仕事や生活における新たな価値観として注目されるウェルビーイングの推進に、多くの企業や自治体が取り組んでいます。なかでも自治体におけるウェルビーイング先駆者ともいえるのが「福井県」です。幸福度日本一(※1)を達成し続ける福井県では、ウェルビーイング向上に向けた様々な施策を実施。そのなかで、パーソルホールディングスが作成した指標を導入し、“はたらくWell-being”を推進しています。
※1 参考:一般財団法人日本総合研究所 全47都道府県幸福度ランキング2024年版
福井県とパーソルホールディングスが考えるウェルビーイングとは何か。「はたらくWell-being指標」をどのように活用しているのか。両者の取り組みの現状と展望について、福井県知事・杉本 達治氏とパーソルホールディングスCEO・和田 孝雄氏が対談しました。
福井県とパーソルホールディングスが考える「ウェルビーイング」
――まず、福井県とパーソルホールディングスそれぞれが考えるウェルビーイングについて教えてください。
和田:
パーソルホールディングスは人材派遣を中心に事業がスタートしました。51年前に篠原欣子という1人の女性が「女性の活躍する場所がないなら、自分がつくろう」という想いで創業したのがテンプスタッフ。そこから今のパーソルグループがあります。
私たちのグループビジョンの「はたらいて、笑おう。」には、仕事を通してよりよい人生を送ってほしいという想いが込められているのですが、「はたらく」ことを通じたウェルビーイングを推進することがこのビジョンの実現につながるのではないかと思っています。このビジョンを実現することで、世界中の人々のウェルビーングを高めていくことが私たちの目標です。
杉本:
ウェルビーイングという言葉そのものはここ数年でかなり世の中に広がってきていると思います。実は福井県は、健康、仕事、生活、教育などの様々な統計データの総合評価である「幸福度ランキング」で6回連続12年間、1位を取り続けている県。こうした客観的な幸福度とともに県民の主観的な「幸福実感」も大事です。この両面で、良好な状態を実現していることこそがウェルビーイングだと考えています。
和田:
そうですよね、それこそがウェルビーイングですよね。
杉本:
はい。ポイントは、一瞬だけ幸福ならいいのではなく、それが続いているかどうかです。ウェルビーイングは「Well(良い)」「Being(状態)」のこと。幸福度で評価される「教育に力を入れているか」、「良い仕事があるか」など(※2)の幸せの基盤があり、その上で、幸福実感が得られる状態が続いていることが大事なんです。
※2 参考:子どもの運動能力1位、学力2位、若者完全失業率2位、1人当たり県民所得3位 一般財団法人日本総合研究所 全47都道府県幸福度ランキング2024年版
和田:
すばらしいお考えです。米国の調査会社ギャラップ社では、ウェルビーイングを「キャリア」「ソーシャル」「ファイナンシャル」「フィジカル」「コミュニティ」の5つの領域で測定していますが、私たちはとくに「キャリア」に関するウェルビーイングを向上させることに力を入れています。私たちは“はたらくWell-being”と呼んでいますが、事業を通じて仕事を紹介し、はたらくことを通じて成長や達成感を感じていただくことで、誰もがはたらいて笑えるはたらく社会の実現につなげたいと考えているんです。
杉本:
人間は生きている時間の多くをはたらくことに費やしているわけですから、“はたらくWell-being”は大変重要だと思います。あわせて、我々自治体ならではのウェルビーイングといえば「住むこと」や「生活」かもしれません。もともと福井は「福の居る場所」という意味でつけられた地名です。まさに福井県自体がウェルビーイングを体現するような県だと思います。
これまで培ってきた福井のライフスタイルが、自然とウェルビーイングに繋がっていた
――福井県とパーソルホールディングスがウェルビーイングにどう取り組んでいるのか、具体的な施策などについて教えてください。
杉本:
福井県の幸福度が高いのは、社会そのものがウェルビーイングにつながる取り組みを続けてきた風土や文化があるからです。そのなかで自治体としての具体的な取り組みを申し上げるなら、「待機児童ゼロ」などの子育て環境をはじめ、「教育水準」、「医療水準」、「所得水準」の向上などに注力し、地域における住みやすさを実現してきました。
特徴的なのは、行政だけではなく、県民の皆様と一緒に県政を進めていることです。政策づくりをオープンに進める「政策オープンイノベーション」を大事にしており、県政運営の指針となる長期ビジョンをつくる際も5,000人以上の県民の皆様にご参加いただき策定しています。
杉本:
企業や大学との連携も重要です。昨年、「ふくいNEW経済ビジョン」というものをつくりました。これは日本一の「幸せ実感社会」という福井県の将来像を示すとともに、それを実現するための4つの実行戦略(人への投資、経営改革、付加価値づくり、交流・地方分散)を策定したものです。そのなかで、パーソルさんの「はたらくWell-being指標」を活用し、“はたらくWell-being”がどのように向上していくのかを調査すると共に、KPIとしても使っています。福井県では経営者向けのウェルビーイング塾も開催しておりますので、こうした調査結果をもとに、その中身をさらに充実させていきたいですね。
この他にも、県内外の大学と共同で、ウェルビーイングに影響する要因の分析やウェルビーイングに関する政策づくりといった活動を行っています。
和田:
県民の方や企業など、多くの方と力を合わせてウェルビーイングの取り組みを実施されていることについてはとても感銘を受けます。私もウェルビーイングを推進する上で、関わっていただく人の輪を広げることは重要だと考えています。パーソルホールディングスも“はたらくWell-being”についてはさまざまな取り組みを行っていますが、それを自分たちだけでやろうとは考えていません。
和田:
まずは足元のウェルビーイングの状況を知ることが大事だと考え、「はたらくWell-being指標」も作成しました。「はたらくWell-being指標」は「はたらいて、笑おう。」の実現度を測るために、その状態を「はたらくの体験・評価・自己決定」の3つの質問で計測するものです。
先述のギャラップ社を通じてこの指標を活用し、2020年から世界約150の国や地域を対象にグローバル調査を行っています。“はたらくWell-being”の状態を測り、向上させていくための共通指標として使われていくことを目指しているんです。
パーソルホールディングスの「はたらくWell-being指標」を福井県が導入した理由
――福井県では「はたらくWell-being指標」を導入しているとのことですが、どのような経緯で導入に至ったのでしょうか。
杉本:
福井県は幸福度が日本一ですが、幸福実感については向上の余地がありました。そこで幸福実感を上げていくために、まずはウェルビーイングの実態について調査する必要性を感じていたんです。そのなかでパーソルさんの「はたらくWell-being指標」を知り、2023年から県民アンケートの項目に指標を活用しています。非常に効果的だという結果が表れておりますので、今後も継続的に取り組んでいきたいと考えています。
和田:
ありがとうございます。自治体でのご活用を今後どんどん増やしていきたいと考えていますが、そのためにも福井県のような先例があることは非常に大きいです。「はたらくWell-being指標」が人々の“はたらくWell-being”を測る指標として有効であるという先例をつくり、集まった情報を全国の自治体の皆様に共有していく。そうした積み重ねによって「はたらいて、笑おう。」の実現に近づけると思います。
杉本:
福井県でも“はたらくWell-being”の実現に向けて、まずは県庁から取り組みを進めています。働きがいを高めるために、例えば若手職員を中心に、普段の仕事とは違う部署にも提案できる「チャレンジ政策提案」制度があります。タスクフォースを組んで部署横断で取り組んでおり、昨年は13案が出てきて実際に11案を予算化しました。また、予算化できた事業を自ら取り組めるよう、勤務時間の2割以内について、担当業務以外に従事できる「ふくい式20%ルール」も導入しています。
また、超過勤務を減らしたり年次有給休暇取得率の向上に向けたはたらきかけも行っています。そのほか、フリーアドレスやフレックスタイムも導入していますし、女性管理職率の向上や男性の育児休業取得率の向上にも取り組んでいます。女性管理職率については私が知事になった5年前は12.2%でしたが、現在は23.2%まで上がり、全国でもトップクラスです。
男性の育児休業は2023年度にようやく100%になり、96.3%が1ヶ月以上取得しています。現在はこれを3ヶ月以上にするために呼びかけています。男性も3ヵ月家事や育児をすると、その期間、家庭が幸せであることに加え、育休後もしっかり分担できるようになる。これが家庭の持続的なウェルビーイングにつながると考えています。
まずは県庁で実証的に取り組み、課題を解決しながら、その成果を民間にも広げていっています。私が自ら多くの企業の社長さんや幹部の方とお会いする機会の中でお話をしたり、補助金を出して応援もしています。
和田:
すばらしいですね。我々は人材の会社なので、よくそういった制度について相談を受けます。そのとき、我々が企業に対して「こうするといいですよ」とアドバイスしている内容をほぼすべて実行されていると感じました。こうした取り組みは「できない理由探し」になりがち。その意味でも民間企業にとって県庁での成功体験があるのは大きいですよね。
「はたらいて、笑おう。」の実現と、県民の幸福実感をより高めていくために。パーソルホールディングスと福井県が目指す未来
――福井県とパーソルホールディングスが今後どのようにウェルビーイング推進に取り組んでいくのか、展望について教えてください。
杉本:
今年3月に北陸新幹線が開業した結果、国や民間が住民に幸せの実感を聞いた調査において、福井県は、前年から大きく躍進し、いずれも全国5位以内となりました。(※3)将来に明るい希望を持てることが幸福実感にとって重要と感じています。福井県の長期ビジョンにおける基本理念「『安心のふくい』を未来につなぎ、もっと挑戦! もっとおもしろく!」のもと、ウェルビーイングが持続していく行政をこれからも進めていきます。
※3 参考:デジタル庁「well-being指標調査 令和6年度全国調査」 株式会社ブランド総合研究所「幸福度調査2024」
和田:
我々としては、グループビジョンである「はたらいて、笑おう。」を実現するために、この“はたらくWell-being”を高めると、どんな良いことがあるのかのファクトを社会に出していきたいと考えてます。
たとえば、“はたらくWell-being”を高めると、個人の幸福度、幸福実感の向上だけでなく、企業にとっても、業務の生産性があがるとか、エンゲージメントが高まるとか、離職が減るだとか、企業そのものの業績に良き影響があるとといった点を伝えていきたいです。
また、この“はたらくWell-being”を推進する仲間を増やし、共感の輪をどんどん広げて、日本全体の幸福度、幸福実感が高まり、明るい未来を描ける人が増える、働く人がもっともっと元気になる社会を目指していきたいと考えています。
[PR]提供:パーソルホールディングス