欧州連合(EU)欧州委員会のThierry Breton委員(EU域内市場担当)は4月30日(現地時間)、欧州歴訪中であるIntelのGelsinger最高経営責任者(CEO)とベルギー・ブリュッセルで会談し、同社の欧州への工場新設を要請したと海外メディアが報じている。

欧州委員会は、半導体のEU内への輸入比率を低下させ、域内での半導体生産の比率を2030年までに倍増させることで、世界シェアの2割程度を確保することを目指し、海外の半導体企業(Intel、TSMC、Samsungなど)に対する誘致を進めている。また、IntelのGelsinger CEOも先般、欧州に新たな大規模工場を建設する計画があることを明らかにしていた。

こうした動きを報じた一紙であるロイターによると、Gelsinger氏は、欧州域内への半導体工場の新設に際して、80億ユーロ(約96億ドル、約1兆円)の公的助成金をEUに要求した模様だという。また、工場を設置する国としては、ドイツが最有力だが、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグなども候補に挙がっているという。

すでにIntelは、アイルランドに工場を有しており、EUVリソグラフィを用いた7nm CPUの生産に向けた拡張工事を進めているが、これとは別にEU域内での新工場建設を計画している。Gelsinger氏も、アジアに偏重している半導体製造拠点を是正したいとしており、EU域内での工場新設の可能性は高いだろう。

誘致に応じない可能性が高いTSMC

また、Thierry Breton氏は、TSMC欧州法人の社長ともオンラインで会談した模様だが、良い返答はもらえなかったようだ。この会談に先立ち、台湾の王美花・経済部長(日本の経済産業相に相当)は4月28日、記者団に「TSMCは、最先端技術を用いた生産は台湾内(だけ)で行うと繰り返し主張している。台湾とEUの協力のあり方については複数の台湾企業が検討を進めており、さらに協議することが可能だ」と述べたという。台湾政府としても、最先端半導体製造技術の台湾外への移転をみとめない従来の方針に変化はないとしている。

台湾半導体業界関係者によると、TSMCの売上高に占める欧州域内の売上高の割合は6%程度で、日本の4%よりは高いとはいえ、その程度では欧州に工場進出する経済合理性はないという。

なお、TSMCはこの件に関するコメントは出しておらず、最終的に取締役会で承認されたことしか公式発表しない姿勢を貫いている。