的なリレーションを構築。「この取り組みが、近年の事業成長において、功を奏している」という。

自動運転領域では、16~20個のカメラが搭載されると想定。「タクシーなどのサービスユースから実用化が進むだろう。市場動向を注視しながら、将来に向けた先行投資を進めていく」と述べた。

ソニーセミコンダクタソリューションズには、車載向けの差異化技術として「Sensor Fusion」がある。異なるセンシングデバイスを融合。信号処理前のRAWデータの状態で取り出し、最適な特徴量を抽出。独自のアーリーフュージョン技術によって、高精度な物体認識を実現するという。2025年には、悪環境の車両認識以外にも、夜間の人や車両の認識にも活用するフロントセンシングと、精度の高い測距を必要とする駐車支援機能に応用することができるサラウンドセンシングの領域で実用化する計画だ。