Intelは2月15日、Tower Semiconductorを60億ドル近くで買収することを発表。それを受けてTrendForceは、この取引が成立すれば、Intelのファウンドリビジネスの成長に大きく貢献する可能性があるとの分析結果を発表した。

TrendFoeceによると、Tower Semiconductorは、2021年第4四半期の世界ファウンドリ売上高ランキングで9位。イスラエル、米国、および日本に合計7つの生産拠点を有している。日本には、砺波工場(0.35-0.15μm)、新井工場(0.13-0.11μm)、魚津工場(65-45nm)の3ファブを有している(元々はパナソニックの半導体工場で、北陸3工場と呼ばれていた)。

提供プロセスについては、0.8μmから65nm(一部45nm)までとなっており、比較的少量の製品を製造するための多様な特殊プロセス技術を備えている「Specialty Foundry」であることを売り物にしている。そのため、製造を請け負っている製品も、主にRF-SOIコンポーネント、PMIC、CMOSイメージセンサ、ディスクリートなどであり、同社の買収は、Intelがスマートフォン関連ビジネスで存在感を増すのに役立つと期待されるという。

AMDやNVIDIAを顧客にできないIntelが選んだ新戦略

TSMCやSamsung Electronicsと競争するIFS(Intel Foundry Services)は、ライバルとは異なりこれまでCPUやGPUなどのプロセッサ用プラットフォームを中心に提供してきた。その一方で、サーバ、PC、GPU、その他のHPC関連チップの分野で長い歴史を持つAMDやNVIDIAといった、10nmプロセス以下の先端プロセスを必要とするIFSの顧客となるべき企業との競争も継続している。これらの企業との競争関係は、それらがIFSの顧客となる可能性が低くなり、IFSの成長にとっての障壁になる可能性があるとする。

こうした市場背景を踏まえると、TrendForceでは、IntelのTower買収は、レガシープロセスによるポートフォリオの拡充ならびにそれに伴う新規顧客獲得につながること、ならびに米国、イスラエル、日本というファブの配置により、ファウンドリサプライチェーンがアジア中心となっている不均衡を是正するというIntelの戦略的目標に合致することを挙げており、地政学的リスクの軽減も含め、一石二鳥でファウンドリ業界におけるIntelのプレゼンス拡大につながる可能性があるとしている。

パナソニックの半導体技術も入手できる可能性

Towerが日本に有する3ファブについては、2014年に設立されたTowerとパナソニックの合弁会社が運営を行っていたが、2020年に台Nuvotonがパナソニックの半導体事業を取得。3つのファブの所有権も譲り受けていた。

IntelがTowerを買収した後は、IntelがNuvotonの合弁相手となり、産業用マイコン、車載マイコン、PMICなどの生産ラインを共同で運営することとなり、パナソニックがかつて開発したCMOSセンサやマイコンなどの技術も入手できることとなる。

かつて経済産業省はTSMC同様、Intelの先端工場を日本に誘致しよう動いていた時期があったが、断られたとされる。しかし、今回、期せずしてIntelのTower買収により、Intelが日本にファブを持つこととなれば、再度、先端プロセス工場誘致の話し合いの可能性がでてくるかもしれない。