NXP Semiconductorsは日本時間の11月10日、同社がすでに提供中の「S32Kシリーズ」に新しく「S32K3ファミリ」を追加した事を発表した

S32K3ファミリは、同社が2017年3月に発表したS32K1ファミリと同じコンセプトに基づく、要するに車載向け汎用マイコンという位置付けである(Photo01,02)。

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    Photo01:S32K3ファミリの利用イメージ

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    Photo02:S32K3ファミリの具体的な用途。薄いオレンジ色の用途がターゲットである。ISO 26262 ASIL-Dまでをカバーしたことで、S32K1では利用できなかったトランスミッション制御とかにも利用範囲が広がった形だ

ただS32K1ファミリがシングルコアのCortex-M0+/Cortex-M4ベースの製品で、Flashも最大2MBとそれほど大きくなく、それもあって利用される用途が限られていたのに対し、S32K3ファミリはプロセッサコアをCortex-M7に変更。コア数も最大3コア、Flash Memoryも最大8MBまで拡充すると共に、一部の製品ではLock Step動作を可能にしたことで、ISO 26262 ASIL-Dまでの対応が可能になった。

S32K3ファミリの基本的なコンセプトはS32K1ファミリ同様、「車載ソフトウェア開発の負担軽減」を目指したものであるが、この3年間の間にセキュリティ要件(ISO/SAE 21434)や、より広範な機能安全(ISO 26262)への対応、さらにはファームウェアのOTA Updateなども求められるようになってきた(Photo03)。

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    Photo03:セキュリティモジュールなどはS32K1にも搭載されているが、ISO/SAE 21434への対応が要求されているのが変更点。またファームウェアOTA Updateを可能にするためには、まずFlash Memoryを2バンク構成にする必要があり、容量の拡大が必須である。こうした要件を満たすべくS32K3が企画された形だ

こうした要件に対応しながら従来のS32K1と同じ開発効率の向上を実現すべく、S32K3ファミリではS32K1ファミリと同じ、事前認証済車載グレード(AUTOSAR/非AUTOSARの両方)のソフトウェア開発キットを提供するほか、ISO 26262の認証を簡素化する工夫やOTA Updateのためのハードウェア、さらにはセキュリティアップデートのファームウェアの無償提供などが新たに追加された。

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    Photo04:ちなみにセキュリティ関連ファームウェアとは、内部のセキュリティエンジン用のファームウェアという話であって、アプリケーションレベルのものではないとの事

またS32K3ファミリでは新しく、MAXQFPというパッケージに切り替わった。これはピンの形状を、従来のQFPのガルウィングタイプ(外側に広がる)とPLCCで利用されるJ字リードの両方を組み合わせたもので、これによりパッケージサイズを従来比で最大55%削減しつつ、配線ピッチはむしろ広くなる(従来のQFP176だと0.5mmピッチなのが、MAXQFP 172だと0.65mmピッチにできるとの事)ため、配線レイアウト作業が容易になるとしている。

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    Photo05:BGAを使えば同等の効果が得られるが、ただしBGAにすると検査工程でX線検査などが必須になる。MAXQFPの場合、ちょっと工夫(斜め45°から確認するのが効果的との事)は必要なものの、目視検査で接合部の確認が出来るので、検査コストを抑える事ができる、とする

ラインアップはPhoto06の通り。2020年10月より、S32K344(Dual Core Lock-Step/4MB Flash)のサンプル出荷を開始しており、量産開始は2021年第4四半期を予定している。

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    Photo06:量産品については、Lock-step/非Lock-stepは工場出荷時に決まり、後から変更は出来ない。ただ開発用のサンプル品については、Lock-Step動作のものをDual CoreあるいはSingle Coreに変更するためのConfiguration Guideを提供しているとの事だった