この半導体ニュースのまとめ

・Power Integrationsが超薄型補助電源(PSU)リファレンスを公開
・NVIDIAの800VDCアーキテクチャ「Kyber」に対応
・AIデータセンターの電源設計が高密度・高電圧化へ

Power Integrations(PI)は、AIデータセンター向けに設計した2種類の超薄型補助電源ユニット(PSU)のリファレンスデザインを発表した。ターゲットはNVIDIAの次世代高電圧アーキテクチャ「Kyber 800VDC」で、電源システムの小型化と効率向上を狙う。

  • リファレンスデザイン

    リファレンスデザインは15Wのシングル出力でサイズは30mm×30mm×7mmと35Wのマルチ出力で、サイズは80mm×60mm×8mm (出所:PI)

AIデータセンターで進む800VDC化

AIデータセンターでは、GPUの消費電力増大に伴い、電源インフラの高電圧化が進んでいる。

従来の48V電源から、より高電圧の400VDC、そして800VDCへと移行することで、電流の低減、配線損失の削減、電力効率の向上を実現できるようになる。

NVIDIAの「Kyber」は、この流れの中で提案されたラックレベルの800VDC電源アーキテクチャとなる。

補助電源の小型化が新たな課題

AIサーバーでは、GPUやCPUだけでなく、制御回路や通信モジュール、センサなど多くの補助回路が必要となる。

これらを駆動させるために用いられる補助電源は、全体の効率には直接影響しない一方で、スペース制約や熱設計、信頼性といった面では制約となっていた。

コンパクトかつ薄型設計でラック密度を向上

今回のリファレンス設計では、補助電源を極薄設計とすることで、ラック内のスペース効率改善を狙う。

AIデータセンターでは、1ラックあたりの演算密度が重要指標となっており、電源部の占有体積削減はそのままGPUの搭載量増加や冷却効率の向上につなげることができるようになる。

その一方で800VDC環境では、絶縁設計や安全対策が重要となる。PIは自社の高耐圧パワーデバイス技術を活用することで、高効率変換、絶縁安全性、信頼性を確保した設計としたとする。これにより、AIデータセンターにおける高電圧電源導入のハードルを下げる狙いがある。

AIインフラ競争で語られるようになってきた電源

AIデータセンターでは、GPU性能、メモリ帯域、ネットワーク性能に加えて、電源設計が性能制約要因となりつつある。

特に電力消費は、数十kW/ラック規模に達しており、電源効率のわずかな差であっても運用コストに影響を及ぼすようになっている。

電源設計は「システム設計領域」に拡張

今回の発表は、電源が単なるシステムの補助機能という位置づけではなく、データセンターアーキテクチャの一部として設計される時代に入ったことを示すものと言えそうである。

AIサーバの800VDC化により、サーバ設計にはより電源と冷却を考慮することが求められるようになり、システム全体として電源を考慮する必要性がでてきている。しかも、GPUの消費電力は急速に増加していることに伴い、電源側には高電圧化だけでなく、高効率化と高密度化も同時に求められるようになっており、今回のリファレンス設計は、そうした要件に対応したものといえる。

電力がデータセンターの制約の1つに

AIデータセンターの制約要因は現在、半導体の性能と発せられる熱に加えて、消費する電力をどう賄うかの3点に収束しつつある。この中でも電力インフラは、設置可能な計算能力を規定する要素となっており、近年、AI半導体ベンダやハイパースケーラーは演算能力ではなく、数GWクラスのデータセンターというような電力で規模を表現するようにもなってきている。

そのため、高効率な電源の重要性が増していくこととなり、半導体の高性能化中心だったAIインフラ競争は、パッケージングや冷却を含めた周辺技術へと広がりを見せており、電源もそうしたAIの性能競争の重要領域に入ったことを今回の発表は示すものとなると言えるだろう。