NECは6月1日、「2030中期経営計画」の理解促進を目的とした説明会「NEC IR Day 2026」を開催した。説明会は「ITサービス」と「社会インフラ」の2部構成で実施され、本稿ではITサービス事業に関する発表内容を紹介する。

登壇したのは、執行役 副社長 兼 COO(ITサービス事業担当)の藤川修氏、執行役 Corporate EVP(BluStellar推進担当)の木村哲彦氏、執行役 Corporate EVP兼CAIO(チーフAIオフィサー)の山田昭雄氏。

この説明会では、生成AIの急速な進化によってITサービス業界が大きな転換点を迎える中、NECは従来のシステムインテグレーション中心のビジネスモデルから脱却し、「AIプラットフォームサービス」を中核とする事業構造への転換を進める考えを示された。

  • 「NEC IR Day 2026」の様子

    「NEC IR Day 2026」の様子

ITサービス事業の営業利益率20%を目標に

NECは2030年度に向けた中期経営計画において、ITサービス事業全体で営業利益率20%程度を目標として掲げている。

国内ITサービスに加え、海外のデジタルガバメント・デジタルファイナンス事業、通信事業者向けITサービス、さらに買収したCSG社を含めた新たな事業体制のもと、年平均3~5%の成長を見込んでいる。

その中核を担うのがBluStellarである。同社は4月に開催した「BluStellar Update」で、2030年度の売上収益目標を1兆3000億円、Non-GAAP営業利益率を25%へ引き上げた。

木村氏は「いまはAI産業革命とも言える大きな変化の局面にある」と語り、「NECはAIネイティブカンパニーとして新たな価値創出を推進していく」と強調した。

  • BluStellarについて説明する木村氏

    BluStellarについて説明する木村氏

Anthropicとの提携を成長戦略の柱に

今回の中期計画において大きな注目を集めたのが、Anthropicとのグローバルパートナーシップ提携についてだ。

藤川氏は「最先端モデルの提供を可能とするアライアンスが重要になる」と述べ、Anthropicとの協業によって社内生産性向上や実装領域での知見共有、技術支援を受けられることがNECの優位性になるとの考えを示した。この取り組みは日本国内だけでなく海外グループ会社にも展開し、グループ全体の競争力向上につなげていくという。

一方でNECは、特定のAIモデルに依存する戦略は取らないことも明言した。

木村氏は「サービスによっては最先端モデルではなく、軽量なモデルの方が効率的で効果的なケースもある」と説明。用途に応じて最適なモデルを選択するマルチモデル戦略を推進する。

加えてNECは、自社AIモデル開発にも投資する。今年度にはAIスーパーコンピュータへの二桁億円規模の投資を実施する予定だ。

その目的は大規模言語モデル競争への参入ではなく、業種・業務特化型AIモデルやAIエージェントをNECのドメインナレッジと組み合わせて提供していく方針としている。

質疑応答では、生成AIによるシステム開発の変化についても議論が交わされた。AIを活用した開発効率化は、今回の利益率向上計画の重要な前提となっている。

藤川氏は「これまでもさまざまなAIを活用した開発改善に取り組んできたが、Anthropicとの取り組みによってさらに加速する」と語り、また「開発の効率化、生産性向上が、この中期計画期間中の利益改善につながる」と説明した。

  • 中期経営計画ついて説明する藤川氏

    中期経営計画ついて説明する藤川氏

キーワードは「AIプラットフォームサービス」

今回の説明会で繰り返し語られたのが「AIプラットフォームサービス」というキーワードだった。

木村氏は、AI時代のNECについて「単なるSI企業ではなく、サービスプロバイダー、そしてAI時代のイネーブラーになりたい」と説明。

AIモデルそのものを提供するのではなく、顧客企業が安全かつ効率的にAIを活用できるよう、ガバナンス、セキュリティ、ガードレール、業務ノウハウなどを含めた統合サービスを提供する企業として成長していきたいという。

また、将来的にはAIエージェントが企業の業務プロセスや組織構造そのものを変えていく可能性にも言及した。その際には「従来のアウトソーシングとは異なる新たなサービスモデルが生まれる」との見方も示している。

AI活用の前にデータ基盤整備が必要

一方で、顧客企業側のAI活用はまだ発展途上にあるという。

藤川氏は「AI以前にやるべきことがまだ多い」と指摘する。

データ基盤整備やデータドリブン経営の実現など、AI活用の前提となる環境整備が十分に進んでいない企業も少なくない。そのため「AIに行く前の段階で、まだまだ取り組むべきことがあるというのが、多くの顧客の率直な感想」だという。

一方で同氏は、そのような企業こそが今後の成長機会になるとの認識も示した。

NECでは、自社で先行してAI活用や業務改革を実践する「クライアントゼロ」の取り組みを進めており、その過程で得られた知見やノウハウを顧客企業へ展開していく考えだ。

AI導入だけでなく、その前段階となるデータ活用基盤の整備から支援することで、顧客企業のAI活用を後押ししていく考えだ。

SI中心からAIネイティブ企業への転換を目指す

今回の説明会から見えてきたのは、NECが生成AIを単なる業務効率化ツールではなく、事業構造そのものを変革する起爆剤として位置付けていることだ。

同社は、Anthropicとの協業、自社AI開発、BluStellarの拡大、AIプラットフォームサービスの提供を通じて、従来のSI企業からAIネイティブ企業への転換を目指している。

AIによってシステム開発のあり方が大きく変わろうとする中、NECは「価値提供型ビジネス」への移行を進めながら、新たな成長モデルの構築に挑もうとしているようだ。