テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、インドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、自身の実体験をベースに「副業・複業もできる社外役員型コーチ」について語ります。

  • 副業・複業もできる社外役員型コーチ

中小企業・ベンチャー企業にこそ必要な社外役員

上場企業が守るべき行動規範を示した企業統治の指針を「コーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)」と呼びます。2015年3月に金融庁と東京証券取引所が取りまとめ、同年6月から適用が開始されました。

コーポレートガバナンス・コードには、「上場会社は独立社外役員(社外取締役)を少なくとも2人以上選任すべき」と示されています。これには「日本企業の透明性を高めてグローバルな投資を呼び込み、成長を促す」という狙いがあるようです。

上場企業が2人以上の社外役員を置くということは、東証一部の上場企業だけでも今後2,000人以上の社外役員が必要になる計算です。東証二部や東証マザーズ、ジャスダック(JASDAQ)、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)を含めれば、もっとニーズが高まるかもしれません。

また、すでに上場している企業だけではなく、これからIPOを目指す企業やM&A・CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を狙うベンチャー企業でも、社外役員のニーズは高まるでしょう。

特に、中小企業でも比較的IPOを目指しやすいTOKYO PRO Marketは今後さらに活用が期待されている市場です。「大手企業との取引のために、TOKYO PRO Marketに上場する」「マザーズやジャスダック上場を目指すために、まずはTOKYO PRO Marketへの上場を目指して組織体制を整える」など、活用方法はさまざま考えられます。

上場を目指す目指さないに関わらず、経営者の方々は日々孤独に戦い続けていますから、悩みを吐露できる相談相手として、社外役員の役割は大きいでしょう。

経営支援に活かせるコーチングスキル

経営者の方の良き相談相手、良き伴走者になるには、傾聴力が必要です。いわゆる聞き上手というやつですね。

一方的に上から目線で物事を教えても、経営者の方との信頼関係を築くことはできません。それに、ご本業としてその業界に身を置き続けてきた経営者の方が、業界のことは詳しくて当然です。ですから、社外役員の役割は、日々多忙でモヤモヤした視界を晴らしたり、外部の視点から新しい風を吹かせることです。業界に詳しい人ほど盲点を生みやすいですからね。

そのような観点から、物事を教えるティーチングや課題解決に特化したコンサルティングよりも、経営者自身の中から答えを引き出し、視野や可能性を広げるコーチングを社外役員は取り入れるのが良いでしょう。

良いアスリートには良いコーチがいるように、アメリカの企業では「良い経営をするためには、良いコーチが必要」というのが定説になってきています。

実際にコーチとして活躍する奈良有樹氏

私の友人に、実際にコーチとして活躍している奈良有樹さんという方がいます。

奈良さんは大学を卒業後、社会福祉法人で高齢者介護、障がい者福祉など福祉事業の財務・経理に従事し、京セラ式のアメーバ経営を介護・福祉分野に導入したことで、1年で赤字2,000万円の事業所を6,000万円の黒字に変えた経験もお持ちです。2017年に認知科学に基づくコーチングを学び、マインド面からその人のパフォーマンスを引き出すコーチとして活動を開始。福祉事業での経験を活かしながら、就労困難者に対して、コーチングを用いたアプローチで100%の一般就労を成功させるなど大きな成果を上げてきました。

現在は、経営者層に対する社外役員型コーチ(エグゼクティブコーチ)や、会社組織全体に対するコーポレートコーチを中心に、日本の中小企業・中小企業経営者を元気にする活動をされています。

社外役員や経営者向けのコーチというと、年齢を重ねないとできないイメージが強いかもしれませんが、「若い人の意見が聞きたい」という経営者の方も多くいらっしゃいます。私もいくつかの会社で顧問やアドバイザーをさせていただいていますが、経営者のみなさんは全員年上です。ですから、社外役員にしても経営者向けのコーチにしても、あまり年齢は関係ないと思います。

自分にしかできないアドバイスができるようになるために、今から自分にしかできない経験を積み重ねることが大切ですね。

次回以降も、実体験をベースに、起業や副業・複業、海外進出、テレワークなどをテーマに役立つ情報をご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、 その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。 現在は、SAKURA United Solution(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、 バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。