欧州連合(EU)は、ドイツとフランスが主導する形で最大500億ユーロ規模でEU内に先端半導体製造のための施設を構築するプロジェクトを推進しようとしているが、その枠組みの1つとしてTSMCとSamsung Electronicsに対し、EU域内に半導体工場の建設を要請することを検討していると米国の経済メディアBloombergが2月11日付け(米国時間)で報じている

また、同紙は「フランス財務省の当局者が記者会見にて、半導体分野で最も革新的なプロセッサを製造しているTSMCとSamsungがプロジェクトに関与する可能性があると述べた」とも伝えている。

今回の件に関し、欧州委員会(EC)ならびにSamsungは公式な回答をしなかったが、TSMCのスポークスマンであるニーナ・カオ氏は「ファブ建設場所の選択に関しては、顧客のニーズを含む多くの要因を考慮する必要がある。TSMCはすべての可能性を排除はしないが、現時点では具体的な計画はない」と答えたという。ちなみに、このコメントは、2020年に一部の日本メディアが「経済産業省がTSMCに前工程ファブの日本誘致を要請している」という記事を報じた際のTSMC側の反応とまったく同じものである。

なお、同紙は、EUの半導体プロジェクトに詳しい情報筋の話として、「EU域内の多数の自動車メーカーが半導体不足に巻き込まれていることが、ヨーロッパが海外から主要技術を調達することに依存していることを浮き彫りにする形となった。半導体の供給のアジア依存からの脱却に向け、欧州は先端プロセスを利用可能な半導体工場の誘致を検討している。具体的には10nmプロセス未満、最終的には2nmチップまでの対応を模索しており、そうした先端プロセスを用いて5Gワイヤレスシステム、コネクテッドカー、ハイパフォーマンスコンピューティング向けチップの域内での自給自足を図りたい模様だ」と、今回の動きの背景を説明している。