パナソニックおよび台湾のNuvoton Technology(新糖科技)は9月1日、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大や中国などの独禁当局の承認審査の遅れで、売却の完了時期を3カ月延期していたパナソニックの半導体事業のNuvotonへの売却手続きが完了したと発表した。

この取引には、パナソニックの半導体子会社であるパナソニックセミコンダクタソリューションズ(PSCS)の100%株式、Panasonic Semiconductor(Suzhou)の設備と在庫、Panasonic Industrial Devices Semiconductor Asiaの事前定義された特定のビジネスに関連する資産、負債、契約が含まれている。譲渡完了後、PSCSはNuvoton Technology Corporation Japanに名称変更され、パナソニックの名が消えることとなった。

この買収により、Nuvotonは、PSCSの研究開発の人員、センシング技術、マイクロコントローラ技術、コンポーネント技術を獲得することとなったほか、京都府長岡京市をはじめとする4か所の関連する土地も取得。この土地売却に伴い、売却額は当初の予定から約50億円上振れし、約310億円(2億9500万ドル)となったという。

Nuvotonは今回の買収に際し、「長期的には、テクノロジー機能の強化、製品ラインの多様化、事業範囲の拡大と収益の成長、市場シェアの拡大を実現し、日本とグローバル市場の両方での認知度を高めていきたい」と述べている。

Nuvotonは、グローバルな半導体業界での激しい競争に対し、革新的なアプリケーションとサービスを提供していくことを目的に持続可能な開発とグローバリゼーション化を図っている。この買収により、Nuvotonは産業オートメーションおよび自動車セクタの長期的な成長トレンドを捉えることができるようになり、成長のための基礎が固められ、グローバルな半導体産業における影響力を高めることにつながると説明している。

なおNuvotonは、台湾の半導体メーカーWinbond ElectronicsからロジックIC事業を引き継ぐ形で、Winbond100%子会社として2008年に分社化され、同年7月より操業を開始し、2010年9月に新規株式公開を果たしている。これまでは、Armマイコンやマイクロプロセッサ、音声処理IC、スマートホーム、クラウドセキュリティICなどにフォーカスを当て、産業、消費者、コンピュータ市場をターゲットにした製品を提供してきた。かつて、パナソニックは、松下電子工業として世界半導体売上高ランキングでトップ10の常連であった時代もあったが、今回の売却完了で半導体業界からパナソニックという名前が消えることとなる。かつてパナソニックが保有し、現在はTowerJazzとの合弁会社パナソニック・タワージャズ セミコンダクター(TPSCo)として運営してきた北陸3工場(魚津、砺波、新井)については、今回の事業売却の中にパナソニックの持ち分が含まれており、今後はNuvotonとイスラエルTowerJazzとで共同運営されることとなり、すでに2020年7月1日付で社名がタワー パートナーズ セミコンダクターへと変更されている。

  • タワー パートナーズ セミコンダクター

    2020年7月1日付で先行してパナソニック・タワージャズ セミコンダクターはタワー パートナーズ セミコンダクターへと社名変更が行われた。写真は北陸3工場の1つ新井工場の外観 (パナソニック・タワージャズ セミコンダクター時代に編集部撮影)