連載コラム『美人すぎる公認会計士がこっそり教える、やわらかマネー知識』では、公認会計士の平林亮子氏が、その豊富な経験を生かした「お金」に関する知識を、分かりやすく説明します。あなたの人生を変えるような、とっておきのマネー知識が得られるかもしれません。


億ションに住む方法とは?

最近、億ションが良く売れているのだという噂を耳にしました。

あくまでも噂で、確かめたわけではありませんが、少しは景気が良くなっているということでしょうか。

どんな人が買っているのでしょうね。

ところで、もしもそんな億ションに住むことができるとしたら、みなさんは住んでみたいですか?

住む方法を知りたいと思いますか?

どうしたら住めるのか。

それは億ションを購入すれば良いのです。

ふざけているわけではありません。

大真面目です。

まず、億ションに住もうと思ったら、通常は億ションを借りるか、買うかの選択になります。

でも、億ションを借りるとなると、家賃が月100万円を超える可能性もあります。

そんな家賃を払える人はお金持ちの人だけですよね。

そうなると、買うしかありません。

即日完売した、販売戸数22戸すべてが1億円以上という高額新築マンション「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」外観パース(濠側)(出典:三菱地所レジデンスWebサイト)

億ションを1年間、借金1000万円で借りて住む場合…借りたお金を返すアテは?

とはいえ、そんな大金を持っている人は、やはりお金持ちの人だけですよね。

つまり、借りるにしろ買うにしろ、足りないお金を調達する必要があります。一般的には、お金を借りるということになるでしょう。

仮に、1年間、億ションに住んでみると仮定しましょう。購入するなら1億円、借りるとしたら1年間で1000万円必要であるとします。

億ションを借りるとしたら1000万円、購入するとしたら1億円を借金することになるわけです。

億ションを借りて住む方が、借金1000万円ですので現実味があるように感じるかもしれませんが、その発想は非常に危険です。

なぜなら、支払った家賃が戻ってくることはありませんので、借りたお金を返すアテがまったくなくなるからです。

仮に借金1億円で購入し、1年後に1億円でマンションを売ることができたら…

一方で、仮に1億円借りれるとしたらどうなるでしょうか。

1億円なんて、なおさら返せないような気がするかもしれません。

でも、もしも、1年後に1億円でマンションを売ることができたら?

その代金で借金を返済できます。

もちろん、同じ金額でマンションを売れるかどうかはわかりませんが、借りたお金が家賃に消えてしまうのとは違い、返すアテがまったくないわけではありません。

もちろん、住宅ローンは収入に応じた額までしか借りることはできません。ただ、借金を上手に利用すれば、億ションに住むということもあながち非現実的な妄想とは言い切れないということです。

……ただし、これはあくまでも「考え方」を示しただけですので、決して上記のような無理はしないでくださいね。

それに気をつけなくてはなりません。

もし、1年後に1億円で売却できることが確実であったとしても、お金の借り方いかんでは、上記の取引は成り立たないからです。

資金の借入は、

  • 借入額

  • 借入利率

  • 借入期間

  • 返済期日

によって、大きく収支が異なってきます。

もし、家の売却代金が入る前に借り入れの返済期日が来てしまったら、その時点で資金がショートします。そもそも、借入の利率が年10%だとしたら、金利の支払いだけで年間1000万円が必要になり、これでは、1000万円の家賃を支払うのと同じだけの無理が生じることになります。

つまり、この取引を成り立たせるためには、家を売却した代金を手に入れるタイミングと、それに合わせた返済期日を設定することや、負担することができる範囲の利率で借り入れをするといった条件を整える必要があるのです。

資本主義社会においては、ファイナンス能力がビジネスの成否を分ける

必要な資金を調達することをファイナンスといいますが、資本主義社会においては、上手に資金調達をする力があるかどうか、すなわちファイナンス能力が、ビジネスの成否を分けるといっても過言ではないほど、大きな力をもっています。

たとえば、目の前に高い確率で成功するビジネスを始めるチャンスが転がり込んできたとき、自己資金がない場合でも、ファイナンスによってチャンスを手にすることができるからです。

そうしたファイナンスを駆使する力を、ファイナンス能力といいます。お金を借りる力というだけではなく、将来の収入を見極めそれに応じて返済可能な条件で借り入れる力や、借りる以外のさまざまな手段を知った上で最適な方法を選択する力、税金までも含めて考えられる力など、非常に複合的な能力であるといえるでしょう。

資本主義社会では、ファイナンスにより収支をコントロールすることで、大きなチャンスを手に入れることも可能であり、借金自体が悪いものであったり怖いものであったりするわけではありません。

怖いのは、収支の見積もりが甘いとか、そもそも深く考えずに借金してしまうこと。そういう借金は、たとえ借りた額が1万円であっても、非常に危険だということを忘れてはなりません。

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。