複数の仕事を持つ「パラレルワーク」という働き方
私が勤めるニットは世界33ケ国に約400人のメンバーがおり、各自の働き方も多種多様です。農業を営んでいる人、本業で正社員をしながら5つの企業で複業をしている人、海外ボランティアをしている人など、さまざまな仕事を掛け持ちしている人が大勢います。
そして私自身もニットで正社員として広報に務めながら、副業では大学の非常勤講師をしています。これらのような働き方を「パラレルワーク」と呼び、「メインの仕事を複数する=パラレルに仕事をすること」を指すことが多いです。
メインの仕事を複数持つことがパラレルワークですが、掛け持ちするという意味では副業・複業という2つの働き方があります。
「副業」は本業がある上で、サブの仕事という意味で使用することが多く、収入アップのために実施している人も多いようです。「複業」はいくつかの業務に優先順位がない状態で取り組むことを指します。同じ時間の掛け方や割合で取り組むことが特徴です。それぞれどれくらいの割合で仕事をするかで表現が異なります。
コロナ禍でテレワークを推進する企業が増えたことで、このような「多様な働き方」というワードがより注目されてきていると感じています。
政府が主導する働き方改革においても、厚生労働省が公開している『モデル就業規則(令和3年4月版)』の「第14章 副業・兼業」 には、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。」とあるように、副業や複業などの働き方が認められてきたと言えるのではないでしょうか。
なぜパラレルワークが注目されるのか
パラレルワークが注目されるようになった背景について、私の考察をお話しします。東京商工リサーチが行った調査によると、2019年に倒産した企業の平均寿命は23.7年であることが分かりました。また、全倒産企業のうち、業歴30年以上の「老舗」企業が占める割合は32.4%だったそうです。
この結果からも、老舗企業という安定した経営イメージがある企業ですら、破綻する可能性がある時代です。終身雇用や年功序列などの実質的破綻によって、日本型雇用システムは機能しなくなり、自分の人生設計に対する責任が以前に比べて大きくなっていると感じています。
つまり、定年まで同じ職場で働きたいと願っても、定年前に企業寿命が訪れてしまう可能性が高いのです。その時に路頭に迷うことのないように、個人として第二、第三の活動を始めておくことが重要だと私は考えています。
パラレルワークのメリット・デメリット
では、いざパラレルワークを考える際にどのようなメリットがあるかを整理していきましょう。
本業以外での人脈が広がる
パラレルワークを行っていく中で、本業では関わる機会のなかったさまざまな人々と出会うことができます。人脈は講習などで誰でも取得できる知識などと違い、一人ひとりのスキルや実力など「個人としての強み」が重要視されるこれからの時代の中で、とても価値のある資産です。
意識改革や視野の拡大につながる
同じ価値観をもった集団の中では物事に対する固定概念がつきやすくなってしまいます。しかし、パラレルワークによってさまざまな人と関わりを持つ中で、個性的な価値観を持つ人や、多様な経験をしてきた人に出会える可能性が生まれます。これにより意識改革や視野の拡大へとつながり、柔軟な発想力を養うことができるでしょう。
転職する際のリスクが減る
これまでの転職は、「A社を辞めてB社に移る」という転職のスタイルが大半でしたが、「A社の業務負担を減らし、副業でB社の仕事」を試すことで、「思っていた働き方や仕事とは違うな」と感じたら、B社への転職は辞めればよいと判断できます。
上記のようにメリットも多いですが、一方でデメリットもあります。それは「本業に支障が出てしまう可能性がある」ということです。パラレルワークを実施することにより心身共に大きな負担がかかります。本業の時間外での仕事となるため、どうしても夜中や土日での作業が増えるなど、体調管理やタスク管理がうまくいかずに本業へ支障が出てしまうこともありえます。
パラレルワークを行うことは自己管理能力やタイムマネジメントを身に付ける実践的方法として有力ですが、慣れるまでの間はトラブルの原因にもなりうることをしっかりと理解し、セルフコントロールをしっかりすることが大切です。